自然保護と食料システムの変革が鍵 生物多様性回復へ国際研究グループ2020年9月10日
立命館大学、森林総合研究所、京都大学、国立環境研究所が参画する国際研究グループは、自然の保護・再生に向けた取り組みと食料システムの変革を組み合わせることで、生物多様性の損失を食い止め、回復への道筋を描けるとする研究論文を発表した。
生物多様性の保全に向けた様々なシナリオ
論文は、9月10日にNature誌でオンライン公開されている。
生物多様性については、様々な国際的目標が掲げられ解決策が示されてきたが、実態的には損失の一途をたどっているとの見方が研究者の間では強い。
たとえば2010年の「愛知目標」で、生物多様性に向け各国に割り振った20の個別目標も「達成困難」との結論がすでに明らかになっている。
同研究グループによると、「人間活動に伴う土地の需要増加と生物多様性保全との競合が考慮されてこなかったことが背景にある」としており、自然環境の保護・再生の取り組みや食料システムの変革に向けた取り組みによって将来がどう変わるのか、複数のシナリオを用いて予測し、最適なシナリオを科学的に検証したのが今回の研究。
自然保護・再生に向けた取り組みには、現在の保護区だけでなく野生動物や生物多様性にとって重要な地域を保護区として追加。さらに使わなくなった土地の自然再生を促進する場合を想定しながら検証した。
具体的には、2050年に保護区が世界の陸域面積の40%に到達し、劣化した土地を再生した場所が陸域の8%を占めることを想定。また、食料システムの変革に向けた取り組みとしては、作物収量の向上や貿易の促進、食品や食肉消費の削減など様々な場面を想定して将来シナリオは描かれている。
結果、現在の社会システムの延長線上にある「成り行きシナリオ」では生物多様性の損失はこのまま続いて行き、2010~2050年における損失は、1970~2010年までの損失と同等かそれ以上になるとした。
一方、自然保護・再生と食料システムの変革に向けた取り組みを最大限実施する「社会変革実施シナリオ」の場合は生物多様性の損失は抑制され、2050年以降、回復に向かう可能性があることが示されている。
結論として、自然保護・再生の取り組みと需要と供給の双方を含めた食料システム全般の大胆な社会変革を行うことが、2020年以降の生物多様性保全戦略の鍵だとしている。
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