ネット販売 物流機能を拡充 コロナ対応で新戦略-JA全農2020年7月29日
JA全農は7月29日に開いた総代会で新型コロナウイルス感染症の影響をふまえた中長期的な事業展開の方向性を示した。消費者のネット利用の拡大をふまえ、ネット販売の拡大と生産者から消費者までの一貫物流体制の構築などを図る。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で今年度のGDP成長率は▲5.0%の見通しで経済回復も長期化が予想されている。4月には緊急事態宣言の発令で飲食店などの営業自粛や休校、イベント開催や外出、県間移動の抑制などで社会経済活動が停滞したが、いわゆる巣ごもり需要によって食品のネット利用や、家計消費で家庭調理や中食の割合が増加に転じた。
一方、農業生産の現場では海外との出入国制限で外国人技能実習生が来日できず、農業労働力不足がさらに顕著になり、国内で労働力を確保する必要性が再認識された。消費では外食需要の大幅な減退で加工業務用、インバウンド向けが激減し、一部の農畜産物で価格下落や在庫過多で消費拡大をはじめ緊急対策が必要になった。
このためJAグループも国の緊急経済対策に対して現場の課題や要望を収集して行政への要請などを行うとともに、オンラインショップ「JAタウン」で国の予算や全国連拠出予算を活用して国産牛や果実、乳製品、花き、果樹などの送料無料キャンペーンなどで一般消費者向け販売拡大に取り組んだ。同時に小売の現場ではこうしたeコマースや宅配など非接触による販売への対応が急務となった。
また、労働力不足に対しては旅館など他産業からの人材マッチングや農作業受委託、農福連携の枠組みを活用した緊急的な要員派遣などの労働力支援を実施した。
こうした緊急的な対応をふまえてJA全農はコロナ影響をふまえた中長期的な事業展開方向をとりまとめた。
新たな流通を構築
新たな取り組みとして物流機能の拡充を図る。
宅配の利用増加や、保存性・簡便性の高い商品の需要拡大をふまえ、生協ほか他企業との協業を視野に、仕分け、冷蔵冷凍保管、個包装、セット組み、共同配送等の機能を具備した新たな物流施設の整備を進める。そのなかで産地では広域集出荷施設の整備、消費地では広域ストックポイントを設置することによって生産者から消費者までの一貫物流体制を構築する。これによって物流の効率化と品質の向上を図る。
もう1つの新たな取り組みはネット販売の拡大だ。オンラインショップJAタウンに全国のJAファーマーズマーケットを集めた専門店街の展開による出店数の拡大のほか、普段使い商品、プレミアム商品、冷凍・加工商品など品ぞろえを充実させる。
また、消費者が望むタイミングで鮮度にこだわった商品を届けるため、JAや県域、グループ会社の直販施設などと連携した流通体系も構築する。
労働力支援も強化
そのほか既存事業の強化方針も示した。
共働き世帯の増加や、高齢化、消費者の健康意識の高まりに対応して、国産素材の冷凍、惣菜、健康食品の他企業との共同開発を強化する。また、コロナ禍で食料安保や国産農畜産物の価値が再認識されたことをふまえ、輸入から国産への切替拡大に取り組む。輸出事業ではコロナ収束後の拡大に備えて海外での営業体制を強化する。
今回は外国人技能実習生が来日できず労働力不足が課題となったことから、労働力支援も強化する。農作業受委託の広域展開とともに、他産業からの農業への人材受け入れや、地方在住者との人材マッチングなど新たな視点で労働力確保に取り組むほか、スマート農業や省力化機器など研究開発・普及の取り組みも強化する。
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