業界再編推進で新法制定を提言-規制改革推進会議2016年10月7日
政府の規制改革推進会議農業WGと未来投資会議構造改革徹底推進会合は10月6日に合同会合を開き、生産資材と農産物の流通・加工問題で意見をとりまとめた。改革を推進するため業界再編の推進手法を明記した新法の制定を提起した。また、全農とJAグループに対して「生産資材に関する事業方式を抜本的に見直しべき」、「農産物に関する販売方式を抜本的に見直すべき」との意見を盛り込むとともに、農協改革をフォローアップすることにしている同会議として改めて意見をまとめることを表明した。
「規制改革推進会議」は規制改革会議の後継組織として一部委員が交代して9月13日に農業WGの第1回会合を開き4回めの会合で生産資材と加工・流通問題で「意見」をまとめた。議論の時間は合計7時間程度。内閣府によれば前組織時から議論してきた問題であり性急な取りまとめではないというが、金丸座長は11月にも取りまとめる与党の議論を見据えて意見を出すと9月に表明しており、金丸座長は前回の会合に基本的な考えを方を示し、取りまとめた。
意見は生産資材問題と加工・流通問題についての2つで構成されている。
生産資材価格の引き下げでは▽国は国内外の生産資材の生産・流通・価格等の状況を定期的に把握し公表する、▽国はメーカーが適正な競争状態のもとに適正な価格で販売する環境を整備する、▽国は農業者が各種生産資材の購入先について価格等を比較して選択できる体制を整備する(見える化)など、国が業界の競争と透明化を促進することを求めている。
また、肥料や飼料など生産性の低い工場が乱立している分野の業界再編、メーカーが寡占状態となっている農業機械分野では新規参入の促進を求めた。いずれも政府系金融機関の融資などの支援も提起している。
時代と合わなくなっているとし、農業機械化促進法と民間の品種開発意欲を阻害しているとして米、麦、大豆を対象にした主要農作物種子法の廃止を求めている。
農産物の流通・加工問題では▽国は農業者・消費者にメリットを最大化するため農業者・団体から実需者・消費者に農産物を直接販売するルートの拡大を推進する、▽国は多数の量販店等の過度の安売り競争による食品デフレを脱却し生産者と量販店双方がメリットを受ける食品流通のあり方について検証を進めるなどを求めた。また、卸売市場法についても「時代遅れの規制は廃止する」として第3者販売禁止の見直しなどを求めた。
2つの問題とも改革を推進するため「国の責務、業界再編の推進手法を明記した新法を制定する」ことを求めた。来年の通常国会に提出すべきと明記されていないが、前回の金丸座長の意見では改革を後戻りさせないよう次期通常国会での新法制定を求めている。
「意見」では全農とJAグループの生産資材事業と販売事業に対して「抜本的な見直し」を求めるとともに、農協改革をフォローアップして「後日意見を取りまとめる」と明記した。
規制改革推進会議は今後、生乳取引のあり方について「意見」をとりまとめ、その後、11月にも全農の事業改革も含めた農協改革の進捗状況について「意見」をとりまとめる見込みだ。
【規制改革推進会議農業WGの意見全文】
総合的なTPP関連政策大綱に基づく「生産者の所得向上につながる生産資材価格形成の仕組みの見直し」及び「生産者が有利な条件で安定取引を行うことができる流通・加工の業界構造の確立」に向けた施策の具体化の方向
平成28年10月6日
未来投資会議構造改革徹底推進会合
「ローカルアベノミクスの深化」会合
規制改革推進会議農業ワーキング・グループ
(趣旨)
農村地域を豊かにし、その経済力を高めていくとともに、意欲ある農業者が安定して農業を継続できるようにするためには、基幹産業である農業の生産性を高め、従事者の所得を増やしていかなければならない。
しかしながら、今世紀半ばには人口が4分の3にまで減少すると予測される我が国において農産物の売上げを維持し、農業所得を確保することは容易ではない。
一方で、世界の食市場は拡大を続けており、平成32年までの約10年間で倍増するとの予測も公表されている。このような中、我が国農業者が、売上げを維持・拡大し、農
業所得を向上させていくためには、海外市場の取込みは不可欠である。
特に、TPP協定は、予見可能性、透明性、安定性の高い8億人の巨大市場を創設するものであり、大きなチャンスといえる。ただし、このチャンスを活かし、我が国農業者が所得を増やしていくためには、農業及びその関連産業の国際競争力を強化し、国内・国外での競争に勝ち抜かなければならない。
このためには、農業者自身が生産性向上に向けた努力を重ねるべきことは言うまでもない。一方で、そうした農業者の努力が報われるためには、農業者が生産資材を一円でも安く調達できる生産・供給構造や、農産物を一円でも高く販売できる流通・加工構造を実現する必要があり、農業者以外の関連事業者の取組が不可欠である。また、それを進める上で、実情に合わなくなったシステムの抜本的見直し。各種法制度の総点検、合理的理由のなくなった規制の廃止等を通じ、関連事業者の事業の合理化・効率化を促進していくとともに、海外との競争を意識した制度の導入等を進める必要がある。
