遺伝子組換えサケの承認と流通に反対 生活クラブと米国の市民団体2015年12月10日
共同声明
米国食品医薬品局(FDA)は11月19日、成長速度が速くなるように遺伝子を操作した遺伝子組み換えサケ(GMサケ)の食品としての流通を承認した。これに対し生活クラブ生協連は、米国で遺伝子組み換え食品の問題に長年取り組んできた市民団体「食品安全センター」とともに、GMサケの承認と流通に反対する共同声明を発表した。
このGMサケは、米国のベンチヤー企業・アクアバウンティ社が開発した。キングサーモンの成長遺伝子と「ゲンゲ」というウナギに似た魚の遺伝物質を組み合わせた遺伝子を、タイセイヨウサケの卵に注入して産み出し、通常のサケの倍の速度で成長するため効率的な生産が可能になる。カナダで採卵されパナマの養殖池で生産するという。FDAはこのGMサケを「食べても安全」として承認した。
このGMサケは不妊ということだが、養殖池の外に逃げた場合に在来種のサケとの交雑や生殖活動へのかく乱が懸念されとして、米国の市民団体「食品安全センター」が承認の取り消しを求める訴訟を起こす予定にしている。
日本ではまだ承認申請が出されていないが、米国での承認を受けて申請が出される可能性がある。そのため生活クラブ生協連は、遺伝子組み換え食品の問題を広くアピールするには、最大の生産国であるアメリカの市民と最大の消費国である日本の市民が協力することが重要と考え、米国の市民団体「食品安全センター」との連携を強めている。両団体は12月8日、日米の市民の協力で遺伝子組み換えサケの流通を止めることをめざし、共同声明を発表した。
「共同声明」の全文は以下の通り
2015年12月8日、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会とアメリカの市民団体「食品安全センター」は、先ごろアメリカ食品安全医薬品局(FDA)が、遺伝子組み換えサケ=GMサケの食品としての流通を承認したことについて、強く反対することを表明します。
GMサケは、FDAが食品として認めた初の遺伝子組み換え動物であり、人体の健康や環境に与えるリスクについて多くの懸念が残っています。この懸念は、太平洋をはさんで日本とアメリカの合計100万人以上の市民を組織する団体が共有するものです。
このほど、「食品安全センター」の専門家たちが日本を訪れ、
遺伝子組み換え食品の表示義務の必要性と、遺伝子組み換え作物の生産によって農薬使用が増大することがもたらす被害について議論を始めています。
生活クラブ連合会の加藤好一会長は「日本の消費者がGMサケの受け入れを拒否することは間違いありません。もちろん私たちの生協がGMサケを供給することはありえません。今後、日本政府がGMサケを承認しないよう働きかけを強めていきます」と話しています。
日本は世界でも最大の魚介類輸入国の一つです。とりわけサケ(サーモン)は日本の消費者が好む食材です。2014年のサケ・マスの輸入額は2,000億円(約20億米ドル)に迫るほどです。仮に、日本政府がGMサケを承認したなら、店頭販売時には遺伝子組み換えの表示義務が生じます。表示されていれば日本の消費者は受け入れることはありません。しかし外食産業での食材向けや加工食品の原料として販売された場合、日本では末端の消費者に対する表示義務は免除されているのです。したがって消費者はGMサケだと知らずに食べさせられることになりかねません。これこそが心配されることなのです。
このほど東京を訪問し遺伝子組み換え食品に反対する日本の市民団体と交流した「食品安全センター」のジョージ・キンブ
レル上級弁護士は次のように言います。「GMサケを承認したFDAの決定は、環境や人体への責任を放棄し法に反するものです。世界中に影響を与えることになるでしょう」
「GMの魚とアクアバウンティ社が市場にGMサケを販売しようとしていることについて、強く反対する仲間たちと東京で出会うことができました。たいへん心強く思います。私たちは力を合わせ、世界各地の人々の暮らしを支える従来からの漁業と安全な食品の市場を守るために、GMサケの世界的な流通に歯止めをかけます」
アメリカ国内でもGMサケを拒否する声は根強く広がっています。200万人以上の市民がFDAの承認に反対するパブリックコメントを提出したほどです。これはFDAがこれまでに受けたコメントの最大数です。さらに9,500以上の食品販売店や数多くのレストランがGMの魚を販売しないと表明しています。
GMサケは、環境への弊害をもたらす可能性があり、また人体へのリスクも指摘されていますOFDAが承認のために行なったアレルギー誘発性試験は、極めて限定的なものでしかありません。さらにアクアバウンティ社は、GMサケを実験生産しているパナマ国内で、同国の環境規制に従っていないことが強く批判されています。またカナダの環境保護団体は、カナダ政府の承認により同国内でGMサケの卵の生産が可能になり、生態系と生物種(在来種のサケ)に対する潜在的なリスクが高まったとしてカナダ政府に対する訴訟を起こしています。
◎アメリカの市民団体食品安全センター Centerfor FodSafety による共同声明プレスリリース(英語)
http://www.centerforfoodsafety.org/press-releases/4166/maor-janese-and-american-consumer-groues-oppose-genetically-engineered-salmon
(関連記事)
・GM農産物、農家にメリットあるのか?-米国弁護士が報告 (15.12.03)
・第8回 遺伝子組換え鮭がやってくる (13.03.01)
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