21年米適正生産量679万t 50万t減「衝撃的数字」-農水省2020年10月19日
農林水産省は10月16日、食料・農業・農村政策審議会食糧部会を開き、2021年産の主食用米の適正生産量は20年産より50万t少ない679万tとするなどの米の基本指針を諮問した。部会では「衝撃的な数字だ」などの意見が出たが、諮問どおり答申した。作付け面積にすると約10万haの削減となり過去に取り組んだことがない転作面積となる。
10月16日の食糧部会
9月15日現在の米の作柄は作況101で主食用生産量が735万tと見込まれている。例年は10月15日現在の生産量見込みに基づいて11月に食糧部会を開催し、米の基本指針を決めるが、今年は需給緩和が見込まれるなか、来年の作付け方針について早く議論を始めてほしいとの声もふまえて農水省は前倒しで諮問した。出席した葉梨康弘農林水産副大臣は「コロナ禍で需給が難しい状況。早くメッセージを出していかなければならない」と強調する。
農水省が示した2020/21年の需給見通しではコロナ禍の影響を見込み、需要量について7月指針で示した715万tを709~715万tと幅を持たせた。その結果、来年6月末の民間在庫量は221万~227万tと今年6月末を20万t以上上回る見込みだ。
農水省はこれをもとに2021/22年の主食用米の需給見通しを示した。
需要量は年間10万t減少するトレンドとコロナ禍の要因を加味し704万tとした。そのうえで22年6月末の在庫量を196万~201万tとした。「需給と価格の安定を図る観点から201万tを上回らないように設定した」と話す。
その結果、21年産の主食用米の適正生産量を679万tと示した。20年産米は9月15日現在で作況101となっているが、作況100であれば729万tの見込み。それにくらべると来年産は50万t生産量を削減しなければ需給と価格の安定を図ることが難しいということになる。作付け面積にして10万haの削減となる。今年産の作付け面積は136.6万haで前年比1.3万ha減。10万haと削減となれば今年産の7~8倍の取り組みが必要になる。
農水省は合わせて参考値も示した。それは過去に取り組んだ最大の作付削減と同じ規模の取り組みを行った場合。2015年産では6.8万ha削減しており、これを21年産で実施すると692万tとなる。ただ、この場合、22年6月末の民間在庫量は209万~215万tと高水準となり、過去の例から米価への影響も懸念される。
農林水産省はこうした厳しい需給見通しについて「水田フル活用に現場で真剣に取り組んでもらいたいと示した」と強調した。
この日は2020年産米で最初となる9月の相対取引価格も報告された。それによると全銘柄平均で60kg1万5143円で19年産(出回りから20年8月)の1万5720円から▼577円と出回り価格が6年ぶりに前年より下落した。
委員からは679万tという数字について「衝撃的だ」との声が相次いだ。神明ホールディングスの藤尾益雄代表取締役社長は「10万haと他の作物に置き換えていくということ。消費拡大も大事だ。輸出は昨年の4200tが今年は5000tに。中国向けが伸びている。パックご飯の輸出も2019年36万食が20年には50万食となる見込み」などと新しいマーケットへの対応も含めて「一気に(生産削減を)やったほうが生産者にとってもいいのでは」と述べた。
山形川西産直センターの平田勝越代表取締役社長は「産地での議論が正念場に。これ以上値下げとなると産地は崩壊しかねない。(民間在庫量)200万tは1つの目安」としながらも「生産マインドが冷えるのは必至。意欲ある次世代をいかに獲得するか急務になっているのも現場」と指摘した。染谷農場の染谷茂代表取締役は米が過剰で流通、販売が滞っており「農家は綱渡り。必要なお金が入ってこない。在庫にしようとしても倉庫がない」と現状を訴えると同時に、「今農家を減らすべきではない。今は在庫量が増えているが、何十年先を考えたときどうか、を考えるべきだ」と話す。
JA全中の馬場利彦専務は「非主食用を作ったときどういう手取りになるのかセットで示していくべき。水田農業の将来をどうするか、関係者一体で水田フル活用ビジョンを大きく書き換えなければならない」と指摘するとともに、JAグループだけでは実現できないため行政も結集し川上から川下まで共有できる環境を作っていきたい」と強調した。
座長の大橋弘東大公共政策大学院院長は「予測よりも重大な局面を迎えていることを示している。みんなで本気に考えるきっかけにしなければならない」と述べた。
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