未来投資会議構造改革徹底推進会合「ローカルアベノミクスの深化」会合と、規制改革推進会議農業ワーキング・グループは、このような観点から、生産資材の価格形成の仕組みの見直しと、農業者が有利に取引できる流通・加工の業界構造の確立に向け、主として農業者以外の関連事業者や農協を含む関連団体において取り組むべき課題について、施策の具体化の方向性を以下のとおり取りまとめる。
(施策具体化の基本的な方向)
【1】生産資材価格の引下げ
関連産業の合理化・効率化等を進め、資材価格の引下げと国際競争力の強化を図るため、以下の方向で施策を具体化すべきである。
(1)生産資材は、農業の競争力を左右する重要な要素であり、国は、国内外の生産資材の生産一流通一価格等の状況を定期的に把握し、公表するものとする。
また、国は、民間活力を最大限に活用しつつ、生産資材の安定供給と価格引下げのための施策の具体化に努めるものとする。この場合、農林水産省と経済産業省が連携して取り組むことが重要である。
(2)生産資材に関する各種法制度(肥料・農薬一機械一種子・飼料・動物用医薬品等)及びその運用等(法律に基づかない業界団体の規制も含む)について、国は定期的に総点検を行い、国際標準に準拠するとともに、生産資材の安全性を担保しつつ、合理化・効率化を図るものとする。特に、合理的理由のなくなっている規制は廃止するものとする。
(3)国は、各種生産資材について、メーカーが、適正な競争状態の下で、高い生産性で生産し、国際水準を踏まえた適正な価格で販売する環境を整備する。公正取引委員会も、こうした観点で、徹底した監視を行う。
(4)国は、民間のノウハウを活用して、農業者が各種生産資材の購入先について、価格等を比較して選択できる体制を整備する。
(5)多品種少量生産が低生産性の原因となっている種類の生産資材(肥料等)については、国は、各都道府県・地域の施肥基準等の抜本的見直しを推進し、銘柄数を大幅に絞り込む。
(6)生産性の低い工場が乱立している種類の生産資材(肥料・飼料等)については、国は、国際競争に対応できる生産性の確保を目指した業界再編・設備投資等を推進することとし、政府系金融機関の融資、農林漁業成長産業化支援機構の出資等による支援を行う。
(7)メーカーが寡占状態となっている種類の生産資材(農業機械等)については、国は、ベンチャーを含めた企業の新規参入を推進することとし、参入しようとする企業に対して、政府系金融機関の融資、農林漁業成長産業化支援機構の出資等による支援を行う。
(8)国は、開発目標(適正機能・合理的価格)を明確にして、民間企業・研究機関・農業者等の連携により国際競争性を有した農業機械の開発を促進する。
また、時代のニーズと合わなくなっている農業機械化促進法は廃止する。
(9)農薬については、農産物輸出も視野に入れた国際的対応が特に重要であり、国は、ジェネリック農薬の登録のあり方を含め、農薬取締法の運用を国際標準に合わせる方向で、抜本的に見直す。
(10)略物資である種子・種苗については、国は、国家戦略・知財戦略として、民間活力を最大限に活用した開発・供給体制を構築する。
そうした体制整備に資するため、地方公共団体中心のシステムで、民間の品種開発意欲を阻害している主要農作物種子法は廃止する。
(11)上記改革を推進するため、生産資材に関し、国の責務、業界再編の推進手法等を明記した新法を制定する。
(12)上記改革と併せて、全農及びJAグループは、生産資材メーカーの業界再編等に資するよう、生産資材に関する事業方式を抜本的に見直すべきである。
これについては、農協改革のフォローアップとして、規制改革推進会議において後日意見をとりまとめる。
【2】生産者に有利な流通・加工構造の確立
同一規格のものを大量・出荷一大量販売するこれまでのプロダクト・アウトの生産・流通・加工の在り方から、実需者側の個別のニーズに対応したマーケット・インの生産一流通・加工へと発想の転換を促すとともに、農業者が自らの責任で販売先と価格を決定できる多様な選択肢が用意され、農業者と消費者双方がメリットを受けられる流通構造を形成するため、以下の方向で施策を具体化すべきである。
(1)農産物の流通構造や加工構造は。農業の競争力を左右する重要な要素であり、国は、国内外の農産物の流通・加工の実態等を定期的に把握し、公表するものとする。
また、国は、食料需給・消費の実態等を踏まえた効率的一機能的な流通構造・加工構造の確立に努めるものとする。
この場合、農林水産省と経済産業省が連携して取り組むことが重要である。
(2)国は、農業者・消費者のメリットを最大化するため、農業者一団体から実需者・消費者に農産物を直接販売するルートの拡大を推進する。併せて、農業者の所得向上
に資する食品製造業等との連携を一層促進する。
また、農業者の努力・創意工夫と消費者のニーズ・評価が双方で情報交換できるようICTを最大限に活用するとともに、農産物の規格(従来の市場規格・農産物検査法の規格等)についてそれぞれの流通ルートや消費者ニーズに即した合理的なものに見直す。
