「風化」させるな-震災・原発事故5年で全農林がシンポ2016年4月20日
東日本大震災から5年が経過するなか、記憶や被災地で起きた問題を風化させてはならないと全農林「農村と都市をむすぶ」編集部が4月17日に東京大学弥生講堂でシンポジウム「東日本大震災・福島原発事故から5年-復旧・復興の現状と今後」を開いた。
シンポジウムではとくに福島原発事故の影響と現状について、風評被害から「風化」が懸念されていることが強調された。
全農林福島分会の半澤周二委員長は14日以来発生し続けている熊本地震について「テレビで緊急地震速報の音が流れると2011年が思い出され、娘は部屋に閉じこもってしまう」と熊本への心配が募ると同時に、震災の体験と記憶が「いかに心に重く響くものかと思っている」と話した。
そのうえで、福島第一原発は事故の収束にはほど遠いのが現状であることなどを報告したうえで、依然として福島県内10万人以上の人々が避難生活を不安のなかで送っており、農産物の風評被害も問題だが「原発事故は終わったものとして風化していくことが問題」と強調した。また、営農再開に向けては地域的なまとまりをもって将来像を策定する必要性とそれを支援する行政の課題なども指摘した。
シンポジウムでは多くの市町村で農地や森林の除染がほとんど進んでいない状況や、除染しても農業が再開できるのか、あるいは除染自体が本当に可能なのかという現場の問題意識、また、帰還に対する行政と村民の対立などの問題も指摘され、今こそより福島の現場を理解する重要性が強調された。
そのほか報告は「大震災被害と復興状況・課題」(伊藤房雄東北大大学院教授)、「沿岸漁業再建の到達点と課題」(加瀬和俊帝京大教授)、「大学による震災復興支援プロジェクトの取り組み」(門間敏幸東京農大教授)、「福島の地域復興の現状と課題」(糸長浩司日大教授)、「放射能汚染対策技術の開発」(農研機構東北農業研究センター・太田健氏)があった。
(写真)シンポジウム会場の東大農学部弥生講堂アネックス
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