静かなブーム「貧困・格差・TPP」2016年8月4日
いま全国のJAでTPPや日本の社会が抱える問題を学習する資料として、秘かに読まれている雑誌がある。それが「貧困・格差・TPP」だ。
これは「月刊日本」の5月号増刊として今年5月に発行された雑誌だが、いまだに全国の有名書店の棚に並べられているという、月刊雑誌としては珍しいものだ(写真)。
なぜ、これがいま読まれているのか。その内容をみると
△「資本主義」の問題は何なのか
△各界の論客が検証した「TPP問題」
△「農業」と「食の安全」が危ない
という3部構成になっており、総勢25名の錚々たるメンバーが各テーマについて的確に、しかも分かりやすくインタビューに応えていて、いま日本社会が抱えている問題の根っこのところがよく分かるからではないだろうか。
登場するメンバーは(敬称略)
○「資本主義」の問題:佐藤優、水野和夫、佐伯啓思、藻谷浩介、山崎行太郎、マハティール。稲村公望(対談)
○「TPP問題」:白井聡、玉木雄一郎、内田聖子、植草一秀、亀井静香、田村秀男、郭洋春、施光恒、山岡淳一郎、篠原孝、岩月浩二
○「農業」と「食の安全」:山田正彦、鈴木宣弘、菊池英博、三橋貴明、安田節子、佐高信・山田俊男(対談)
「JAcom」にご登場いただいた方もいらっしゃるし、読者の方にはお馴染みの人も多いのではないだろうか。
そのすべてをここで紹介するわけにはいかないが、JAグループの人のために一つだけ簡単に紹介をしておきたいのは、金融財政学者である菊池英博氏が『農協マネー 380兆円が狙われている』と題して、「農協の金融機能を金融庁の傘下におけという要求は、10年前の郵政公社の民営化と同じ論理」で「アメリカは、農協改革と称して、農協関係の金融資産を強奪しようとしている」とACCJ(在日米国商工会議所)の意見書など具体的事例を示して指摘し「強奪される危機は去っていない」と語っている。
JA関係者はそのことを知っていても、菊池氏のように明確にそれを指摘することが少ない。改めて「農協改革」の狙いはどこにあるのか、考えてみる必要があるのではないだろうか。
インタビューを含めて数カ月で完成させた中村友哉氏は、「日本の子どものの6人に1人が、場合によっては満足に食事もできないような状態に置かれている」が、これは「新自由主義によってもたらされたものであり、新自由主義的な政策を支持するということは、こうした現状を肯定することと同じだ」ということ。
さらに米国大統領で話題の2人のどちらが就任しても、TPPは「何らかの形で交渉のやり直しを強いられることになる。それは日本にとって、より過酷な内容になることは間違いない」という問題意識をもち編集したという。そして「資本主義の本質をつかむことができれば、個々の問題をより深く理解できるようになる」と考え、「『資本主義』の問題は何なのか」を加えたという。
書店にいまだに並んでいるだけではなく、発行元には「地方のJAグループから10冊単位での注文や、リピートもある」という。今後の議論に備えて、静かなブームになっているようだ。
◎『月刊日本」5月増刊号『貧困・格差・TPP』。B5判224頁
定価:750円(税込)
発行所:(株)K&Kプレス
電話:03-5211-0096
FAX:03-5211-0097
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