検疫条件が農畜産物輸出の"大きな壁"に2018年5月11日
日本の農畜産物を海外へ輸出することが政府を含めて大きなテーマになっている。しかし、日本産農畜産物を受け入れるかどうかは、作物別に相手国別にさまざまな条件がある。とくに検疫条件には大きな差があり、これが輸出拡大の“大きな壁”になっていることが、JA全中の調査で分かった。
表は、JA全中が今年4月1日時点(牛肉は29年11月7日が最新)の、米国を含めたTPP参加国を含めて、国別・作物別(17品目)に検疫条件を整理したものだ。
これを見ると、記載全品目に「◎:植物検疫証明書無しで輸出可能」と「☆:二国間合意にもとづく条件を満たしたもののみ輸出可能」の印がついているは香港とシンガポールだけだ。マレーシアは「ウンシュウミカン」以外は◎、☆で、ウンシュウミカンも「P:相手国の『輸入許可書』の取得が必要」と「Q:植物検疫証明書を添付すれば輸出可能」なので、検疫証明書があれば輸出できる。
EUは◎が9品目(ブドウのキプロス向けには栽培地検査または消毒が必要)、☆が1品目そして「Q:植物検疫証明書を添付すれば輸出可能」が7品目(ウンシュウミカンは栽培検査と消毒が必要)と一部条件はあるがほぼ輸出が可能だといえる。カナダも一部「検疫条件が未設定」な品目があるが、検疫条件でみると輸出しやすい国だといえる。
また、台湾もトマトを「輸入を原則禁止」している以外は、植物検疫証明書を添付すれば輸出できる相手国だ。ブルネイも全品目が「PQ」なので、輸入許可書を取得し検疫証明書を添付すれば輸出できる。
もっとも大きな可能性がある輸出国として期待されている中国は、ほとんどの品目が「△:相手国の検疫条件が未設定のため輸出できないか、または不明」となっており、輸出が可能なのは「日本ナシ」と「リンゴ」で、「コメ(精米)」はくん蒸などの厳しい条件が課せられていることは承知の通りだ。
韓国も「植物検疫証明書」を添付すれば輸出できる品目が多いが、東電福島第一原発事故がいまでに尾を引き「輸入を一時停止」されている品目が多い。
政府が積極的に進めているTPP11参加国をみると、ベトナムはほとんどの品目で「検疫条件が未設定」となっている。メキシコ、ペルー、チリ、オーストラリア、ニュージーランドも同様で、TPP11に参加しても日本の生産者にとって本当にプラスになるのかは、大きな疑問だといえる。
そして二国間交渉の要求を強めている米国は、8品目が「×:相手国が輸入を原則禁止」となっているなど、農産物の輸出国としては魅力あるマーケットとはいえないといえる。
こうしてみてくると、当面、国産農畜産物の輸出相手国は、すでに実績がある香港・台湾・シンガポール・マレーシアに絞られてくる。さらに輸出を拡大・展開しようとするならば、具体的に作物別の「検疫条件」について、国が相手国と早急に「膝詰談判」でもして、条件を緩和しなければ難しい。
JA全中の中家徹会長は5月10日の定例会見でこの表を示し、「相手国の関税が引き下げられたり撤廃されればすぐにでも輸出できるイメージがあるが、検疫で許可されなければ輸出できない。たとえばこれから最盛期を迎えるモモをTPP11参加国に輸出しようとしてもシンガポール、マレーシア、ブルネイを除く7カ国にはできない」と話し、「JAグループとして政府に対して検疫上の課題を解決するよう要請していきたい」として所得向上につながるよう輸出環境の整備が必要だと指摘した。
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