飼料を反映しない自給率 複数の指標にとまどいも 食料・農業・農村基本計画2020年2月17日
農水省は食料・農業・農村基本計画の取りまとめに当たり、2月13日、食料政策や食料自給率目標や自給力指標についての基本的な考え方を示した。今回、新たに飼料自給率を反映しない「産出段階」の総合自給率を加えた。国内の畜産農家の生産努力や消費者の実感を反映する狙いだが、畜産が輸入飼料に頼っている実態が分かりにくくなるなど、複数の達成目標を設けることは、国民の理解を得る上で混乱を招く懸念がある。
企画部会の様子
「考え方」は同日開いた食料・農業・農村基本政策審議会企画部会で示した。このなかで、食料自給率目標に関して生産額ベースとカロリーベースがあるが、今回は産出段階の自給率を新たに提案した。これは飼料自給率を反映しない数値となり、総合自給率はカロリーベースで46%、生産額ベースで69%になる。飼料自給率を反映した現在の数値37%、66%より高くなる。同じく、この計算でみると、畜産物の自給率はカロリーベースで15%が62%、牛肉で11%が43%、豚肉で6%が48%、輸入飼料の割合が大きい鶏卵は12%が96%と、いずれも高くなる。
農水省は、「国産畜産物に対する畜産農家の生産努力や消費者の実感を適切に反映するため、産出段階の総合自給率目標も新たに位置付け、これまでの飼料自給率を反映した総合食料自給率目標とともに設定した」と説明。この結果、食料自給率は2つの産出方法にそれぞれカロリーベースと生産額ベースが加わって4タイプになる。新しい基軸として評価する声もあったが、企画部会では「消費者や国民の理解を得る上で混乱の招く」などの問題点を指摘する意見があった。
一方、食料自給力指標の見直しに当たっては、令和12年度に農地面積の増減だけでなく、反収の向上や農業労働力、農業技術を最大限活用した場合の潜在生産力を表す指標に改良する考えを示した。この指標を食料自給率目標と併せて示し、食料安全保障への国民的理解の促進と議論を起こす必要があると指摘。企画部会では「労働力、農地面積はできるだけ数値化して、国民に分かり易く示すべきだ」という意見があった。
このほか農水省は「新しい農業経営の展望」の考え方の中で、営農類型・地域別に37の農業経営モデルを示した。これは家族経営を含む多様な担い手が地域の農業を維持・発展できるよう、他産業並みの所得を目指し、新たな技術等を活用した省力的で生産性の高い経営の実現を目指す。規模や所得目標まで示す考えだが、企画部会では、「農家はどのステージで参考にするのか。新規参入の場合あてはまらないのではないか」、「経営モデル実現にとって、なにが制約になっているのか示すべきだ」などの疑問や意見が投げかけられた。
総合食料自給率の比較
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