(3)農業者は、自らの生産した農産物の強みを生かし高<販売する努力を行う必要がある。また、食品小売業者は、消費者の側に見た目にとらわれずに安全で美味しい商品を評価する意識が広がることにより、不必要なコスト増要因を除去できるよう、仕入れ、販売戦略上の取組を行う必要がある。このような取組を支援するため、国は、品質等に応じた価格決定がなされるよう、地理的表示、規格・認証等の制度の一層の普及を図る。
(4)中間流通(卸売市場、米卸売業者など)については、国は、抜本的な整理合理化を推進することとし、業種転換等を行う場合は、政府系金融機関の融資、農林漁業成長産業化支援機構の出資等による支援を行う。
(5)特に、卸売市場については、食料不足時代の公平分配機能の必要性が小さくなっており、種々のタイプが存在する物流拠点のーつとなっている。現在の食料需給・消費の実態等を踏まえて、より自由かつ最適に業務を行えるようにする観点から、抜本的に見直し、卸売市場法という特別の法制度に基づく時代遅れの規制は廃止する。
(6)小売業については、国は多数の量販店等の過度な安売り競争による食品デフレを脱却し、生産者と量販店等の双方がメリットを受ける農産物の安定した流通を確保するため、食品流通のあり方について検証を進めるとともに、消費者ニーズに合った多様な商品を適正な価格で提供するビジネスモデルの構築に向けた事業再編や業界再編を推進する。
また、量販店等は、農業者の再生産の確保も考慮し、双方でwin-winな関係維持が可能な適正価格で安定的な取引が行われるよう配慮するものとする。
公正取引委員会は、量販店等の不公正取引は、優越的地位の濫用による買いたたき等)を是正するため、徹底した監視を行う。
(7)国は、民間のノウハウを活用して、農業者が各種流通ルートについて、手数料等を比較して選択できる体制を整備する。
(8)加工業については、生産性の低い工場が乱立している種類の加工業界(製粉、乳業等)について、国は、国際競争に対応できる生産性の確保を目指した業界再編・設備投資等を推進することとし、政府系金融機関の融資、農林漁業成長産業化支援機構の出資等による支援を行う。
(9)上記改革を推進するため、農産物の流通・加工に関し、国の責務、業界再編の推進手法等を明記した新法を制定する。
(10)上記改革と併せて、全農及びJAグループは、流通加工関連企業の業界再編等に資するよう、農産物に関する販売方式を抜本的に見直すべきである。
これについては、農協改革のフォローアップとして、規制改革推進会議において後日意見をとりまとめる。
-以上-
重要な記事
最新の記事
-
【特殊報】ホウレンソウにクロテンコナカイガラムシ 県内で初めて確認 神奈川県2024年12月23日
-
【注意報】カンキツ類にミカンナガタマムシ 県内全域で多発 神奈川県2024年12月23日
-
24年産新米、手堅い売れ行き 中食・外食も好調 スーパーは売り場づくりに苦労も2024年12月23日
-
「両正条植え」、「アイガモロボ」 2024農業技術10大ニュース(トピック1~5) 農水省2024年12月23日
-
多収米でコメの安定生産・供給体制を 業務用米セミナー&交流会 農水省補助事業でグレイン・エス・ピー ①2024年12月23日
-
多収米でコメの安定生産・供給体制を 業務用米セミナー&交流会 農水省補助事業でグレイン・エス・ピー ②2024年12月23日
-
香港向け家きん由来製品 島根県、新潟県、香川県からの輸出再開 農水省2024年12月23日
-
農泊 食文化海外発信地域「SAVOR JAPAN」長野、山梨の2地域を認定 農水省2024年12月23日
-
鳥インフル 米アイダホ州、ネブラスカ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年12月23日
-
農林中金 当座預金口座規定を改正2024年12月23日
-
農林中金 変動金利定期預金と譲渡性預金の取り扱い終了2024年12月23日
-
「JA全農チビリンピック2024」小学生カーリング日本一は「札幌CA」2024年12月23日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」栃木県で三ツ星いちご「スカイベリー」を収穫 JAタウン2024年12月23日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」大分県で「地獄めぐり」満喫 JAタウン2024年12月23日
-
「全農親子料理教室」横浜で開催 国産農畜産物で冬の料理作り JA全農2024年12月23日
-
「愛知のうずら」食べて応援「あいちゴコロ」で販売中 JAタウン2024年12月23日
-
Dow Jones Sustainability Asia Pacific Indexの構成銘柄7年連続で選定 日産化学2024年12月23日
-
「東北地域タマネギ栽培セミナー2025」1月に開催 農研機構2024年12月23日
-
NTTグループの開発した農業用国産ドローンの取り扱い開始 井関農機2024年12月23日
-
北海道立北の森づくり専門学院 令和7年度の生徒を募集2024年12月23日