卸売市場 規制撤廃へ議論-規制改革会議2017年10月26日
内閣府の規制改革推進会議農林WG会合と未来投資会議は10月25日に合同会議を開き、卸売市場改革の議論を開始した。複数の委員が現行の法制度の見直しではなく「ゼロベースの見直しが求められている」と指摘し、卸売市場について抜本的に規制を廃止すべきだなど急進的な意見を表明した。
◆「受託拒否」も撤廃議論
政府は昨年11月に決めた農業競争力強化プログラムで卸売市場法を「抜本的に見直し、合理的理由のなくなっている規制は廃止する」とし、6月の規制改革実施計画では29年末までに検討し結論を出すとしている。
会合では農林水産省の井上宏司食料産業局長から卸売市場を含めた農産物、食品流通の課題と改革の方向性などについて考えを聴取した。
農水省は卸市場法制定時は、「卸売業者=集荷」、「仲卸業者=分配」、「実需者=販売」という役割分担が明確で産地から消費地まで流通が画一的だった。しかし、最近では最終消費での生鮮品の割合は低下しているほか、市場外流通、ネット販売などの直売も増えていることなどを指摘した。
市場経由率が低下しているとはいえ、農水省が提出した資料では現在も国産青果は86%が卸売市場経由で流通している。会合では現在も相当量の取引があり卸売市場の役割をはっきりさせたうえで議論すべきで、生産者やJAが出荷すれば市場は引き取り(受託拒否の禁止)、代金決済も確保されているなどのメリットもあるとの指摘もあった。
これに対して農水省は出荷すれば引き取ってもらえるというメリットがある一方で、農業者の所得向上を図る観点からは、いいものをより高く売る販売ルートを自ら選択することも必要で、これからの望ましい姿として、通販やネット販売などと同じように、卸売市場出荷も「ひとつのオプション」となるような環境を整備すべきだとの考えを示した。
一方、複数の委員からは卸売市場の役割は変質して、現行の法制度の見直しではなく「ゼロベースでの見直し」を求める意見が出された。
卸売市場法では、品目ごとにあらかじめ売買取引の方法を設定することや出荷者、売買参加者への差別的な扱いを禁止している。
そのほか、受託拒否の禁止、卸売業者が実需者へ販売するなど第三者販売の原則禁止、仲卸業者が産地から直接仕入れる直荷引きの原則禁止、商物一致の原則、代金決済の確保などの規制がある。
内閣府事務局の説明では、委員からは「国が関与する市場を考えたとき、違和感のない規制として、売買取引方法の設定と差別的取扱の禁止は理解できるが、そのほかは当然いらない」といった趣旨の意見が出されたという。そのうえで議論の余地があるとすれば「受託拒否の禁止ぐらいではないか」との指摘があった。
受託拒否の禁止も含め、ほぼすべての規制を撤廃すべきとの極端な意見だ。
生産現場では地域内の量販店などへの直接販売の拡大にも努力はしているが、それも代金決済などが確保されている卸売市場への出荷を前提に販売ルートの複線化を図り産地を発展させていこうという取り組みだ。改革を進めている産地などの現状を見ない卸市場改革は、産地だけでなく卸売業者、仲卸業者など市場関係者からも反発が出る。
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