種子法廃止の運動継続を 生産者・消費者が勉強会2017年4月11日
政府が廃止しようとしている主要農作物種子法について、これに反対する全国有機農業推進協議会と日本の種子(たね)を守る有志の会は4月10日、衆議院第一議員会館で勉強会を開き、講演および農水省と生産者・消費者の意見交換を行なった。3月27日に次ぐ2回目の勉強会で、約200人が参加した。
勉強会呼びかけ人の一人、元農水大臣の山田正彦氏は、「日本は、在来の農作物の原種、種を保持してきた。これをすべて民間に開放することは、海外の多国籍バイオ企業に種子をゆだねることになりかねず、食糧安全保障にとっても大きな問題。日本の種子は何とか守りたい」と訴えた。
講演した西川芳昭・龍谷大学教授は、「種子は生命の根源」と、種子の重要性を強調し、(1)最も基礎的な農業生産資材、(2)作物の形質や環境適応性など、作物の特性を規定、(3)遺伝資源としての使用価値をもち、遺伝情報の操作ができる、などを挙げる。従って、種子法では稲、麦、はだか麦、小麦および大豆の種子を対象に、種子の生産は、ほ場や産物の審査、農産物の検査などが、厳格に義務付けられている。
それによって、これまで県が開発した米や麦などの地域品種が維持され、その加工品等が地域ブランドの特産として、地域振興にも役立ってきた。その種子法を廃止することは、国や県がこの制度を維持する予算的な根拠を失う恐れがある。その結果、自分で十分な種子管理ができなくなった生産者は、モンサントなどのグローバルバイオ企業から、遺伝子組み換えや高価格の種子を買わざるを得なくなり、「生産者だけでなく消費者にとっても、将来マイナスになるだろう」と指摘した。 意見交換で、県の指定採種がある茨城県JA水戸の八木岡努組合長は「採種は作り続けなければならず、公的機関がフォローしないと維持できない。また企業に任すと、利益・効率に走って、(市場の小さい)地域の品種が廃れる。廃止する必要があるのか」と訴えた。
これに対して、出席した農水省の農林水産会議事務局研究企画課企画班の宇井伸一課長補佐は、「現在、稲に関して、都道府県の奨励品種で、民間開発の品種がないことから、イコールフッティングになっていないためであり、種子法を廃止することで農家の選択肢が増える。食糧増産のための種子法ができて65年経ち、もう国が関与する必要は無くなった」と説明。その例として民間の育種が定着している野菜の種子を挙げた。
参加した消費者からは、遺伝子組み換え種子の安全性への疑問や、種子に関する知見が外資に譲渡される恐れ、JAや生産者からは現在の採種事業への予算措置などについての意見や質問があった。
なお、主要農作物種子法の廃止法案は、3月23日に衆議院農林水産委員会で可決され、参議院で審議されているが、早ければ4月13日にも採決される。山田・元農水大臣は「議員立法も視野に、種と命を守るための運動を続けよう」と参加者に呼びかけた。
(写真上から)200人が参加した種子法廃止の勉強会、種子の重要性を強調する西川芳昭教授、地域品種の大切さを訴えるJA水戸の八木岡組合長
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