学給に有機農産物を 市民団体などが全国集会 「食育」の重要性を認識2020年9月29日
学校給食の食材を有機農産物にしようという運動が全国で広がっているなかで、東京都の「世田谷区の学校給食を有機無農薬食材にする会」(福澤郁子代表)は、9月25日、東京都内で集会を開き、講演やパネルディスカッションで、学校給食と子どもの健康についてお認識を深めた。生協や有機農産物の生産・流通に関係する市民団体やNPO法人などが協賛した。
「食育」で給食用の野菜を栽培する学童(JA静岡市提供)
地方議会から運動を
講演では国際ジャーナリストの堤未果さんが、アメリカの給食ビジネスを紹介。アメリカでは10代の子どもの肥満が増えており、母親を中心に「食べ物がおかしい」という疑問から、安全な食品を求める声が高まった。特に除草剤残留の危険性から、学校給食でオーガニック食品を提供する自治体が増えていることを報告。それを踏まえ、学校給食導入に向けて、小さな単位で地産地消を進め、地方議会から予算化する運動を広げるべきだと、市民レベルの運動の必要性を訴えた。
学校給食で100%
学校給食で100%有機無農薬米使用を実現している千葉県のいすみ市農林課生産戦略版の鮫田晋主査は、同市の有機無農薬米の生産について報告した。2010年に3人で始めた栽培が、2019年には25人ほどになり、40t余りの米を生産。それまでは、まったく地元の米をつかっていなかったが、いまは市内の学校給食の全量を賄うまでになっている。
有機栽培に助成を
いすみ市の米づくりを指導した民間稲作研究所の稲葉光国理事長は、有機無農薬栽培で最も大きなネックになる雑草防除のポイントを紹介した。雑草防除は通常3回は必要だが、稲葉氏は土壌と水管理によって除草をゼロに抑えている。
稲葉氏は、稲、麦、大豆は有機栽培に適した作目だと指摘する。稲は水管理で、秋まきの麦は冬に育ち、大豆は土寄せで雑草の繁茂を防ぐことができるというわけだ。こうした農法は「コウノトリが育むお米」で知られる兵庫県の豊岡市などで取り組まれている。いすみ市もそうだが、こうした有機無農薬米の取り組みは「首長の考え、哲学によるところが大きい」と指摘する。
また有機無農薬栽培の拡大について、生産者の立場から、安心して取り組むには「5年以上の長期契約が前提」と稲葉氏はいう。さらに。田植機やコンバインなど、新たな機械・設備投資も必要であり、地方自治体の支援が欠かせないことを強調した。
農家の長女として山梨県で有機果樹園を経営する恵泉女学院大学の澤登早苗教授は、東京で親子有機野菜教室を開くなど、都会でも楽しめるオーガニック農業で、その教育力を紹介した。そのうえで、自らの経験から「もっと価格面で評価してもらえたら、生産者は自信をもっと取り組める」と、有機農産物の価格について問題提起。また「自分が食べているものは誰が作ったが分かるような社会システムをつくるべき」だと指摘した。
「こどもたちの食の未来をみつけよう」のテーマで開いたパネルディスカッションでは、「食物の安全・安心・旬をきちんと教えるべきだ」、「食べ物の選択権のない子どもの給食は、疑わしいものは使うべきでない」などの発言があった。
学校給食の重要さを認識した集会
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