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生産力向上と持続性の両立へ みどりの食料システム戦略本部を設置-農水省2020年12月21日

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農林水産省は12月21日、みどりの食料戦略本部を設置した。持続可能な食料システムづくりに向け、新技術の開発と社会実装によって、2050年までに農林水産業のCO2排出ゼロや化学農薬や化学肥料の使用料削減、有機農業面積の拡大などをめざす。

野上浩太郎農相本部会合で発言をする野上農相

みどりの食料システム戦略の策定は今年10月、野上浩太郎農相が指示し省内で検討を続けてきた。

本部会合で野上農相は「就任以来、現場を見てきたが温暖化や自然災害の増加、生産者の減少や高齢化、地域コミュニティの衰退に加え、新型コロナウイルスの発生など厳しい状況にある。今後、SDGsや環境への対応が重要となるなかで農林水産業や加工流通を含めた持続可能な食料システムが急務と考えている」と述べた。

省内での検討をふまえこの日は「みどりの食料システム戦略」の「策定にあたっての考え方」を了承した。

農林⽔産分野でのゼロエミッション達成に向けた取組

わが国は農業生産基盤の強化が課題だが、同時に地球環境問題への対応など持続可能な農業生産と食料供給システムの構築は世界の重要課題となっている。たとえば、EUではEU委員会が化学農薬の使用とリスクを2030年までに半減することや有機農業を25%に拡大することなどを加盟国に提起した「Farm to Fork戦略」を今年5月に発表しているほか、米国も農務省が2050年までに農業生産性の40%向上と環境フットプリント半減の同時達成をめざすなどの「農業イノベーションアジェンダ」を2月に発表している。

各国がこうした規制を国際環境交渉の場などで国際的なルールとして主張してくることも想定されることから、日本としてアジアモンスーン地帯の持続的な食料システムを打ち出して国際ルールメーキングに参画していく必要がある。今回のみどりの食料システム戦略策定の背景にはこうした国際的な動きもあり、日本としては来年9月に予定されている国連食料システムサミットの場などで新たな技術とイノベーションによって農業の持続性を実現する日本モデルを示したい考えだ。

戦略では2050年までに農林水産業のCO2排出ゼロの実現と化学農薬・肥料の使用量削減、有機農業の面積の拡大、食品製造業の労働生産性の向上などを目標に掲げる。
日本のCO2排出量は12.4億t。このうち農林水産分野は約5100万tで4.0%を占める。水田や牛のげっぷ、家畜排泄物からのメタンの排出もあるが、農機やハウスでの燃料燃焼によるCO2排出も多い。目標達成に向け「戦略」では2050年まで10年ごとの技術開発と実装に取り組む工程表を描く。

たとえば、直近では水田の適切な水管理によるメタン削減や、省エネ型施設園芸整備の導入などに取り組むが、2030年代には低メタンイネ品種の開発や、海藻類によるCO2の固定化、さらに2050年代にはCO2吸収能の高いスーパー植物の安定生産やメタン抑制ウシの活用などで目標達成をめざす。

化学農薬の使⽤低減に向けた 技術⾰新

化学農薬の使用低減に向けては、まずはドローンによるピンポイント散布や総合的病害虫・雑草管理(IPM)の普及に取り組み、2030年代には除草ロボットの普及、AIを活用した土壌病害発病ポテンシャルの診断技術を導入するなどだ。その後、2040年代には主要病害に対する抵抗性を持った品種の育成と、RNA農薬の開発の実現をめざす。RNA農薬とは害虫の発育を阻害するRNAを葉などに直接散布し、それを害虫が食べることで防除につなげようという技術。従来の化学農薬に比べ標的種への特異性が高く周辺環境への安全性が期待できるという。こうした新規農薬の開発でネオニコチノイド系を含む従来の殺虫剤の削減につなげたい考え。

そのほか、化学肥料の削減では、輸入頼りから国内生産を増やすため、有害物質を取り除く技術を構築し下水汚泥肥料なども活用するなどの取り組みもあがっている。

このようなイノベーションによる持続的生産体制づくり、脱輸入、脱炭素化・環境負荷軽減のほか、サプライチェーン全体を貫くスマートフードチェーンの構築や品種開発力の強化などにも取り組む。

農水省はこの戦略で国産品の評価向上による輸出拡大、新技術を活かした生産者のすそ野の拡大、国民の豊かな食生活と、地域の雇用・所得増大が期待されるとしている。年明けから農業者や関係団体、企業などと意見交換を行い、3月に中間とりまとめ、5月に戦略を決定する方針だ。

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