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【2021水田農業政策の焦点】手取り平準化へ 交付水準見直しを2020年11月20日

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新型コロナウイルス感染拡大の影響も加わって米の需要が大幅に減退、2021年産では過去にない40万㌧近い主食用米を非主食用米に転換することが求められるなか、将来を見据えた水田農業政策の議論が進み11月末にも一定の方向が政府・与党から示される見込みとなっている。議論が進むなかこれまでに農水省が示した対策を整理する。

主食用米と飼料用米の手取り格差の是正


主食用から飼料用米などへの転換を進めるためには主食用との手取りを平準化することが求められる。

そのための1つの方法として農林水産省は水田活用の交付金を生産者団体が「代理受領」し、品代と合わせて共同計算して生産者手取りの平準化ができるよう検討していることを明らかにした。

産地でのまとまった作付け転換に取り組みやすくするため、産地単位で取り組む場合には、水田活用の直接支払交付金をJAなど生産者団体が「代理受領」できるよう手続きを改正する。

水田活用交付金の申請は例年、営農計画書の提出期限である6月末までとなっているが、提出の際、JAなどを代理人とした代理受領の委任状もあわせて提出してもらうようにする。

これによってJAなどは主食用米も含めた販売代金と水田活用交付金を合わせて共同計算し生産者に支払う。これによって転作に取り組む生産者の手取りが平準化されることになる。

主食用、加工用、飼料用など用途ごとの生産数量は都道府県の目安に基づいて地域で決め生産者ごとに割り振られるが、作付け後に需給見通しを変更する必要がある。

20年産でもコロナの影響で業務用需要が減少したことから、需給を安定させるため農水省は、生産者に主食用から飼料用米などへの用途変更を再申請するよう呼びかけ、締め切り6月末から9月半ばまで延長して実施した。しかし、生産者とJAなど生産者団体は出荷契約を変更するにはもう一度、契約書に押印など必要なことから、現場からは実質は進まないとの声が出ていた。

今回、検討しているのは生産者が交付金の代理受領についてJAなどに委任状を提出するとともに、営農計画書の変更もJAなどに委任することで、作付け後、6月末の期限ぎりぎりま産地でまとまって需給を見極めてから用途変更ができる。 農水省は宮城県石巻市桃生地域や新潟県三条市栄北部地域の取り組みを参考にした。

桃生地域では、営農推進協議会が「とも補償計画」を作成し、地域全体で「とも補償」を実施している。加工用米、麦、大豆など作付けするほ場を設定し、ブロックローテーションを行う「集団転作」に取り組む。同時にすべての生産者がとも補償制度の参加して、水田活用交付金の交付先を協議会に委任するというかたちで円滑な精算を実施しているという。

主食用から非主食用への転換には手取り格差が解消されなければ進まない。今回のような「とも補償制度」を活用した"知恵"は水田地帯でかねてから生まれてきた。加えて将来を見据えた制度としては水田フル活用交付金の水準の見直しや、飼料用米への助成の制度化・恒久化も求められる。主食用米の需給調整策ではなく、自給力の強化の観点から、現場のとも補償の取り組みを生かすことが必要だ。

交付申請及び資金の流れ交付申請及び資金の流れ
(クリックで拡大)

主食用生産量 9月25日作況で判断

農水省は食糧部会の開催時期など、米政策に関する1年のスケジュールの見直しも実施する。

昨年までは10月15日現在の作況を受けて食糧部会を11月中下旬に開き、次年産生産量見通しなどを公表してきた。それを9月25日現在の作況を10月上旬に発表し、それを受けて食糧部会を10月中旬に開催して次年産生産量の見通しなどを公表するよう見直す。これまでの9月15日現在作況よりも精度を高めつつ、10月から11月に行われる麦の作付けの検討などの資するよう生産量見通しを示す時期を前倒しする。

各都道府県と各都道府県の再生協議会を集めた全国会議は現行は3回(11月、1月、4月)だが、これを以下のように見直す。
(1)10月に開催。次年産主食用生産量見通しなどを情報提供し各県の目安設定に活用。
(2)1月に開催。各県の生産目安の状況や直近の需給動向を情報提供し、米の作付けの検討、目安の修正などに活用。
(3)3月に開催。2月開催の食糧部会で修正された当年産生産量見通し、直近の需給動向を提供し、目安の修正などに活用。
(4)5月に開催。4月末現在の作付け意向、各県の目安の状況、直近の需給動向など提供し、主食用から非主食用への仕向け先変更の検討に活用する。

JAグループは過剰在庫対策として20年産米を20万㌧程度調整保管し、長期計画的に販売していく取り組みを通じて需給環境を整備を図る。そのため国が保管料や米の集約運送に要する経費などを支援する米穀周年供給・需要拡大支援事業を活用する。予算額は50億円で農水省は30万㌧程度の調整保管分に対応する予算としている。支援対象期間は2021(令和3)年度予算であることから来年4月からとなっているが、これを5カ月前倒ししてこの11月から金利倉敷料の2分の1支援を始めることを決めた。

政府は需要促進対策として1次補正予算で1400億円の国産農林水産物等販売促進緊急対策を措置したが、ここに中食・外食向けの米を新たに追加する。中食・外食向けに販売契約が締結されていたものの、契約履行が遅れていたり契約解除となったりした米が対象。

米卸がJAなどから米を調達する費用を60kg5300円を上限に支援し、中食や外食に安く提供して米の消費拡大につなげる。11月30日までに応募し、1月31日までの14日間の販促キャンペーンの展開で活用する。

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