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放射性セシウムの判定・定量化に成功 東京大学・農研機構2020年10月22日

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東京大学と農研機構の研究グループは10月17日、原発事故で生じた汚染物中の放射性セシウム保持物質を判別・定量化する手法の確立に成功したと発表した。

酸処理により変化する不織布片(農業資材)からのIPオートラジオグラフィ像。(a) 酸処理前。(b)1mM,90℃の塩酸に1日浸漬後。(c)さらに100mM,90℃の塩酸に1日浸漬後。(d)不織布片の顕微鏡写真。(e)(b)のIPオートラジオグラフィの強度から見積もられた各輝点の137Csの放射能。酸処理により変化する不織布片(農業資材)からのIPオートラジオグラフィ像。
(a) 酸処理前。(b)1mM,90℃の塩酸に1日浸漬後。(c)さらに100mM,90℃の塩酸に1日浸漬後。(d)不織布片の顕微鏡写真。
(e)(b)のIPオートラジオグラフィの強度から見積もられた各輝点の137Csの放射能。

東京電力福島第一原子力発電所の事故によって放出された放射性セシウムは、原子炉から直接飛散した放射性ガラス微粒子に含まれた形態と、鉱物粒子に収着した形態として環境中に存在している。これらの詳細な汚染実態を把握するためには、2つの存在形態を判別しそれぞれの割合を見積もる手法の確立が望まれていた。

今回の研究では、放射性セシウムに汚染された試料(農業資材、土壌、植物など)を適当な条件で酸処理することで、鉱物粒子は部分的に溶解し放射性セシウムを脱離するが、放射性ガラス微粒子はほとんど溶解せず放射能の変化は小さいことが判明した。

その中で、2つの粒子では特に酸性溶液中での挙動が大きく異なることがわかった。例えば、1mM (pH=3),90℃の塩酸 (HCl) 溶液に24時間浸漬した場合、鉱物粒子では収着していたかなりの放射性セシウムが粒子から脱離し、鉱物粒子中の放射性セシウムが大きく減少するが、ガラス微粒子はその独特なガラス組成のため、この条件ではほとんど溶解せず、粒子中の放射性セシウムは減少しない。

また100mM(pH=1)の塩酸溶液では鉱物粒子は部分的に溶解し、そこにあった放射性セシウムが完全に脱離するが、ガラス微粒子ではかなりの放射性セシウムが残ることがわかった。

この結果、汚染試料を100mM程度の塩酸溶液で処理すれば、鉱物粒子に収着した放射性セシウムが減少するため、酸処理後の試料のIPオートラジオグラフィで見つかる輝点(放射性セシウムの濃集物質に対応)と試料に残存する放射能は、放射性ガラス微粒子由来であると判断することができるとの見解を示した。これにより、汚染試料中に2つの形態の判別と存在割合の評価を可能にした。

研究グループは今後この手法を用いて、さまざまな地域や種類の汚染物中の放射性セシウムの存在形態を明らかにすることで、福島原発事故による汚染実態の解明が前進することに期待を寄せている。

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