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【全国農政連予備選挙候補者に聞く】黒田栄継・元全国農協青年組織協議会会長2018年5月18日

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 全国農業者農政運動組織連盟(全国農政連)は来年夏の参議院選挙比例代表の推薦候補者を決めるために5月中旬から予備選挙を行う。農政運動組織の代表などが投票し、各都道府県の農政運動組織から推薦された3氏から1人を選ぶ。3候補は元JA全青協会長の黒田栄継氏、JA新庄市経営管理委員会の山科朝則氏、現参議院議員の山田俊男氏(五十音順)。
 予備選挙を前に3氏の所信を聞いた。共通の質問事項として▽今日の農業・農村の実態(高齢化、担い手・労働力不足、食料自給率の低下などの状況)についての認識と求められる政策、▽発足以来70年が経過した農協が社会・経済環境の変化のなかでどのような役割を果たすべきか、▽安倍農政に対する評価を挙げ、その他、日本社会のあり方や政治全体に求められることなどを語ってもらった。
 先進国最低の食料自給率、65歳以上が65%を占める担い手の高齢化、TPPや日欧EPAなどによる農産物市場のさらなる開放への懸念など、課題は山積するなか、持続可能な未来を見据えた農業政策をどう構想するかが求められている。地域社会を担うJAの役割もまた一層重要になる。来夏の参院選に向けて現場に根ざした議論となることが期待される。

「農の価値」を国民と共有
日本の食のため全力で挑戦

 

 ―農政連の候補に名乗りを上げられました。その思いを聞かせてください。

黒田栄継・元全国農協青年組織協議会会長 この国の食と農、一次産業に対する価値観を高め、本来のあるべき姿に戻したい。そう思い今までも必死で様々な活動をしてきました。就農した20年前、WTO農業交渉のとき、「交渉がうまくいかないのは日本の農業のせいだ」との言葉が多く聞こえてきました。
 食とは命の源であり、農業は国の礎です。この価値を国民としっかりと共有しなければならない。それが今回、国政の場に挑戦する決意をした大きな理由です。

(写真)黒田栄継・元全国農協青年組織協議会会長

  

◆   ◇

 

 ―JA全青協の会長として活躍され、特にポリシーブックの作成に関わってこられました。

 農協は組合員自らが運営するもので、われわれの組織だということを訴えることが大事だと考え、取り組みました。農家の社会的地位が低かった時代もありましたが、先人たちの努力や農協の取り組みで、高まってきています。
 われわれは生まれながら農協が身近にありその恩恵を享受してきた世代です。そのため農協のよさを十分に自覚していない盟友も少なくありません。全国にはいろいろな青年組織がありますが、政策提言としてのポリシーブックほど体系的に整ったものはないと思っています。
 若い盟友はよく勉強しています。自分たちの思いを盛り込み、ポリシーブックはどんどん内容が充実してきています。その内容を着実に実現することで、農政に現場の声を反映させるシステムになればと思っています。ポリシーブックの、めざすところは現場の課題を挙げ、それを中心に農政が動くようにすること。
 つまり国主導の政策ではなく、現場の問題を解決するにはどうするのか。われわれが自ら考え、行動するようにすることです。

 

 ―今日、農業の課題は何でしょうか。

 生産と消費の現場が切り離されており、この距離を近づけることです。農業者が減るなかで、相互の理解を深めるよう努力しなければなりません。これからの日本の農業は、みんなが同じ方向をめざすのではなく、多種多様な経営体があるべきです。特に家族農業の重要性を、改めてわが国の農業政策にしっかり位置付けるべきと考えます。
 北海道の十勝地方でも、元気のよい生産者が周辺にたくさんいます。従って規模拡大に必要な農地はなかなか出てきません。面積が少ない中で、人手をかけて付加価値の高い農業を実現している生産者もいます。一方で、経営規模拡大には国の支援も必要です。農地の確保や機械設備への投資にはリスクがあります。生産者が安心して規模拡大できるような環境整備が求められます。

 

◆   ◇

 

 ―いまの農業・農協の状況をどのように認識していますか。

 農協は間違いなく、われわれにとって無くてはならない組織です。しかし、先人たちの思いや苦労を知らない世代が増えてきているのも事実です。一方で、新自由主義経済中心の経済政策や過度な規制緩和では、農村・地方から人がいなくなり、日本社会全体が疲弊してしまいかねません。その反省で、現在ある物の価値を尊重し、農協がつくってきた相互扶助の精神を改めて評価する必要があるのではないでしょうか。
 農協はおいしいところだけ利用するのではなく、われわれにとって意味ある組織にしなければなりません。いま、まさにそのことが問われていると感じています。まずは、農協は自分たちの組織だということをわかってもらう努力が必要です。
 資本主義は優れた制度かも知れませんが、ベストではないと思います。少しずつやさしい世界、助け合う世界にしていかなければなりません。これはそうした環境に育った者として義務であり、それをいかに国民と共有するかが問われています。
 青年部の活動でつらかったのはTPPの時、北海道でも賛成が意外と多かったことです。消費者が、TPPは困るよ、という環境をつくってこなかったことを反省しました。多くの困難があるとは思いますが、国民の共感を得る取り組みを強めるよう訴えたいと思います。

 

◆   ◇

 

 それには身近なところからの取り組みが大事です。私はこれを〝縁〟と考えていますが、これを大事にしないと、他の人に思いが伝えられません。その繋がりが広がり、また跳ね返って、共感の輪を拡げることができます。こうした繋がりから、さまざまな人がうちに寄ってくれます。
 就農当時、地元芽室町農協の組合長でホクレンの会長だった矢野征男氏から、「若いうちの苦労はつらいかもしれないが、だからこそみえるものがある。期待しているよ」と励まされたことが大きな励みになりました。矢野氏は全青協会長として先輩でもあります。
 われわれ世代がやるべきことは、農業・農協に関わるすべての人が、自分の生活のためだけでなく、この国の食のため、全力でチャレンジすることです。その後押しをするのが政治の役割だと考えています。

 

【略歴】
(くろだ・よしつぐ)
昭和51年北海道生まれ。
平成10年愛媛大教育学部卒。同年就農。19年JAめむろ青年部長、24、25年北海道農協青年部協議会会長、26年全国農協青年組織協議会会長、JA全中理事。27、28年JAバンク中央本部委員会委員、JA全厚連経営管理委員会参与。26haの畑作専業農家。

 

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