米の需要実績 前年比6万t減-基本指針を改定 農水省2019年8月1日
農林水産省は7月31日に食糧部会を開き、米の需給と価格の基本方針について諮問し、農水省が示した最新の需要実績に基づいた需給見通しを部会として了承、答申した。
食糧部会であいさつする濱村進農林水産大臣政務官
平成30年7月から令和元年6月までの需要実績は前年の740万tから約6万t減少して734万tとなった。人口減少の影響で最近の主食米の需要量は年間10万t減がトレンドとされてきたが、今年度はトレンドよりは少ない6万t減となった。
農水省はその要因として価格を指摘する。平成27年産は60kg1万3175円だったが、28年産は同1万4307円、29年産は同1万5595円と年に1000円程度上昇した。その影響もあってこの間の需要量は年に12万tから17万t減少した。
一方、30年産は29年産にくらべて同94円高にとどまっており、価格の安定が需要量の減少幅を小さくしたとみる。
6月末の民間在庫量は前年から約1万t減少し189万tとなった。この在庫水準について農水省は米の供給に支障を来たす水準ではなく、在庫が積み上がると米価が下落することがこれまでにみられたことから、「在庫が変動しないよう需要に応じた生産が必要」としている。
今後の需要見通しは、元年7月から2年6月までの1年間で1人あたり消費量が57.6kgと見込む。これに人口1億2600万人をかけた726万tとなる。作柄はまだ不明だが、昨年11月の基本指針で示した適正生産量718万t~726万tであれば来年6月末の在庫が180万t~188万tとなる見込みだ。
食糧部会ではこの需要見通しを了承した。ただ委員からは米の需給調整をめぐりさまざまな意見が出た。
JA全中の金井健常務は6月末現在の主食用作付け意向調査結果では、前年並みとの回答が32県となっており、「需給緩和が心配」だとして、8月末まで延長した加工用米の申請受付など非主食用米の転換に行政と一体となった推進が必要だと強調した。また、備蓄米についても、作付け計画段階で取り組む必要があることも指摘した。
一方、中食を扱う(株)武蔵野の金戸義彦専務は米の需要が年間10万t減少しているなか政府が備蓄する米の量は90万t~100万tと変らないことに疑問を示し「米価が上がったまま下がってこない。もう少し需給が緩和する政策を」と指摘した。
これに対して農水省は政府備蓄米についてあくまで不作に備えて備蓄するものであり、100万t前後の備蓄量は民間在庫と合わせて考えると適正だとの考えを示した。同時に外食、中食の需要の伸びについては、その需要に合わせた生産を進める必要性も強調した。
なお、食糧部会は新たな委員構成となり、委員の互選で部会長に大橋弘東大公共政策大学院教授を選んだ。また、部会長代理は根本勝則(一社)日本経団連専務理事が選ばれた。
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