地域に根づく子供食堂2018年4月20日
・農業体験の取り組みも
・農水省が事例集作成
農林水産省は全国で子供食堂が増えていることをふまえ、有識者などで委員会を構成しアンケートやヒアリングを実施し、「子供食堂と地域が連携して進める食育活動事例集」を作成した。
◆子供の居場所づくり
栄養のある食事や温かな団らんを安く、あるいは無料で子供たちに提供する「子供食堂」の取り組みが地域の力で全国に広がっている。
この事例集では全国274の子供食堂運営者へのアンケート結果で運営実態と課題をまとめている。 子供食堂の活動目的として意識していることは「多様な子供たちの地域での居場所づくり」が93.4%ともっとも多く、次いで「子育てに住民が関わる地域づくり」(90.6%)、「生活困窮者家庭の子供の地域での居場所づくり」(86.5%)となった。
回答した子供食堂の59.9%が都市部で、29.2%が郊外だった。山間部は3.3%だった。
運営主体の80.7%が独立した法人などによるもので、任意団体が42.5%、NPO法人が23.1%、個人が14.9%となっている。
子供食堂は「月1回程度」開いているのが48.5%と約半数を占め、2週間に1回以上開催が38.7%、週1回以上は14.2%だった。開催日や時間は「平日の夜」が55.8%、「土日祝日の昼」が39.1%だった。1回あたりの参加者は子供で11~20人がもっとも多く、大人は10人以下がもっとも多かった。スタッフは6~10人がもっとも多く平均は9人となった。
(写真)表紙・子供食堂事例集の表紙
◆食材は地元農家も提供
運営費は年間30万円未満が70%以上を占め、助成制度を利用している子供食堂は68.6%あった。ただ、助成金や寄付以外に持ち出しをあてた経験のある子供食堂も58.0%にのぼった。
衛生管理については、約90%の子供食堂が知識を持つ有資格者がいると回答した。また、37.6%が営業許可を受けるか、保健所への届出をしており、35.4%は保健所に相談した結果、許可や届出は不要との判断を受けたという。
子供食堂の立ち上げにあたって苦労したのは「資金の確保」、「学校・教育委員会や行政からの協力」、「スタッフの確保」が上位にあがっている。
現在の課題として感じている項目でもっとも多かったのは「来てほしい家庭の子供や親に来てもらうことが難しい」(42.3%)で、次いで「運営費の確保」(29.6%)、「運営スタッフの負担」(29.2%)となった。「学校や教育委員会の協力が得られない」も17.2%だった。
◆農業体験の取り組みも
地域との連携では80%以上の子供食堂が、地域住民個人と連携して、地域活動として根付いている実態も示された。
生産者(農林漁業者)との連携では生産者個人との連携は31.8%あったが、農協や漁協との連携は13.1%とまだ割合は低い。
生産者や農漁業団体との連携をしている子供食堂では、食材や食材費の提供を受けていることが多く、農家等個人との連携では97.7%、農協等の連携では80.6%にのぼった。その他、食品メーカーやフードバンクからも食材。食費の提供を受けているが、お寺や教会など食品とは直接関係ない団体からも食材・食費で支援を受けていることも示された。
農業者と連携している子供食堂の10%程度では農漁業者の苦労を話してもらったり体験・交流の機会をつくっていることも分かった。栄養面でも食事の大切さだけでなく、食への感謝、農業への理解などにまで広げる活動が行われている事例も示された。
有識者委員会(子供食堂と連携した地域における食育の推進活動委員会=座長・村山伸子新潟県立大学教授)は今回の調査から「子供食堂と地域とが連携することで子供たちの食経験を豊かにし、地域の食育を推進できる大きな可能性を秘めている」と分析し、「官民を問わずさまざまな個人や団体・機関がそれぞれに『子供食堂のためにできること』を持っており、連携・協働の環への参加者の広がりが子供食堂の未来に大きくかかわっている」と指摘している。
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