女性の力 農業経営にプラス-女性活躍で検討会が報告書2020年12月25日
農林水産省の「女性の農業における活躍推進に向けた検討会」は12月24日、報告書「女性農業者が輝く農業創造のための提言」を公表した。報告書では依然として女性農業者の能力発揮を妨げている状況が続いているとして、農村での意識改革、女性農業者の学び合い、地域をリードする女性農業者の育成などを提言するとともに、女性の参画が農業経営にプラスになるという観点から男性にも認識と行動の変化を期待している。
検討会は、今年12月に第5次男女共同参画基本計画が策定されることも見据え、7月に女性農業者、研究者、ジャーナリストなどメンバーに立ち上げられた。
農水省は1992(平成4)年に初めての女性農業者に関する報告書として「農山漁村の女性に関する中長期ビジョン懇談会報告書」をまとめた。そこでは女性が個人としての主体性を確保すること、生産の担い手として社会的に認められること、固定的な役割分担意識を是正することなどを課題として挙げ「自分の生き方を自由に選択し、自分の人生を自身で設計、その結果、自信と充実感を持って暮らしている」女性を「めざそうとする女性の姿」としていた。
今回の報告書は28年ぶりにまとめられたもので、中長期ビジョン策定から何が変わり、何が根強い課題として残っているかを総括し、今後の女性活躍を推進するための課題を整理し提言をまとめた。
座長を務めた農業ジャーナリストの榊田みどり氏(明治大学客員教授)は最近は農業者と結婚しても農業はせず他の仕事を選ぶなど、28年前にくらべて女性農業者が減少していることを指摘し「男性も農政も危機感を持ったほうがいい」と話し、今回は「女性の参画が農業経営にとってプラスになる」という観点を意識して議論したと話す。実際、日本政策金融公庫の調査では女性の経営参画が経常利益の増加につながっていることなどが示されている。
農水省も「女性の地位向上も大切だが、それだけでなく農業に女性が入ると男性にとってもメリットがあるということを発信していきたい」(経営局就農・女性課女性活躍推進室長)と強調する。
最近では6次産業化への取り組みなどでメディアにも登場する農村女性もいるが、検討会ではその一方で経営への発言権はなく地域の会合などにも出て行けないといった根強い実態も現場の女性農業者から指摘され「ポテンシャルはあるのに力が発揮されていない」との問題意識で「より地域に刺さる対策」(榊田座長)を提言した。
そこでは、たとえば研修や会合の案内文書では「あて先を夫婦両方の名前や子の名前を記載すること」を提起した。「自分宛てのハガキは外に出る印籠になる」(榊田座長)というのがまだ実態だという。そのほか女性農業者向けの会合での託児サービスの提供、介護サービスを利用しやすくするための早期の案内などを提起している。
また、家族経営協定の重要性も改めて強調した。検討会では90年代後半から2000年初頭までは運動としても広がってきたが最近では認定農業者の認定を受けるためといった形骸化も指摘された。家族内でどういう役割を分担するか話合うことが重要で、協定について農業高校生や経営継承者に周知することや、ライフステージに応じた協定内容の見直しの推進も必要だとした。
「家族協定は古くて新しいツール。『経営』という意識から考えたい」(榊田座長)。
そのほか女性農業者向けの一元的相談窓口の設置、女性グループの発掘と、グループをつなぐ横断的ネットワークづくりの推進、地域をリードする女性農業者の育成なども提言した。農業委員やJA役員への女性登用についての継続的な目標設定、都道府県・市町村における具体的な目標の設定なども求めている。
農林水産省の就農・女性課の植杉紀子女性活躍推進室長は「新規就農者の女性比率は24%。このままでは女性が少なくなる。農業の持続性の点からも女性参画は必要」と指摘するとともに、コロナ禍で田園回帰などの農村の価値見直しの機運も出てきているなか、「農村に女性の受け入れ態勢が整っているか、考えることには大きな意味があると思う」と述べている。
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