自営農業者は元気で長生き2017年6月30日
早稲田大学・堀口名誉教授らが研究
60歳以上の農業者は非農業者より健康で長生きするのではないか。この仮説のもと早稲田大学政治経済学院・堀口健治名誉教授、同大学・弦間正彦教授らのグループ(持続型食・農・バイオ研究所「農業者・住民の健康調査班」)が後期高齢者の医療費データとアンケートによる調査を元に分析し、特に自営農業者は男女とも、それ以外の人との間に有意な差のあることを明らかにした。6月28日発表した。
アンケート調査は、埼玉県の本庄市で75歳以上の農業者(農地10a以上の耕作者)のリストをもとに、そのほかの人の医療費を比較した。それによると本庄市で農業に従事する後期高齢者一人あたり医療費は、他の後期高齢者に比べ約7割(2010年~14年)で、大きな差が見られた。
ただこれは、働いている健康な農業者と、それを除いた、仕事をしていない人を主に、病人も含めた全員を対象にしたものであるため、より正確に把握する必要がある。そこで次に昨年2~3月、同市の農村部と都市部で同じアンケートを各世帯に配布した。農村部はJA埼玉ひびきのの協力で543枚、都市部は学生によるポスティングで300枚の有効回答を集め、集計した。
この中で、平成元年以降に亡くなった家族員の、それぞれの死亡年齢、亡くなる前や引退前までに従事していた仕事の種類とその従事期間、引退年齢、引退後の余命期間等を集計した。引退前までの仕事の種類は自営農業、雇われての非農業勤務、雇われての農業勤務、それ以外の自由業の4種類を設定したが、そのなかで自営農業とそれ以外の人のグループで大きな差が確認できた。
四つの特徴があったという。一つには、自営農業者男女の寿命の長さが際立っている。自営農業者の平均死亡年齢は男性で81.5歳に対しそれ以外の人のグループ73.3歳、同女性84.1歳に対し、同82.5歳だった。二つには.仕事の従事期間は男女ともに自営農業従事が長く、それが健康寿命の延伸化に貢献している。自営農業者の引退までの就労期間は男性で50.8年に対し、それ以外が37.5歳、同女性は49.1歳に対し28.0歳だった。
三つには、引退年齢で、自営農業者は男女とも高齢時期で、それ以外の人の多くが定年退職の年齢を引退年齢としている。つまり自営農業者は70歳前半まで健康に農業に従事していたことを示す。そして引退後の余命は、自営農業者の男性7.4年に対して、それ以外の人が9.6年、女性が同じく11.0年と19.3年となっている。つまり自営農業者は高齢まで元気で働く、いわゆる「ぴんぴんころり」の特徴が出ている。このほか、死亡原因に老衰が多いことや入院経験が少ないなど、自営農業者にはそれ以外の人との違いはっきり見られた。
こうした知見から、堀口名誉教授は「急速に増加する後期高齢者の医療費を削減するためにも、60~70歳代以降の望ましい活動や生活のあり方など、自営農業者のあり方を一つの事例として研究し、広報する必要がある。また農業者の実際の仕事や活動のどの部分が長寿に結びつき、どのような生活スタイルが健康維持につながるのを明らかにしたい」と指摘している。
(写真)高齢者の自営農業は元気で長生きできる
重要な記事
最新の記事
-
JA貯金残高 108兆2105億円 1月末 農林中金2025年3月10日
-
シンとんぼ(132)-改正食料・農業・農村基本法(18)-2025年3月8日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(49)【防除学習帖】第288回2025年3月8日
-
農薬の正しい使い方(22)【今さら聞けない営農情報】第288回2025年3月8日
-
魚沼コシで目標販売価格2.8万~3.3万円 JA魚沼、生産者集会で示す 農家から歓迎と激励2025年3月7日
-
日本人と餅【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第331回2025年3月7日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「コメ騒動」の原因と展望~再整理2025年3月7日
-
(425)世界の農業をめぐる大変化(過去60年)【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年3月7日
-
ラワンぶきのふきのとうから生まれた焼酎 JAあしょろ(北海道)2025年3月7日
-
寒暖差が育んだトマトのおいしさ凝縮 JA愛知東(愛知)2025年3月7日
-
給付還元利率 3年連続引き上げ 「制度」0.02%上げ0.95%に JA全国共済会2025年3月7日
-
「とやまGAP推進大会」に関係者約70人が参加 JA全農とやま2025年3月7日
-
新潟県産チューリップ出荷最盛期を前に「目合わせ会」 JA全農にいがた2025年3月7日
-
新潟空港で春の花と「越後姫」の紹介展示 JA全農にいがた、新潟市2025年3月7日
-
第1回ひるがの高原だいこん杯 だいこんを使った簡単レシピコンテスト JA全農岐阜2025年3月7日
-
令和7年度は事業開拓と業務効率化を推進 日本穀物検定協会2025年3月7日
-
【スマート農業の風】(12)ドローン散布とデータ農業2025年3月7日
-
小麦ブランの成分 免疫に働きかける新機能を発見 農研機構×日清製粉2025年3月7日
-
フードロス削減へ 乾燥野菜「野菜を食べる」シリーズ発売 農業総研×NTTアグリ2025年3月7日
-
外食市場調査1月度市場規模は3066億円2019年比94.6% コロナ禍以降で最も回復2025年3月7日