鳥インフル 死亡数の増加に十分注意を-農研機構2020年12月15日
農研機構は12月14日、今シーズン国内初の高病原性鳥インフルエンザウイルスの病原性の解析結果を発表した。感染から死亡までの期間が長いという傾向が認められたという。農研機構は「これまで感染が広がるとバタバタと死んでいくというイメージがあるかもしれないが、日常の症状の観察を細かくていねいに行う必要がある」と強調し農場での鶏の死亡数の増加に十分な注意が必要だと呼びかけている。

今シーズン国内第1例は11月5日に香川県三豊市の養鶏場で発生した。死亡した鶏からH5N8亜型のA型インフルエンザウイルスが分離された(香川2020株)。
農研機構は香川2020株がOIEの規定する高病原性鳥インフルエンザウイルスに特徴的なアミノ酸配列を持っていることを明らかにし、静脈内接種試験を行った結果、基準となる75%を超え100%死亡したことから、このウイルス株は高病原性鳥インフルエンザであることが明らかになった。
また、この株は2019-20年の冬季にヨーロッパで発生したH5N8亜型の高病原性鳥インフルエンウイルスが由来であることも明らかにした。
⾃然感染を想定した鶏への経⿐接種による致死率
その後、農研機構では自然感染経路である経鼻感染で鶏が死亡するウイルス量を調べるための試験を行った。接種はウイルス量を(1)100万(EID50=50%の鶏卵に感染ウイルス量)試験群、(2)10万(EID50)試験群、(3)1万(EID50)試験群、(4)1000(EID50)試験群とし、それぞれ5羽づつ経鼻接種(鼻に直接ウイルス液を注入)した。
その結果、(1)群は沈うつ症状を示した後、6日以内に全羽死亡、(2)群も7日以内に沈うつ症状を示し4羽が死亡した。(1)は死亡率100%、(2)は80%だった。(1)のウイルス量は自然界で起きる感染の量よりは多いが、100%死亡する再現性を得るために設定したという。
鶏の沈うつ症状とは羽を膨らませて目をつぶってうずくまった状態。刺激をしても反応がないという。
一方、ウイルス量の少ない(3)、(4)群は14日間の観察期間中、全羽が生存した。この結果からこのウイルスに感染した50%の鶏が死亡するのに必要なウイルス量はおよそ10の4.6乗(EID50)であることが分かり、近年の香川2018株と同じ値であるという。
⽇本で分離されたH5亜型HPAIV経⿐接種鶏の⽣存曲線ただし、香川2020株は2018株と比較して感染してから死亡するまでの期間が有意に長いことが明らかになった。2018株は3日に全羽が死亡したが2020年株は6日かかったことになる。同様の傾向は79年ぶりに発生したときの山口2004株の実験結果との比較でも認められたという。
農研機構はこうした結果から今シーズンの高病原性鳥インフルエンザは死亡までに時間がかかると考えられ「少しでも死亡鶏が増えたら高病原性鳥インフルエンザを念頭に置いて、家畜保健衛生所に通報するなど対応をしてほしい」と話す。
とくに今回の感染実験では沈うつ症状以外の症状は認められなかったという。「鳥インフルエンザに特異的な症状ではないが、一早く報告を」と呼びかけている。
農研機構は今後、感染した鶏からのウイルス排泄期間や量などを研究して予防措置に役立てたいとしている。
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