【鳥インフル】世界中で フランス400件、韓国99件発生 厳重警戒必要2021年2月3日
高病原性鳥インフルエンザが世界で猛威をふるっている。日本では2月2日今シーズン初めて茨城県で発生し国内41例目となったが、フランスでは昨年11月の発生からこれまでに418件、隣国の韓国でも99件が発生している。米国、ロシア、中東、アフリカ、オセアニアでも発生しており世界で40か国以上にのぼっている。ウイルスはヨーロッパやシベリアから渡り鳥が日本に持ち込んで感染が広がったもので、渡り鳥が帰っていく5月の始め頃までは引き続き厳重な警戒が必要だ。
2月2日の農水省の対策本部。飼養衛生管理の徹底を呼びかける野上農相。
ウイルス あちこちに多量に存在
日本では昨年11月5日に香川県三豊市の採卵鶏農場で今シーズン第1例目が発生し、その後、三豊市では移動制限区域内の農場で発生が相次いだため、防疫措置が完了し、その後の清浄性を確認したうえで移動制限区域が解除されるまで2か月を要し、1月16日にようやく解除された。
その後、福岡、宮崎、奈良、広島、高知など西日本で発生が続いたが、年末には千葉、年が明けてからは岐阜、富山で発生し、2月2日は茨城と北陸・東海、東日本にまで広がってきた。殺処分羽数は過去最高の711万羽となっている。
しかし、発生地域が次第に移動しているというイメージを持つのは鳥インフルエンザの場合は禁物だ。それを裏づけるのが、今シーズンの野鳥での発生時期と地域だ。1月31日現在で10道県37の事例で野鳥から高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出されており、現在も2道県2事例が検査中である。
今シーズンの野鳥からの最初の検出は昨年10月24日、北海道紋別市の糞便からだった。その後、11月には鹿児島県出水市や宮崎県延岡市と九州で確認されたかと思うと、新潟県阿賀野市、埼玉県ときがわ町、鳥取県鳥取市など全国至るところで発見された。
農林水産省は「今シーズンは世界的にも発生が相次ぐ非常事態」と警戒を呼びかけ、カモや白鳥等の渡り鳥がウイルスを持って大陸から飛来し、糞便等によって野山、池、道路などにウイルスが排出された。野鳥からのウイルスはハヤブサやフクロウの死体からも検出されている。つまり、それら猛禽類も感染死しているが、カモなどの渡り鳥は死んでいない。「ウイルスに感染しても死なないまま日本に渡ってきてウイルスを排出している。いわば空からまんべんなくウイルスが降ってきているようなもの」(農林水産省動物衛生課)だという。
農研機構は、今シーズン香川県で発生した高病原性鳥インフルエンザのウイルスは昨年冬にヨーロッパで流行したH5N8亜型と近縁であることが判明したと昨年11月25日に発表している。この秋、渡り鳥とともに大陸を渡って日本に侵入したと考えられている。
(参考記事)
香川の鳥インフルエンザ 欧州から-農研機構
豚熱の場合は、一昨年発生した岐阜、愛知から野生イノシシを介して関東から東北まで次第に広がっていったことも想定されているが、鳥インフルエンザの場合、とくに今シーズンは全国にウイルスが多量に存在し、どこで発生してもおかしくない状況が続いているのである。専門家会合もすでに昨年12月に全国的な発生に警報を鳴らしている。
(参考記事)
全国で発生の可能性 厳重警戒を-鳥インフル
農水省は「農場を守れるのは農場主だけ」と呼びかけている。そのためには新型コロナウイルス対策で手洗い、うがい、マスクなどが基本となり日々それを実行するのと同じように畜舎のなかに入るときの手指消毒、衣類・靴の交換、さらには出入りする関係車両の消毒など「飼養衛生管理の徹底」に尽きる。
また、防鳥ネットや野生動物を侵入させない畜舎周辺の環境整備も重要となる。農水省では地域一体となった消毒なども有効であり、防鳥ネットや消毒機器などの支援の活用も呼びかけている。
感染から死亡までが長い-今シーズンの特徴
環境中に多量の鳥インフルエンザウイルスが存在するといっても、農場や人、車両などの徹底消毒によってウイルスの量を一定量以下に減らせば感染を防ぐことは可能だ。農研機構の試験でウイルス濃度が10の5乗EID50では死亡したが、10の4乗まで減らすと死亡しないという結果が示されている。(1EID50とは発育鶏卵の半分を感染させるウイルス濃度:農水省資料)。
