食料安保の確立へ具体策を-JAグループがフォーラム2019年11月20日
わが国の中長期の農政指針となる食料・農業・農村基本計画の5年に1度の見直しが議論されているなか、JA全中は11月19日、食料安全保障を確立する具体策や、令和2年産の水田農業政策の方向性などについて、与党代表者と意見交換を行い組織で認識を共有するため、「食料・農業・農村振興フォーラム」を東京都内で開いた。全国からJA代表者ら900名が集まり現場が直面する課題を提起、意見交換した。
全国からJA代表者など900名が参集
◆国民理解促進を
JA全中の中家徹会長は次期基本計画と水田農業政策で政策提案を行った。
中家会長は食料安全保障を脅かす3つのリスクが高まっているとして(1)食料自給率・自給力の低迷、(2)輸入農産物への依存と世界的な災害多発、(3)国際化の進展と国民の認識を上げた。
とくに飽食の時代のなかで食のリスクを国民が認識できなくなっている一方で、TPP11や日欧EPAなどの発効で大きく自由化が進むなか、この先も食の安全・安心が確保できるか懸念されるとして1人でも多くの国民に食と農の現状とリスクを知ってもらい農業を支えようと思ってもらうことが大事だと強調した。
具体策としては現状では達成できていない食料自給率目標が達成できるよう、生産基盤の根幹である農地面積と農業就業者数について「減少傾向に歯止めをかける高い目標の設定」を行うことや、家族農業や中小規模農家を含めた多様な担い手による将来展望を示すべきことなどを提起した。
また、国民理解を深めるための食農教育の取り組みと新たな国民運動の展開、中山間地域への就農促進策としての直接支払いへの加算措置などのほか、農村振興対策を省庁横断で検討し強化する必要があることなどを提起した。
(写真)政策提案する中家JA全中会長
水田農業対策では主食用から飼料用米、麦、大豆などへの確実な作付け転換を図る実効性のある対策や、需要に応じた生産を進めるための全国組織の機能発揮を支援する対策も必要だと強調した。
意見交換に出席した自民党の小野寺五典農業基本政策検討委員長は、日本の「農業・農村の努力があるから、都会の消費者は選択ができる」と話し国産がなければ安全でなくても外国産を買うしかないなどと指摘し、現場の意見を政策に反映すると話した。
◆現場の声 反映を
自民党の野村哲郎農林部会長は台風被害への緊急対策の取り組みと、豚コレラ(CSF)対策で飼養管理基準の見直しなど家畜伝染病予防法の改正などを進めていることなどを話すとともに、水田農業対策では作付けが減っている飼料用米、需要が高まっている麦・大豆の増産について、来年産から「ギアを入れ直さなければならない」と強調し予算措置の必要性を強調した。
公明党の石田祝稔政調会長は自給率目標について「37%だから(目標の)45%を下げようという話ではない」として、とくに飼料の輸入を減らしどう国内で手当てするかを考える必要があると話したほか、日米貿易協定にともなう国内対策の改定に力を入れることも強調した。
公明党の谷合正明農林水産部会長は「地域の支援策が命綱」だとの認識で基本計画の検討を行っていくことや、日本農業を支えている家族農業、中山間農業に対する「農政が重要な肝」だと話した。
参加したJA組合長からは農産物価格が低迷するなか上昇運賃コストを価格に転嫁できず、農業者の所得は厳しい状況にあることや、米の需要が顕著に減少するなか、「素直に豊作を喜べない」などの意見が出た。また、北海道からは畑作物の補てん単価見直しとなる今年の課題として、ビートの糖度基準などが生産者の手取り減となることがないような決定を強く求める声もあった。
そのほか、財務省の財政制度審議会が指摘している収入保険制度への一本化への懸念も指摘され、産地からは野菜価格安定制度の維持を求める意見も出た。
この点について野村農林部会長は野菜価格安定制度は農家の収入と消費者への価格安定を図るための制度で収入保険とは性格が異なることを指摘し、一本化は「竹と木の棒をつなぐようなもの」と指摘した。また、収入保険制度の加入率が低く、加入促進の課題になっていることなどを上げた。
与党の出席者
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