食品製造業HACCP導入途中含め6割強 日本公庫調査2019年10月11日
日本政策金融公庫(日本公庫)農林水産事業は、「令和元年7月食品産業動向調査」の特別設問で、昨年の食品衛生法改正で、原則、すべての食品事業者に導入が義務付けられたHACCP※の取り組み状況を調査した。
調査時点は、7月1日とし、郵送により調査票を配布し郵送により回収する方法で、全国の食品関係企業(製造業、卸売行、小売業、飲食業)6859社を調査対象として実施。有効回収数は2406社(回収率35.1%)。
図1=HACCP導入状況は、「導入済み」「導入途中」を合わせ6割強に。
調査結果の概要は次のとおり。
▽食品製造業者にHACCPの導入状況を聞いたところ、「導入済み(42.0%)」「導入途中(20.3%)」を合わせた62.3%がHACCPの導入に取り組んでいることがわかった。また、平成29年1月の前回調査から、「導入済み」「導入途中」の合計は11.8ポイント上昇している。
図2=HACCP認証取得状況は、「認証取得済み」「認証取得途中」を合わせ5割
HACCP認証の取得状況を聞いたところ、「取得済み(35.3%)」「取得途中(13.4%)」を合わせた48.7%の食品製造業者が、HACCP認証の取得に取り組んでいることがわかった。
HACCP認証を「取得済み」「取得途中」「取得を検討中」と回答した人に対して、取得・検討予定のHACCP関連の認証の種類を聞いたところ、FSSC22000やISO22000などの「国際的なHACCP認証(41.1%)」が最も多く、次いで「業界団体によるHACCP認証(34.3%)」「自治体によるHACCP認証(30.2%)」となった。
図3=売上高が大きい企業ほど第三者認証HACCPの取得率は高い。
HACCPの導入および認証取得状況について売上階層別に見ると、売上規模が大きい企業ほど「HACCP導入済み」「HACCP認証取得済み」の割合が高く、認証の種類は「国際的なHACCP認証」の割合が高い。一方で、売上規模が小さい企業は「自治体によるHACCP認証」「業界団体によるHACCP認証」の割合が高い。
▽HACCP導入の契機は、「義務化による導入(37.9%)」が最多。次いで「取引先からの要請(18.4%)」「異物混入等の食品事故を契機とする消費者の意識向上(17.5%)」。
これを売上階層別に見ると、売上高が10億円未満の企業は、「義務化による導入」が約半数を占めているが、売上規模が大きくなるほど「取引先からの要請」や「異物混入等の食品事故を契機とする消費者の意識向上」の割合が高くなる傾向が見られる。
▽HACCP導入の際の課題は、導入時の資金負担や導入前後のコストに関連する回答が多く、「施設・設備の整備(初期投資)に掛かる資金(27.4%)」「HACCP導入までに掛かる費用(13.3%)」「HACCP導入後に掛かるモニタリングや記録管理コスト(11.6%)」を合わせた約半数が資金負担面を課題に挙げている。
売上階層別に見ると、売上規模が50億円未満の階層では資金負担面を課題とする回答が多く、また、売上高100億円以上の企業では「特に問題がない」が約4分の1を占める。
HACCP導入・認証取得による効果は、「品質、安全性の向上(56.0%)」が最も多く、次いで「企業の信用度やイメージの向上(17.6%)」「従業員の意識向上(8.9%)」となった。
▽取引先の食品製造業者に対して、HACCP関連の認証取得や導入を求めている食品関連企業は、卸売業で約6割、小売業、飲食業(外食)で約7割となった。
(※)HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)は、原料受け入れから最終製品までの各工程ごとに、微生物による汚染、金属の混入などの危害を予測したうえで、危害の防止につながる特に重要な工程(例えば加熱・殺菌、金属探知機による異物の検出などの工程)を継続的に監視・記録する工程管理システム。
(注)この調査で、「HACCPの導入」とは、第三者認証を受けていないが、取引先から求められ、HACCPと同等の衛生管理を行っている場合や、自主的にHACCPと同様の取り組みがなされている場合などをいう。また、「HACCP認証の取得」とは、第三者認証を受けているものをいう。その認証には、「業界団体や地方公共団体によるHACCP認証」「対米国、対EU輸出水産食品の登録施設」「対米国、対EU輸出食肉の特定施設」「食品衛生法に基づく総合衛生管理製造過程承認制度」など。HACCPの名称で呼ばれていないISO22000、FSSC22000、JFSの認証を含んでいる。
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