一方で今シーズンのウイルスの特徴も明らかになってきた。
農研機構は昨年12月14日、今シーズン初事例となった香川県のウイルスの病原性の解析したところ、感染してから死亡までの期間が長いという傾向が認められたと発表した。農研機構は「これまで感染が広がるとバタバタと死んでいくというイメージがあるかもしれないが、日常の症状の観察を細かくていねいに行う必要がある」と強調し農場での鶏の死亡数の増加に十分な注意が必要だと呼びかけている。
(参考記事)
鳥インフル 死亡数の増加に十分注意を-農研機構
鶏を観察して突然死が増えれば、感染拡大を疑うが、今シーズンは元気を失くしてうずくまっていたり、顔面の浮腫性腫脹や肉冠のチアノーゼなどの症状も見られるという。ただし、必ずしもすべての症状が見られるわけではないことに注意が必要で「どれかの症状があてはまる」、「何か異常だ」というときには家畜保健衛生所への相談が必要だ。
高病原性鳥インフルエンザは世界で猛威をふるっている。ただ、あまり考えたくはないが次のシーズンはさらに猛威となる可能性もある。防疫対策が非常に重要になるが、飼養衛生管理の徹底は「鳥インフルに限らず、広く家畜の病気を防ぐもの。日頃から徹底を心がけてほしい」と動物衛生課は呼びかけている。
2月2日の農水省の高病原性鳥インフルエンザ対策本部で野上浩太郎農相は飼養衛生管理の全国一斉点検で1割程度あった不備に対するフォローアップを各県に対して通知したことや、大規模農場のうち56農場で発生した場合の埋却用地が未確保であることを明らかし、該当の16府県知事に対して用地確保のための準備について知事権限で指導、助言することを通知したとした。
重要な記事
最新の記事
-
花業界の年末商戦は松市(まついち)からスタート【花づくりの現場から 宇田明】第48回2024年11月28日
-
ボトル小型化でGHG排出量3割削減 ゼロボードとの協業でCFP算定 バイエルクロップサイエンス2024年11月28日
-
リジェネラティブ農業を推進 25年に他社との共創プロジェクト バイエルクロップサイエンス2024年11月28日
-
続・どぶろくから酒、ビールへ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第318回2024年11月28日
-
【TAC部門】優秀賞 一流の経営者に俺はなる JAしまね 大國満瑠氏2024年11月28日
-
【TAC部門】全農会長賞 「京おくら」産地化へ~ゼロからのスタート JA京都中央 佐藤聖也氏2024年11月28日
-
「古川モデル」子実トウモロコシから水田輪作へ JA古川、3年間の実証実験総括 農研機構東北農業研究センターの篠遠善哉主任研究員2024年11月28日
-
鳥インフル 米ノースダコタ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月28日
-
毎週の各国との電話会議・閣僚会合の現地での反対運動【近藤康男・TPPから見える風景】2024年11月28日
-
三島伝統のたくあん漬けや大根料理を堪能「三嶋大根祭り」開催 JAふじ伊豆2024年11月28日
-
9年連続の就任 コリラックマ「とちぎのいちご大使」に任命 JA全農とちぎ2024年11月28日
-
「ちょっといい日に和牛を食べようキャンペーン」開催 JAタウン2024年11月28日
-
適用拡大情報 殺菌剤「日曹ファンタジスタ顆粒水和剤」 日本曹達2024年11月28日
-
農薬登録変更 殺菌剤「日曹ストロビーフロアブル」 日本曹達2024年11月28日
-
農業IoTの通信インフラ整備へ 自治体や土地改良区と連携 farmo2024年11月28日
-
山梨県産フルーツ活用「やまなしスイーツコンテスト2024」初開催 山梨県2024年11月28日
-
価格高騰中の長ねぎ カットされる青い部分を商品化で大ヒット Oisix2024年11月28日
-
「幻の卵屋さん」京都駅に初出店 日本たまごかけごはん研究所2024年11月28日
-
「うまいに、まっすぐ。新潟県フェア」開催 県産農林水産物の魅力を体験 新潟県2024年11月28日
-
【役員人事】朝日アグリア(12月1日付)2024年11月28日