「防鹿柵」草原植物・昆虫の多様性回復を解明 兵庫県立大ほか2020年4月15日
森林総合研究所は4月8日、中濱直之兵庫県立大学自然・環境科学研究所講師兼兵庫県立人と自然の博物館研究員らの研究グループが、シカの侵入を防ぐ柵(防鹿柵)を設置することで、草原内の開花植物や昆虫(チョウとマルハナバチ)の多様性が回復することを明らかにした。
霧ヶ峰に設置されている防鹿柵
柵内(奥)はシカが侵入できず、多くの花が見られる一方、
柵外(手前)にはほとんど花が見られない。
近年、ニホンジカの全国的な増加に伴い農作物や森林で被害が頻発している。これはまた、植生の破壊によって全国各地で植物や昆虫の多様性が減少傾向にあるという問題でもあり、シカの多い地域における植物多様性の保全は喫緊の課題となっている。
シカによる生態系被害は、シカの餌となる植物だけにとどまらず、植物の花を利用するチョウやマルハナバチなどといった昆虫にも及ぶ。もしこうした"訪花昆虫"が減少すると、花粉の送受粉がうまくいかず植物の繁殖に悪影響が生じるおそれがある。
このため、中濱兵庫県立大講師と、内田圭東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構助教、小山明日香国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所主任研究員、岩崎貴也神奈川大学理学部生物科学科特別助教、尾関雅章長野県環境保全研究所主任研究員、須賀丈長野県環境保全研究所自然環境部長らの研究グループは、比較的大規模な防鹿柵が設置されている長野県霧ヶ峰の草原で、咲くの設置による開花植物やチョウ、マルハナバチの耐用性の回復効果を検証した。
その結果、柵の設置により開花植物の種数、また花に依存するチョウやマルハナバチの種数と個体数が大きく回復していることが分かった。
この研究は、草原の生物多様性の保全のために防鹿柵設置が有効であることを示した重要な成果だ。
同研究グループでは、防鹿柵を日本各地の草原に設置することで、多くの草原の生物多様性が保全されることを期待している。
この研究成果は、2020年4月8日20時に、国際科学誌「Biodiversity and Conservation」の電子版に掲載された。
防鹿柵内(白色)と柵外(灰色)における開花植物、チョウ類、マルハナバチ類の種数の違い。
マルハナバチは6月には見られなかったので、8月のみのデータ。いずれの時期でも、防鹿柵の外側よりも内側で種数が多い。
重要な記事
最新の記事
-
基本法施行後初の予算増確保へ JAグループ基本農政確立全国大会に4000人 生産者から切実な訴え2024年11月22日
-
「適正な価格形成」国関与で実効的に JA群馬中央会・林会長の意見表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
JAグループ重点要望実現に全力 森山自民党幹事長が表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
農林水産省 エン・ジャパンで「総合職」の公募開始2024年11月22日
-
鳥インフル 米モンタナ州、ワシントン州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
鳥インフル オランダからの生きた家きん等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
11月29日「ノウフクの日」に制定 全国でイベント開催 農水省2024年11月22日
-
(411)「豚ホテル」の異なるベクトル【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月22日
-
名産品のキャベツを身近に「キャベツ狩り選手権」開催 JA遠州中央2024年11月22日
-
無人で水田抑草「アイガモロボ」NEWGREENと資本業務提携 JA三井リース2024年11月22日
-
みのるダイニング名古屋店開業2周年「松阪牛ステーキ定食」特別価格で提供 JA全農2024年11月22日
-
【スマート農業の風】農業アプリと地図データと筆ポリゴン・eMAFF農地ナビ2024年11月22日
-
自動運転とコスト【消費者の目・花ちゃん】2024年11月22日
-
イチゴ優良苗の大量培養技術 埼玉農業大賞「革新的農業技術部門」で大賞受賞 第一実業2024年11月22日
-
「AGRIST Aiサミット 2024」産官学金オープンイノベーションで開催2024年11月22日
-
厚木・世田谷・北海道オホーツクの3キャンパスで収穫祭を開催 東京農大2024年11月22日
-
大気中の窒素を植物に有効利用 バイオスティミュラント「エヌキャッチ」新発売 ファイトクローム2024年11月22日
-
融雪剤・沿岸地域の潮風に高い洗浄効果「MUFB温水洗浄機」網走バスに導入 丸山製作所2024年11月22日
-
農薬散布を効率化 最新ドローンなど無料実演セミナー 九州3会場で開催 セキド2024年11月22日
-
能登半島地震緊急支援募金で中間報告 生産者や支援者が現状を紹介 パルシステム連合会2024年11月22日