TPP11 7月11日から首席交渉官会合2017年6月16日
EU、米国の動向も影響
政府は日EU・EPA交渉について早期の大枠合意に向け交渉を進める方針だが、TPP11の協議や、日米2国間交渉に対する米国の方針もにらみながら議論が進められていくとみられており、わが国とEU、米国との動向に留意しながら情勢を注視していく必要がある。
5月20、21日にベトナム・ハノイで開催されたAPEC閣僚会合に合わせて開かれたTPP11の閣僚会合では、TPPを早期発効させることを追求し、米国の参加を促す方策も含めて検討し11月のAPEC首脳会合までに結論を出すことを確認した。
会合では11カ国の首席交渉官会合を日本で開催することを決め、7月11日から首席交渉官会合が行われる予定になっている。
その直前の7月7~8日にはG20首脳会合がドイツ・ハンブルグで開かれ、その機会を利用し安倍首相は日EU・EPA交渉の大枠合意をめざす姿勢だ。交渉の行方は不透明だが、一方で、G20の場では米国が貿易問題に対してどのような姿勢を示すのかも注目される。それらが11日から東京で開かれるTPP11の協議にどう影響を与えるか。
◆米国の動向 不透明
ただ、米国のスタンスはいまだに、さらに見極めが必要な状況にある。 米通商代表(USTR)にロバート・ライトハイザー氏が正式に就任したのは5月15日。トランプ政権の閣僚人事のなかではもっとも遅れた。ライトハイザー氏は議会公聴会で日本との自動車貿易の不均衡には「あらゆる機会を活用して日本の障壁に対処する」と述べたほか、米国の農産物輸出を拡大する市場として「日本は最優先ターゲットだ」とも主張し、自動車と農業の市場開放に強い決意を示している。しかし、政府高官人事の指名は遅れており、トランプ政権が貿易政策全般についての具体的な考え方を明らかにして各国との調整を本格化する可能性は低いとの見方もある。
ただし、トランプ大統領が就任時に意向を示したNAFTA(北米自由貿易協定)再交渉については、5月18日に議会通知を行った。米国のTPA法(大統領貿易促進権限)では交渉開始の90日前に通知することになっていることから、NAFTA再交渉は8月16日以降に開始される。また、何を再交渉の目的とするかについて交渉開始30日前にUSTRのウェブサイトに公表することになっており、7月中旬にも交渉方針が示される見通しだ。
◆NAFTA再交渉へ
NAFTA再交渉では現協定の交渉時になかった分野や、知的財産、デジタル貿易、サービス、衛生・植物検疫など規定の見直しなどが狙いとなるほか、トランプを大統領に押し上げたラストベルトと呼ばれる中西部製造業のためにどのような利益を示すことができるかも焦点になる。
しかし、米国が製造業の労働者の利益のために強い姿勢を示せば、カナダとメキシコは農業分野で徹底的に自国の利益を追求することになるのではないかと米国農業界には不安が広がっているという。こうしたなかライトハイザーUSTR代表は5月24日の記者会見で、農業分野を「貿易交渉では中心に位置づけ、最優先とする」と述べた。また、農務省(USDA)のパーデュー長官は輸出促進を図るために貿易担当の次官ポストを新設し輸出拡大に向けた体制強化を行っているという。 こうした米国の動向のなか、上院のハッチ財政委員長が5月に、NAFTAの再交渉とあわせて日米二国間交渉を可能な限り同時並行ですすめるべき、と米国の専門誌に対して明らかにしたことが注目される。
4月に行われた日米経済対話では年内に第2回の会合を開くことにしたが、NAFTA再交渉をひかえ米国が日米二国間交渉について言及してくる可能性もあり、さらに注視が必要になる。
【主要な政治日程】
〈6月〉
○米国=大統領令に基づく貿易赤字原因等の調査報告期限
○米国=米中の戦略・経済対話
〈7月〉
○欧州=G20首脳会合(7~8日、ドイツ)
○日本=TPP首席交渉官会合(11日~)
○米国=NAFTA再交渉目標の提出期限(7月中旬)
〈8月〉
○米国=NAFTA再交渉開始?(中旬以降)
〈9月〉
○欧州=ドイツ連邦議会選挙
〈11月〉
○アジア=APEC首脳会合
○日本=日米経済対話?
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