日EU経済連携協定に署名2018年7月18日
安倍晋三首相とEUのドナルド・トゥスクEU理事会議長とジャン・クロード・ユンカーEU委員会委員長は7月17日、首相官邸で日EU経済連携協定(EPA)に署名した。これによって政府は今後の国会で協定の承認と関連法案を審議する国内手続きに入る。
署名後に共同声明を発表。「本日は歴史的な一歩。この経済連携協定は自由貿易の旗を高く掲げ続け、自由貿易を力強く前進させていくとの日本とEUの揺るぎない政治的意思を世界に対して示すものである」と強調した。
安倍首相は共同記者会見で日EU・EPAにより人口約6億人、GDPの3割、21兆ドルを占める世界最大級規模の経済圏が誕生するとして「アベノミクスの新しいエンジンとなり、わが国の農林水産業者や中小・小規模事業者にとって大きなチャンスが生まれることになる。EPAの効果を日EU双方の市民が早く実感できるよう、早期発効に向けて協力していく」と話した。
合意内容は日本側関税撤廃率は農林水産品で約82%で米は関税削減・撤廃から「除外」で合意した。工業品等は100%関税撤廃する。
一方、EU側はほぼすべての農林水産品で関税撤廃し、工業品等は100%撤廃を達成した。
日本政府は農林水産物の輸出促進の環境整備ができたとしているが、TPPでは合意しなかったソフト系チーズに無税枠を新設するなどのTPP以上の譲歩を行っている。モッツァレラやカマンベールなどに発効後1年目に2万t、16年目に3.1万tまで拡大する。年間2万tは現在の輸入実績程度で現行はソフト系チーズには22.4%(シュレッド)~40.0%(プロセスチーズなど)の関税がかかっている。無税枠の新設でEU産のチーズが増えれば北海道のチーズなどに影響が出て、都府県も含めた酪農全体に打撃となりかねない。
そのほかスパゲティ・マカロニやワインでもTPP以上の譲歩をしている。また、豚肉は高い部位と安い部位で差をつける差額関税制度は維持されるものの、額は縮小されることや、豚肉調製品では関税撤廃される品目もあるなど、注視することが必要な品目も多い。
合意内容の詳細は明らかではなく、国会審議で明確にしていく必要があるとともに、TPPと同様、適切な影響試算とそれに基づく対策が検討されなければならない。
(関連記事)
・日EU・EPAの合意、合意内容は??(17.12.21)
・日欧FTAを「TPPプラス」にした愚行 東京大学・鈴木宣弘教授(17.07.11)
・日欧EPA 大枠合意(17.07.07)
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