過去最大6.7万ha作付転換へ特別対策 農水省2020年11月26日
農林水産省は2021年産では過去最大規模となる6.7万haを主食用から非主食用へ作付け転換するための支援策として2021年度の当初予算と今年度の3次補正予算を前倒し、確保する方針で財務省と調整をしている。
11月25日の自民党農業基本政策検討委員会
水田を活用した麦、大豆、加工用米などの生産に対する水田活用の直接支払交付金は2021年度で今年度同額の3050億円を要求している。農水省はこれを確保するとともに、今年度3次補正予算で特別対策予算を確保し前倒しで実施する。
特別対策の対象作物は、輸出用米など新市場開拓米、加工用米、麦・大豆、野菜などの高収益作物とする。これらの作付けに対して支援の前倒しという「過去に例のない対応」を実施する。
前倒し対策では、作付け転換を契機にして輸出や実需との結びつきを強力に進めることを要件として、直播栽培や、土壌分析、排水対策など低コスト生産技術などの導入を支援する。同時に実需への支援も行い、輸出向けパックご飯の製造ラインなども支援対象とする。こうした特別対策の対象に飼料用米は入っていないが、補正予算で加工用米、輸出米などの手当てを前倒し実施することで、当初予算の産地交付金を飼料用米に仕向けることも可能になると農水省は説明する。それを地域の判断で飼料用米の支援増額にあてることもできるまた、県が飼料用米に追加的な支援を行う場合は国も同額の支援を行う。県が10a5000円の追加を決めれば国と合わせて1万円の追加額を交付する。農水省は財務省と協議をしている。
11月25日に開いた自民党の農業基本政策検討委員会で説明した。小野寺五典委員長は「最終的には米価を一定に維持する以上に、新しい方式に切り換えたほうがむしろ所得として結果としてプラスになる。そういう水準をめざして予算確保に向けがんばりたい」と話した。同日、農林・食料戦略調査会と農林部会合同会議は以下のような政府の要請事項を決めた。
【令和三年産米の需要に応じた生産対策等の推進について】
令和2年11月25日
自由民主党農林・食料戦略調査会、農林部会、
農業基本政策検討委員会
米政策については、平成30年産から行政による生産数量目標の配分及び米の直接支払交付金を廃止し、生産者及び集荷業者・団体が中心となって需要に応じた生産・販売を行うこととしたところである。
近年の高齢化等による生産基盤の縮小や自然災害の頻発に加え、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により食料の供給リスクが生じている現状を踏まえ、食料安全保障の確立、食料自給率及び食料自給力の向上を図るため、水田をフル活用する施策を基本政策として、重点的に実施していく必要がある。
本年は、米政策改革の実施後3年目を迎えているが、その間、主産県において主食用米の作付面積の削減が思うように進んでおらず、また、新型コロナウイルス感染症の影響等も相まって、現在は需給が緩和している状況にある。
人口減少等により構造的にも国内の主食用米の需要が減少する中、米の需給と価格の安定及び水田フル活用を図るためには、水田フル活用ビジョンの下、生産者が自らの経営判断で作物を選択する環境を整備することが益々重要である。
その上で、令和3年産に向けては、国、地方公共団体、産地?生産者が一体となってオールジャパンで需要に応じた生産・販売に取り組むことが
重要であり、そのために必要な施策を推進していくことが肝要である。
以上を前提とし、令和3年産に向けて生産者が安心して生産に取り組めるよう、補正予算を含め、年末の予算編成過程を通じて、政府において左記の項目について万全の対策を講ずることを強く要請する。
(1)新型コロナウイルス感染症の影響により、特に中食・外食向けの需要が大きく減少していることを踏まえ、中食・外食事業者等と連携した販売促進への支援など国内の消費拡大の取組を推進すること。さらに、米及び米加工品(パックご飯、米粉、日本酒、焼酎など)について、関係省庁が連携して輸出の飛躍的拡大を図るなど、国内外の米の新市場開拓を強力に推進すること。また、日本産米による海外援助の拡大を図ること
(2)新型コロナウイルス感染症の影響による需要の大幅な減少等に伴い、
主食用米の民間在庫が高い水準で推移すると見込まれる厳しい状況を踏まえ、主食用米の長期計画的な販売を推進するため、各産地が調整保管に確実に取り組めるよう、米穀周年供給・需要拡大支援事業による支援の拡充措置を講じること。
(3)生産者の経営安定のためのセーフティネットとして、収入減少影響緩和交付金(ナラシ対策)や収入保険等が措置されていることから、引き続きこれらへの加入を推進すること。
(4)令和三年産に向けて、需要に応じた生産・販売の更なる推進を図るため、主食用米等の需給・価格・在庫・販売に関する動向、各都道府県の生産の目安の設定状況や作付動向等の情報について、全国会議の開催の充実等を通じ、節目節目できめ細やかに提供することで、各産地において、作付等に関する検討が進むよう後押しすること。
さらに、需給状況の変化に柔軟に対応できるようにするため、産地単位でまとまった取組を行いやすくするとともに、地方公共団体等を通じて、農協をはじめ、稲作経営者、農業法人等にも情報提供を行うこと等により、地域の関係者が一体となって取り組めるよう環境整備を行うこと。
(5)水田活用の直接支払交付金(産地交付金を含む。)については、令和3年産における過去最大規模の生産量の削減を達成するため、生産者が安心して非主食用米や麦・大豆等に取り組めるよう、交付金単価の水準など基本的な仕組みを維持しつつ、必要な予算を恒久的に確保すること。さらに、自然災害が頻発する中でも飼料用米に安心して取り組める環境を整備するとともに、需要に応じた生産・販売に向けた都道府県独自の取組を強力に後押しするなど、都道府県がよりイニシアティブを発揮できる措置を講じること。
(6)水田フル活用を実現し、令和3年産の取組を確実なものとするため、農業農村整備事業等の関連対策と合わせて、加工・業務用野菜等の高収
益作物への転換の更なる拡大を後押しする支援、輸出用米や加工用米等について実需者ニーズに対応するための生産者支援や機械・施設整備等を含めた製造設備支援など、主食用米からの転換に取り組む生産者の更なるインセンティブとなるよう大胆な支援措置を講じること。
また、麦・大豆の需要に応じた増産に向け、作付けの団地化・生産性向上に向けた支援、産地での一時保管など民間備蓄等による安定供給体制の確立等の措置を講じること。
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