FAOが国連「植物防疫年2020」を立ち上げ2019年12月6日
植物は食料の80%を占めているが、増大する絶え間ない病害虫の脅威にさらされている。
このため、国連食糧農業機関(FAO)は12月2日、国連の国際植物防疫年(IYPH)2020を立ち上げた。この国際年は、植物防疫が飢餓撲滅、貧困削減、環境保護、そして経済発展の促進にどのように結びついているかについての世界的な認識を高めることを目指している。
国際植物防疫年の開始を宣言するFAO事務局長 Photo(C)FAOGiuseppe Carotenuto
植物は食物の80%を占め、また呼吸する酸素の98%を光合成の過程で生成している。しかし、この植物は絶えず病害虫の脅威にさらされている。
毎年、世界の食用作物の最大40%が植物病害虫によって失われている。これにより、年間2200億ドルを超える農産物貿易での損失が発生し、何百万人もの人びとが飢餓に直面し、また、貧困農村地域の主要な主要な収入源である農業に深刻な損害を与えている。
このため、植物防疫を促進するための政策と行動は、持続可能な開発目標(SDGs)を達成するために欠かせないものだ。
「植物は地球上の生命の中心的な基盤を提供し、人間の摂取する栄養の最も重要な柱である。しかし、健康な植物は当たり前のことではありません」とFAO理事会の会期中にこの国際年の開始を宣言した屈冬玉(QU Dogyu)事務局長は述べている。
気候変動と人間活動は、生態系の変化や生物多様性の減少をもたらし、害虫が繁殖しやすい状況を作り出している。同時に、海外旅行と貿易は過去10年間で3倍になり、世界中の業害虫を急速にまん延させ、在来の植物や環境に大きな損害を与えている。
FAO事務局長は、「人間や動物の健康と同様に、植物の健康も治療よりも予防の方が大事です」と強調した。
植物を病害虫から防護することは、植物防疫上の緊急事態が本格的に発生してから対処するよりもはるかに費用効率が良くなる。植物病害虫は、一度定着すると根絶することが不可能になることが多く、病害虫管理には時間と費用がかかる。
アントニオ・グテーレス国連事務総長は、国際年開始のイベントの中で読み上げられたメッセージで「この国際年と持続可能な開発目標(SDGs)を達成するための今後の『行動の10年』を通じて、必要な資金を投資し、植物防疫への取り組みを強化しよう」と述べた。
◆国際植物防疫年
FAOとFAOに事務局を置く国際植物防疫条約(IPPC)は、国際植物防疫年を成功に導くための活動を主導し、さらに2020後も引き続き植物防疫を推進するとしている。
国際植物防疫年の主な目的は次のとおり。
▽持続可能な開発のための2030アジェンダ達成に向けて、健康な植物の重要性への意識を高める。
▽植物の健康が食料安全保障と生態系機能に及ぼす影響を周知する。
▽環境を保護しながら植物を健康に保つ方法に関する最良事例を共有する。
この目的を達成するために
▽政府や農家、民間部門などの他の食料分野関係者は、害虫の拡散や新しい地域への侵入を防ぐことで、数十億ドルを節約し、質の高い食物へのアクセスを確保できる。
▽植物や植物製品を病害虫から保護することは、貿易を促進し、特に開発途上国の市場へのアクセスを確保することにも役立つ。このため、調和のとれた国際的な植物検疫の規制と基準への遵守を強化することが重要。
▽病害虫に対処する際には、環境を保護しながら植物を健康に保つよう、農家は総合的病害虫管理などの環境に優しい方法を採用し、政策立案者はその使用を奨励すべき。
▽政府と国会議員、政策立案者は、植物保護組織やその他の関連機関の能力を強化し、十分な人的・財政的資源を提供する必要がある。また、植物防疫に関連する研究と広報活動、そして革新的技術や実践にもさらなる投資をすべき。
と強調している。
さらに、FAO事務局長は、国際植物防疫年の目的を達成するためには、政府や学界、研究機関、市民社会、民間部門を含むすべての関係者との戦略的な連携も不可欠であると述べた。
◆ツマジロクサヨトウで世界的な取り組み
FAOと国際植物防疫条約(IPPC)は、植物検疫措置のための国際基準が植物の健康維持のために策定され、各国がこの基準を幅広く適用することで利益を得られるように、すでに世界的な取り組みを主導している。
急速に拡がり作物を貪る害虫であるツマジロクサヨトウに関しては、FAOは管理・拡散抑制のための世界的な取り組みを調整している。具体的には、この害虫の監視と早期警戒のための革新的技術の開発・推進や、政府と農家に害虫と戦うための最善の手段と知識の提供を行っている。
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