「小さな拠点」を全国に 地域運営組織フォーラム2017年3月2日
地域おこしは当事者意識で
内閣官房まち・ひと・しごと創生本部は3月1日、東京都内で「地域運営組織・小さな拠点」フォーラムを開いた。人口が減少する中で今後、地域社会の運営はどのような組織が、どのような方法で進めるべきかについて、高知県の梼原町、長野県の飯田市、石川県の七尾市の先発事例をもとに探った。
フォーラムでは「地域の課題解決のための地域運営組織に関する有識者会議」の座長、小田切徳美・明治大学教授が「地域運営組織の設立と持続化」で基調講演。それによると「地域運営組織」とは「住民の参加・協議による問題解決のための組織」で、「従来の自治・相互扶助活動から一歩踏み出した活動を行なっている組織」(総務省)と位置づけられている。
小田切教授は、これを「自治組織+経済組織」とし、経済活動として共同店舗やガソリン・スタンドの運営、生活交通手段の提供、特産品開発などを挙げる。その上で「住民が当事者意識を持って、地域の仲間と共に手づくりで自らの未来を切り開くという積極的な取り組み」と性格づける。
その先発地域として報告された高知県の梼原町は町内に6つの区があり、それぞれに「集落活動センター」を設立。それを株式会社を中心とする法人組織として住民が出資する。「地域住民が支える、地域のための会社」であり、ガソリンスタンドやレストラン、通院・買い物のため送迎車の運行、農産物の集出荷など多様な事業を行なう。報告した矢野富夫町長は「地域で生きていけるだけのお金を稼ぎ、人材を継続的に育て、住民みんなが、元気で楽しく生きて、安心して死を迎える地域になることをめざす」という。
同じく報告のあった長野県の飯田市は、地域運営組織を作るに当たって、(1)根拠となる規範をつくるかどうか、(2)全地区で導入するかどうか、(3)既存の自治会を再編するか、新たな組織をつくるかどうか、1年以上かけて議論した。結果は自治基本条例を制定し、全地区で地域自治組織を導入。また既存の自治会や縦割り組織を横断的な住民組織に再編し、簡素で効率的な「まちづくり組織」とした。
条例では「市民はまちづくりの主体として、市と協働し、地域社会の発展に寄与するよう努めます」と、市民の役割を示す。また、地域運営組織が活動しやすいように、縦割りだった各種補助金を見直して一括交付金とした。さらに同市では住民自らが地域をデザインする地区基本計画づくりを進めており、20地区のうち、今年度策定の1地区を加え18地区で策定。「地域のことを知り、自分たちの地域は自分たちで守るという当事者意識を育てることが大事だ」と、牧野光朗・飯田市長は強調した。
石川県七尾市の「釶打ふるさとづくり協議会」は条件不利地の10集落が集まって、むらづくりに取り組んでいる。まずほ場整備、道路舗装、ミニライスセンター建設、集会場建設など集落環境のハード面の整備から取りかかり、埋もれている地域資源の掘り起こしにかかった。天日による「ハザ干し」の「釶打米」の販売、伝統の能登野菜の直売や加工、伝統まつりの復活などで、集落の枠を超えた地区住民の一体感を醸成した。さらにデイサービス、買い物代行・病院送迎など地域福祉活動にまで広がっている。
3つの事例報告の共通点として小田切教授は、(1)当事者意識が高い、(2)行政が戦略的に対応している、(3)地域運営組織には多様な形態がある、(4)大学との連携が重要ーの4つを学ぶべきポイントとして挙げた。なお最後に山本幸三地方創生担当大臣はあいさつで「人材、情報、財政の地方創生3本の矢で支援する」と述べた。
(写真)小さな拠点づくりで意見交換するフォーラム
重要な記事
最新の記事
-
(394)Climate stripes(気候ストライプ)【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年7月26日
-
地域医療の実態 診療報酬に反映を JA全厚連が決議2024年7月26日
-
取扱高 過去最高の930億円 日本文化厚生連決算2024年7月26日
-
【人事異動】JA全厚生連 新理事長に歸山好尚氏(7月25日)2024年7月26日
-
【警報】果樹全般に果樹カメムシ類 県下全域で最大限の警戒を 鳥取県2024年7月26日
-
【注意報】イネに斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 山形県2024年7月26日
-
今が旬の「夏酒」日本の酒情報館で提案 日本酒造組合中央会2024年7月26日
-
ヤンマーマルシェ、タキイ種苗と食育企画「とりたて野菜の料理教室」開催 カゴメ2024年7月26日
-
「ごろん丸ごと国産みかんヨーグルト」再登場 全国のローソンで発売 北海道乳業2024年7月26日
-
物価高騰が実質消費を抑制 外食産業市場動向調査6月度2024年7月26日
-
農機具王「サマーセール」開催 8月1日から リンク2024年7月26日
-
能登工場で育った「奇跡のぶなしめじ」商品化 25日から数量限定で受注開始 ミスズライフ2024年7月26日
-
東京・茅場町の屋上菜園で「ハーブの日」を楽しむイベント開催 エスビー食品2024年7月26日
-
鳥インフル 米国オハイオ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2024年7月26日
-
大玉すいか販売大幅減 小玉「ピノ・ガール」は前年比146.8% 農業総研2024年7月26日
-
千葉県市原市 特産の梨 担い手確保・育成へ 全国から研修生募集2024年7月26日
-
水産・農畜産振興 自治体との共創事例紹介でウェビナー開催 フーディソン2024年7月26日
-
新規除草剤「ラピディシル」アルゼンチンで農薬登録を取得 住友化学2024年7月26日
-
自由研究に「物流・ITおしごと体験」8月は14回開催 パルシステム連合会2024年7月26日
-
高槻市特産「服部越瓜」の漬け込み作業が最盛期2024年7月26日