農業関係被害拡大 台風19号の被害778億円に2019年10月28日
今年は台風や大雨などの被害が相次いでいるが、農林水産省のWebサイトのトップ画面には、「注目情報」として「災害に関する情報」と「豚コレラの発生」の2つが掲げられ、それぞれ同省が持つ情報のポータルサイトへ直接アクセスできる。
台風19号で浸水した水戸市 飯富地区
(撮影:令和元年10月13日午後、水戸市役所提供)
このうち「災害に関する情報」を見ると「最近発生した災害の情報」として、次の4つの風水害の情報が並んでいる。
▽風水害 令和元年台風第19号に係る被害情報(令和元年10月28日更新)
▽風水害 令和元年台風第15号に係る被害情報(令和元年10月10日更新)
▽風水害 令和元年8月の前線に伴う大雨に係る被害情報(令和元年10月4日更新)
▽風水害 6月下旬からの大雨に係る被害情報(令和元年9月20日更新)
まさに、6月下旬から10月の台風19号まで途切れることなく風水害が連続して発生していることがわかる。この間の農業関係被害を農水省や気象庁などの情報を基に発生順に整理すると次のとおりとなっている。
【6月下旬からの大雨】
6月下旬から梅雨前線が西日本から東日本付近に停滞し、前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだため前線の活動が活発となり、九州南部を中心に大雨となった。九州南部では6月28日から7月5日の総雨量が1000ミリを超えた所がある。
◆農業関係被害の概要
▽農作物など<被害額1億8000万円>
〇農作物など(※1)被害数391.5ha、被害額1億2000万円(被害地域 新潟、熊本、宮崎、鹿児島(4県))
〇樹体(※2)同0.1ha、同0.0億円(同 鹿児島)
〇家畜 同18頭羽、同0.1億円(同 鹿児島)
〇農業用ハウスなど 同11件、同0.1億円(同 高知、熊本、鹿児島(3県))
〇畜産用施設 同10件、同0.4億円(同 熊本、鹿児島(2県))
〇共同利用施設 同1件、同0.1億円(同 鹿児島)
(※1)水稲、野菜、果樹、葉たばこ、工芸作物、飼料用作物など
(※2)茶
▽農地・農業用施設関係<被害額64億8000万円>
〇農地の損壊 被害数1813箇所、被害額24億1000万円(被害地域 福島、長野、新潟、富山、石川、岐阜、愛知、和歌山、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島(13県))
〇農業用施設など 同1679箇所、同40億7000万円(同 福島、長野、新潟、富山、石川、岐阜、和歌山、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島(12県))
【8月から9月の前線に伴う大雨(台風10号、13号および15号の暴風雨を含む)、台風17号】
8月から9月の前線に伴う大雨と台風17号では、関東地方、九州地方をはじめ各地域の農林水産省に被害がもたらされた。
〇台風10号は、8月6日にマリアナ諸島近海で発生した台風。8月15日に高知県の室戸岬で最大瞬間風速41.1mを観測した。中国地方を暴風域に巻き込みながら豊後水道を北上し、15日11時過ぎに愛媛県佐田岬半島を北上し、同日15時頃、広島県呉市付近に上陸。その後日本海に抜け日本海を北上し16日21時に北海道の西で温帯低気圧に変わった。
〇8月の前線に伴う大雨は、8月27日から29日にかけて対馬海峡に秋雨前線が停滞し、集中豪雨をもたらす線状降水帯が生じた。佐賀県と福岡県、長崎県を中心とする九州北部で、8月28日を中心として各地で観測史上1位を更新する記録的大雨となった。福岡管区地方気象台などによると、台風11号から変わった中国大陸の低気圧とフィリピンで発生中の台風12号、そして日本の南の太平洋高気圧の3つの気象要因が重なり秋雨前線に大量の湿気を含んだ暖気が流入したためだという。
〇台風13号は、9月2日にフィリピンの東で発生。沖縄から九州の西側の海上を北上し、北朝鮮に上陸した。しかし、9月7日には台風の外側にある帯状の発達した雨雲、いわゆる"アウターバンド"がかかり続け、断続的な激しい雨により災害が発生した。さらに湿った風が吹き付けた九州や四国の太平洋側、紀伊半島の南東斜面で激しい雨が降った。
〇台風15号は、9月5日に発生した台風。関東地方に上陸したものでは観測史上最強クラスの勢力で9日に台風の中心は千葉市付近に上陸し、千葉県を中心に甚大な被害をもたらした。上陸時の勢力は中心気圧960hPa、最大風速40mだった。その後、茨城県水戸市付近で海上に出た台風は、福島県や宮城県を暴風・強風圏に巻き込みながら東進した。
〇台風17号は、9月19日に沖縄の南で発生。21日午前、強い勢力で沖縄地方に接近した後、22日夜には対馬海峡を抜け日本海に入り、23日9時に温帯低気圧となり、津軽海峡付近を東北東に進んだ。沖縄地方で最大風速30m以上の猛烈な風を観測し、長崎県野母崎でも最大意風速29.2mを観測するなど、西日本の広い範囲で最大風速20m以上の非常に強い風を観測したほか、宮崎県延岡市では22日に竜巻が発生した。台風付近の湿った空気や前線の影響で、宮崎市赤江では1時間に109.5ミリの猛烈な雨を観測したほか、総雨量では徳島県那賀町木頭で509.5ミリなど、西日本の太平洋側を中心に大雨となった。
台風17号による農業被害額について、福岡県は10月17日、同県内では10月4日時点で農作物やハウス施設などで被害が発生し、16億円程度に上ると発表した。水稲の被害が最も多く、被害面積が3300ha、被害金額は5億4300万円で、今後も増える見込み。また、カキやナシなど果物も100ha、2億4700万円の被害となった。パイプハウスで76ha、6億2700万円の被害が出ている。
このうち、台風15号および19号による農業関係被害の10月28日午前6時現在の概要をまとめたのが、「表」である。
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