新品種流出抑止 種苗法を改正へ2019年12月9日
農林水産省は、わが国で開発されたシャインマスカットやイチゴなど優良な新品種が海外に流出し栽培されていることで日本から本来輸出できたものができなくなるなどの日本農業への影響が懸念されることから、農林水産省は海外流出を抑止する種苗法改正案を来年の通常国会に提出する。
農研機構果樹研究所が開発した「シャインマスカット」(農研機構提供)
わが国の農産物には一般品種と登録品種がある。一般品種は在来品種や、品種登録されたことがない品種、品種登録が切れた品種のことで流通している品種のほとんどを占める。たとえば米では84%、みかんでは98%、りんごでは96%になる。
品種登録されたことがない品種は、コシヒカリ、あきたこまち、ふじ、つがる、ピオーネ、二十世紀、桃太郎などで、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、はえぬきなどは品種登録期間が切れている。
これに対して登録品種は、一般品種にない新しい特性を持つ品種で都道府県試験場、農研機構などが年月と費用をかけて開発している。シャインマスカットはその例で登録品種として種苗法で保護されている。
しかし、登録品種が販売された後に海外に持ち出されることは現行法上は違法ではない。また、登録品種が自家増殖された後に海外に持ち出されることは違法だが、増殖の実態が把握できないため抑止できない。 出願期限が切れたシャインマスカットが中国や韓国に流出したのは、外国人や非農業者と思われるものに種苗が販売されたり、ホームセンターで不特定多数に販売されたと考えられているが、いずれも違法ではない。
また、栽培を山形県内に限っていたサクランボ品種「紅秀峰」を県内農業者が増殖し、それを育成権者に無断で豪州の人に譲渡したことから産地化された。このような増殖と譲渡までをチェックすることは現行法ではできない。
そのため種苗法を改正し、登録品種に限って農業者が増殖する場合には許諾を必要とする制度とする。これによって登録品種の育成者権者は農業者による増殖を把握することができるため、海外流出を抑止することができる。
都道府県、農研機構などの育成者権者が利用条件を付けた場合はその利用条件に反した行為を制限する。農水省は利用条件として日本国内での利用限定、栽培地域限定を想定している。
ただし、これまでと同様、一般品種の自家採取など、増殖は制限しない。
許諾料が生じる場合もあるが、農水省は都道府県試験場や農研機構など公的主体であれば高額になることは想定されず、その許諾料は優良な品種開発に使われるとする。
法改正では権利侵害の立証を容易にする。権利侵害を立証するには品種登録時点の種苗と権利侵害が疑われる種苗との比較栽培が必要となる。しかし、品種登録時の種苗をそのまま保管することは困難なため、品種登録時の特性を記録した「特性表」と比較して侵害を推定できるようにする。
特性の例として草丈、葉、花の形、花の色などや開花期、成熟期、香り、また、病害虫抵抗性、温度耐性などが考えられるという。
改正にあたってはほとんどを占める一般品種の利用はこれまでと同様、何ら制限されないことを行政や生産者団体と連携し農業者に分かりやすく説明を行うことにしている。
また、海外での優良品種の保護・活用を進めるため海外における品種登録を促進し、海外での権利行使を一元的に実施する体制を整備することにしている。
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