耕畜連携と協業組織の形成を-日本農業法人協会2015年7月16日
公益社団法人日本農業法人協会は6月の総会で政策提言をまとめている。持続可能な農業経営の実践に向けて、飼料用米増産を機に、畜産法人と稲作法人の連携を促進させることや、飼料用米政策の恒久化などを提起している。
同協会は、日本農業の競争力強化と成長産業化を図るためには、農地集積・規模拡大など産業政策をプロ農業経営者に集中し、農業の構造改革を加速させることが必要だと強調している。
そのために(1)人材育成と経営管理の高度化による農業経営の質の向上、(2)法人化による次世代への経営継承の促進、(3)耕畜連携と協業組織の形成などによる持続可能な農業経営の実践、を重点事項として法人経営自らが実践するとともに、その実践を支援する施策の確立を提言した。
このうち持続可能な農業の経営のための耕畜連携については、新基本計画で37年度に110万tに増産する目標を掲げた飼料用米を軸に、畜産法人と稲作法人の連携を推進する。両者が直接飼料用米の取引を行う仕組みを構築することで地域内流通の安定取引体制を整備することが必要だしている。そのために飼料用米の保管場所として、既存のカントリーエレベーターや施設を有効活用できるようにすることや、耕畜連携を複数年契約する場合に助成単価に加算措置を設けることなどを提言している。また、国民の理解を得ることを前提に、飼料用米政策の恒久化と、農業者が信頼できる交付単価とする必要があるとしている。
畜産法人側が安定的に飼料用米を利用できることも重要だとして、地域内から調達が難しい場合もあることから、飼料購入先である配合飼料メーカーに安定的・長期的に飼料用米が供給される仕組みが必要で、備蓄米を飼料メーカーが優先的に活用できる措置も提起している。
同協会副会長で養鶏経営の笠原節夫・横浜ファーム代表取締役は「日本国内の飼料用米を使った畜産物は安心・安全な食料を求める世界の流れにかなう」と話す。また、「水田を維持して国民の食料安全保障を確保するのは国として当たり前のこと。欧米でも穀物は国が支えている」として畜産農家としても水田の価値を大切にする飼料用米政策の恒久化が日本農業発展のために必要だと強調した。
また、提言では生産者が自立する「協業組織」の形成も推進すべきだとしている。被災地では複数の農業者が結集するかたちで復興を進めている例もあることから、今後は担い手が自らの経営を維持しながら、新しい協業のかたちを作り出すことも重要だとした。
同協会副会長の近藤一海・ながさき南部生産組合会長理事は「それぞれの経営は維持しながら、たとえば、市場が求められるロットをまとめるために協業する。個々の持ち味を足し算することも重要な時代になっている」と話す。
農協法改正でJAの理事構成は、認定農業者や農産物販売のプロなどを過半とすることが求められる。農協改革について藤岡茂憲会長は次のように話した。
「戦後70年、地方の農業、地方経済をリードしてきたのは間違いなく農業協同組合。しかし、法人や企業参入などさまざまな経営体が生まれているなかで農協が時代にマッチした組織に変わってきたのか、時代にあった改革を自ら率先してやってくるべきだったという声が地域の農家にも多数ある。法人経営と農協は相反することをやっているのではなく、めざすものは同じで地域農業、地方の経済をどうするかだ。 農協改革については私たちも積極的に意見を言うし、あるいは私たちが農協の意見を聞かなければいけないこともあると思う。農業法人協会とJAグループが腹を割って何が不足なのかなど、徹底的に話し合ってオールジャパンで農業の危機を乗り越えていこうと考えている」。
(写真)藤岡茂憲会長
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