「日本の種子(たね)を守る会」発足 「種子法」に代わる法律を2017年7月4日
JAと生協が連携国民運動へ
主要農作物(穀類)の種子を守るため、農業者や消費者による「日本の種子(たね)を守る会」が7月3日発足した。主要農産物種子法(種子法)廃止に伴い、〝公共財産〟である種子の安定供給が脅かされる恐れがあることから、同法廃止後も、これまでの種子政策を継続し、予算措置を含めて各都道府県等へ働きかけ、新法の制定を視野に入れる。「守る会」会長に茨城県JA水戸の八木岡努組合長を選び、生協の幹部が役員になるなど、JAと生協が連携して幅広い国民を展開運動することを確認。生産者や消費者、生協・JAの関係者など約350人が出席した
主要農作物種子法は平成30年4月に廃止となる。昭和27年、戦後の食糧不足のもと、国の責任でコメや大豆、麦などの主要農作物の種子を安定生産、安定供給するために制定された。この法律のもとに都道府県に優良品種奨励制度ができ、厳密な品質管理のもとで、優れた種子を安く、安定的に確保してきた。
政府は、この制度が民間企業の種子事業への投資を阻害しているとして、突然廃止した。このため今後、コメなどの種子の価格が高騰し、また各地で栽培されている特産農作物の種子の維持が難しくなる恐れがある。さらに日本の種子が世界的なグルーバル企業に支配されることも懸念される。
発起人の一人、茨城県JA水戸の八木岡努組合長は、「農家は〝たね場〟(種苗圃)で、厳密な品質管理のもと、65年間、種子を生産してきた。その結果、国民はおいしいコメが食べられるのであり、このシステムがなぜ必要ないのか。われわれは次の世代へ、安全で安心、プラスおいしいコメを提供する義務がある」と、生産者と消費者が中心になって日本の種子を守ることの重要さを強調した。
また生活クラブ生協連合会の加藤好一会長は、「日本には、それぞれの地域に合った種子があり、産直で提携してきた。この多様性が、種子法廃止で失われ、画一的な種子が支配的になる恐れがある」と心配する。
設立総会では西川芳昭・龍谷大学教授が講演。「種子の多様性を守るー人間と植物の視点から」で話し、〝種子の公共的〟性格を挙げ、「種子はだれかのものでもない。一人でつくれるものでもない。必要な種子を誰でも持続的に入手できるものでなければならない」という。さらに日本のイネには中国、フィリピンなどイネの遺伝形質も入っている。これらの国の生産者とも連携し、優良で持続できる種子の確保に努めるよう、政府に働きかけることが大事だ」と、公共財を守るため国際的な連携の必要性を強調した。
「守る会」は今後、(1)これまでの種子行政の継続について、予算措置等を含め国や各都道府県への働きかけ(特に農業試験場の維持、奨励品種制度の維持、種取り農家の保護・協力など)、(2)新法制定に向けた国会内・外の協力関係の構築・推進と署名活動など、生産者や消費者に公的種子が果たす役割についての啓発活動、情報共有のために勉強会などを行なう。なお、役員には八木岡会長のほか、副会長に加藤好一・生活クラブ生協連合会会長、萬代宣雄・島根県JAしまね前組合長、幹事長に山本伸司・パルシステム生協連合会顧問が決まった。
設立趣意書(抜粋)
これまで日本は、コメの種子は100%国産で自給し、たくさんのおいしい品種を作り出してきました。私たちは大きな公共財産を失うかも知れない瀬戸際にいます。私たちには前の世代から受け継いだ豊かな財産を将来の世代へとしっかり渡していく責任があります。それには日本の種子の公共品種を守るための新たな法律が必要であると考えます。
日本の食と農を守るために、生産者や消費者という立場の違いを超えて、共に公共品種を守るための活動を行なっていかなければなりません。そのために私たちは「日本の種子(たね)を守る会を設立します。
(写真上から)350人が出席した設立総会、会長に選ばれた八木岡努・JA水戸組合長
重要な記事
最新の記事
-
【人事異動】JA全農(2025年1月1日付)2024年11月21日
-
【地域を診る】調査なくして政策なし 統計数字の落とし穴 京都橘大学教授 岡田知弘氏2024年11月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】国家戦略の欠如2024年11月21日
-
加藤一二三さんの詰め将棋連載がギネス世界記録に認定 『家の光』に65年62日掲載2024年11月21日
-
地域の活性化で「酪農危機」突破を 全農酪農経営体験発表会2024年11月21日
-
全農いわて 24年産米仮渡金(JA概算金)、追加支払い2000円 「販売環境好転、生産者に還元」2024年11月21日
-
鳥インフル ポーランドからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
鳥インフル カナダからの生きた家きん、家きん肉等の輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
JAあつぎとJAいちかわが連携協定 都市近郊農協同士 特産物販売や人的交流でタッグ2024年11月21日
-
どぶろくから酒、ビールへ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第317回2024年11月21日
-
JA三井ストラテジックパートナーズが営業開始 パートナー戦略を加速 JA三井リース2024年11月21日
-
【役員人事】協友アグリ(1月29日付)2024年11月21日
-
畜産から生まれる電気 発電所からリアルタイム配信 パルシステム東京2024年11月21日
-
積寒地でもスニーカーの歩きやすさ 防寒ブーツ「モントレ MB-799」発売 アキレス2024年11月21日
-
滋賀県「女性農業者学びのミニ講座」刈払機の使い方とメンテナンスを伝授 農機具王2024年11月21日
-
オーガニック日本茶を増やす「Ochanowa」有機JAS認証を取得 マイファーム2024年11月21日
-
11月29日「いい肉を当てよう 近江牛ガチャ」初開催 ここ滋賀2024年11月21日
-
「紅まどんな」解禁 愛媛県産かんきつ3品種「紅コレクション」各地でコラボ開始2024年11月21日
-
ベトナム南部における販売協力 トーモク2024年11月21日
-
有機EL発光材料の量産体制構築へ Kyuluxと資本業務提携契約を締結 日本曹達2024年11月21日