TPP11大筋合意 政府20日にも政策大綱2017年11月15日
政府は11月14日、自民党のTPP・日EU等経済協定対策本部で米国を除く11か国で大筋合意した新しい協定「TPP11」の内容について説明するとともに、20日にもTPP関連政策大綱を改訂したい考えを示した。
会合にはTPP担当の茂木敏充経済再生担当大臣が出席。ベトナム・ダナンで11月9日のTPP閣僚会合で新協定の条文と凍結リストを含む合意パッケージに全閣僚が合意し、10日に合意内容を確認したと報告した。
(写真)TPP11協定の合意内容を説明する茂木経済再生担当大臣(自民党本部、11月14日)
最終日にはカナダのトルドー首相が合意に難色を示し首脳会合は見送られたが茂木大臣は10日の閣僚会合ではカナダも含め一文づつ確認し閣僚声明を作成した。
茂木大臣は「TPP11」について本格交渉開始から4か月という短期間で合意に至ったことや、TPP協定を取り込み凍結部分を20に絞って11か国すべてが合意できるようになったことなど、凍結内容がもともと米国が主張していた項目が多く、米国の復帰の「インセンティブ」になる合意だと胸を張り「署名に向けて準備を進めていきたい」と話した。
署名までに引き続き交渉をする項目も残されたことから大筋合意ではないとの指摘もあるが、TPP政府対策本部の澁谷和久政策調整統括官は「交渉前に新協定の条文が確定し、凍結リストに合意できれば大筋合意とすることは共有されていた。これは大筋合意だ」と説明した。
新協定の名称は「包括的先進的な環太平洋パートナーシップ協定」。包括的=Comprehensive、先進的=Progressiveという文言が加わり略称としてCPTPPとも言われるが、政府はTPP11を使用している。
TPP11協定の条文は7条。新協定の考え方は米国の復帰を前提にして、12か国で合意したTPP協定の全文を条文に組み込み(第1条)、そのうえで特定の規定の凍結を決めたこと(第2条)。また、協定の発効は6か国で批准されることを規定した。
TPP協定では6か国の批准に加えて参加国GDPの85%を占めることが発効要件となっており、そのため米国の離脱で発効できなくなった。今回の11か国交渉でもGDP要件をつけるかどうか議論はあったが「もうこりごりだ」との意見が大半を占めたため原署名国の過半数を要件としたという。かりに原署名国が10か国となった場合は、そのうち5か国で批准されれば発効することも合意した。
凍結項目はISDS規定、生物製剤データ保護、知的財産の内国民待遇、特許対象事項など20項目。11項目が知的財産関連となっている。
このほかに参加国による協定署名までに具体化すべき項目として▽国有企業留保表(マレーシア)、▽サービス・投資留保表(ブルネイ)、▽労働に関する紛争処理(ベトナム)、▽国内文化保護に関する例外(カナダ)の4項目。日本政府はこれらの項目の調整は進んでおり、合意できるとの見通しを示す。ただし、カナダは、このほかにもさらに個別協議の要請を行う可能性もあるとの見方もある。
◆米国離脱で見直しも担保
焦点のひとつが農業分野など協定の見直し条項。TPP協定ではTPP委員会を設置し協定発効から3年以内に再協議を行うことになっていた。
それを新協定では米国が参加するTPP協定の▽発効が見込まれる場合と▽発効が見込まれない場合に、新協定参加国から要請があったときには協定の見直しを行うと規定された(第6条)。
日本は脱脂粉乳とバターでTPP枠として低関税輸入枠を設定している。TPP11協定はこのTPP合意を見直さないため、米国が参加していないのにこれら乳製品の輸入枠が拡大してしまう懸念がある。また、牛肉・豚肉などのセーフガード(SG)も米国が参加していないために発動できないという懸念もある。
こうした懸念から今回の閣僚会合で、茂木大臣は農産物の関税割当やセーフガード措置に具体的に言及し、必要な再協議を行うことについて合意が得られたという。
ただし、現状はTPP協定から離脱するか、復帰するか「米国ははっきりしないので6条には該当しない」と政府は説明する。日本政府の姿勢は米国に復帰を働きかけるのが基本。6条で言う米国の復帰が「見込まれない場合」とは、トランプ政権が日米などとFTA交渉を進め、違う枠組みの通商交渉に乗り出したときなどと想定され、対米通商政策全体で日本が大きな局面に立たされることも意味する。
なお、新協定では米国以外の国の新規加入は11か国が判断するとされている。
【凍結項目】
○急送少額貨物
〇ISDS (投資許可、投資合意)関連規定
○急送便附属書
○金融サービス最低基準待遇関連規定
○電気通信紛争解決
○政府調達(参加条件)
○政府調達(追加的交渉)
○知的財産の内国民待遇
○特許対象事項
○審査遅延に基づく特許期間延長
○医薬承認審査に基づく特許期間延長
○一般医薬品データ保護
○生物製剤データ保護
○著作権等の保護期間
○技術的保護手段
○権利管理情報
○衛星・ケーブル信号の保護
○インターネット・サービス・プロバイダ
○保存及び貿易
○医薬品・医療機器に関する透明性
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