収穫期の人手不足を懸念-食品流通業界2020年4月23日
農林水産省は新型コロナウイルス感染症拡大にともなう緊急事態宣言の対象地域が全国に拡大されたことによる食品の製造、流通への影響について4月22日、食品メーカーなどから実態をヒアリングした。現状では工場をフル稼働させ安定供給しているが、物流量の大幅拡大による停滞や、今後、収穫期を迎える野菜などが人手不足で調達が困難になるのではないかとの懸念も出た。
ヒアリングはテレビ会議で行われ、江藤農相らが出席した。
全国中央市場青果卸売協会会長の川田一光東京青果社長が青果の販売状況などを話した。
野菜、果物は量販店向けとコンビニ向けに順調に販売されているが、ホテル、学校、百貨店、居酒屋向けなどはほぼゼロで二極化していることを指摘した。品目もメロンやマンゴーなどは大苦戦しており、ワサビ、つま物類など、もともと飲食店向けの青果物も厳しいという。
今年は暖冬のため青果物の生産量が多かったが、今後は外国人労働者不足の影響で産地の収穫に影響が出るのではないかと懸念した。
日本スーパーマーケット協会会長の川野幸夫ヤオコー会長は緊急事態宣言の直後には「パニック買い」が起きた店舗もあったといい、今後、政府などから関係業界への情報提供のあり方が課題になると指摘した。全国で前年比105%ほど売り上げは増加しているという。
ただ、接触を避けるため特売は中止しチラシも配布せず、1人で来店してもらうよう呼びかけるなど感染防止に取り組んでいる。社員、パートの仕事量が増え、イレギュラーな仕事も発生しているため現場の疲労も心配だが「みなで力を合わせて行動しなければならない」と話した。
食品卸の日本加工食品卸協会会長の国分グループ本社の國分晃社長は3月、4月は「一年でもっとの多い年末を上回る物量になっている」と話した。全体で例年の1.8倍、冷凍食品は1.3倍だという。
現場では営業部門が物流部門を応援するなどしてしのいでいるが、今後、パート社員などを確保できるか心配だという。小売り店の希望に応えることができず割当出荷になる可能性もあるとした。
食品メーカーに対してはゴールデンウィークの休暇計画が例年どおりであれば欠品が生じるのではないかと懸念した。また、労働力については観光需要が減っているため、バス運転手などが物流業界で働くマッチング支援も必要だと提起した。
日清食品ホールディングスの安藤宏基社長はインスタントラーメンの製造状況を話した。一斉休校や緊急事態宣言で都市部で需要が急増したが、50%増産体制をとっているという。年間57億食が供給されているが、増産体制によって90億食の能力を確保しているという。
政府に対してはサプライチェーンを把握し国民に対して「デマに負けない迫力ある情報発信を」と訴えた。
味の素の西井孝明社長は冷凍食品、スープ製品の需要が緊急事態宣言などで跳ね上がったが、現在は3~6か月程度の在庫があるという。一方、同社の商品では国産キャベツを年間約8600t使用しており、5月以降の収穫期の労働力不足が心配だと話した。
ハウス食品の工東正彦社長は3月末にレトルトカレーが瞬間的に例年の2倍に跳ね上がるなどの事態もあったが、生産と流通にフル稼働で取り組み、新商品発売の中止、一部商品の休売などでアイテム数を絞り需要増に応える工夫もしている。今のところ原料不足はないが香辛料などインドから輸入に影響が出始めているとした。
山崎製パンの飯島延浩社長は食パンやロールパンの需要が急増する一方、調理パンなどが大きく減少しているほか、店舗も売上げ減でパン業界も二極化していると話した。関東圏での食パン需要の急増には、関西や九州から製品を送り込んだほか、閉鎖していた大阪工場を再稼働させるなどの対応をとっているという。
ヒアリングではいずれも現場でのマスク、消毒液不足を訴え安定供給体制を求めた。
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