農産物輸出 9223億円 過去最高も1兆円目標届かず2021年2月5日
農林水産省は2月5日、2020年の農林水産物・食品の輸出実績は9223億円だったと公表した。政府は2019年に1兆円達成を目標にしていたが、目標には届かなかったものの、8年連続で過去最高額を更新した。
新型コロナウイルスの感染拡大で上半期は対前年▲8.2%の366億4300万円減だったが、下半期は同+10.1%の467億9800万円増で年間で1.1%増、額では102億円の増加となった。輸出全体は対前年▲11.1%と減少するなか、農林水産物・食品の輸出は増加した。7月以降、6か月連続で前年比増となった。
農産物は11.7%増の6565億円、林産物は2.8%増の381億円、水産物は▲20.8%の2277億円だった。水産物の輸出減はコロナ禍で宝飾展示会の中止で真珠が253億円減の▲76.9%となったことやホタテ貝の単価下落などが響いた。
米の輸出 15%増
農産物はコロナ禍で家庭向け需要を捉え米や鶏卵が伸びた。米は53億円で15%伸びた。農水省によると数量は1万9687tで13%増加した。これとは別に「パックご飯」は1203t、6億5300万円を輸出。数量で18%、金額で28.3%増加した。
鶏卵は107.4%増と大幅に伸びて24億円増えて45億9000万円となった。ほとんどが香港の家庭向けだという。豚肉は55%増の17億6000万円で香港とシンガポールの家庭向け需要で伸びた。鶏肉も6.3%増となった。日本では高病原性鳥インフルエンザが昨年11月から発生しているが、鶏卵・鶏肉は発生県以外から輸出しており大きな影響はないという。
牛乳乳製品も20.4%伸びて38億円増の222億円となった。ベトナムでの育児用調製粉乳の人気が要因だ。
牛肉も下半期は盛り返す
牛肉は年間では2.7%減の288億円となった。ただし、上半期の低迷を販売方法の改善で盛り返した。ブロック肉を家庭向けにスライス肉として販売したり、Eコマースを活用したりなどで米国など海外での巣篭り需要に対応した。実際、12月単月では牛肉も前年同月比10.7%増となっている。牛肉は全体では前年比マイナスとなったが、米国向けは36.4%増となった。日米協定発効で国内への輸入増が懸念される一方、日本から米国への牛肉輸出枠が200tから複数国枠6500tへのアクセスが可能になっており、農水省は協定発効の影響もあるとみている。
一方、野菜・果実は2.9%増の457億8600万円だった。ただし、青果物は1.0%減となった。りんごは2019年産の生産量が不足したことから輸出に回せる量が減ったことが要因で▲26.2%、12億円減となった。もも、なしも2020年夏の天候不順で輸出向けの大玉品が少なく、それぞれ▲1.4%となった。
コロナ禍で国際的な流通に影響を受けた品目もある。ながいもは輸出数量は昨年とほぼ同じだが、年末に米国向けの船便のコンテナ不足が影響し輸出額は▲6.1%となった。
国・地域別の状況をみると、中国ではアルコール飲料、清涼飲料水などが伸びて102億円増、ベトナムは粉乳、かつお・かぐろ類の伸びで83億円増、、台湾はソース混合調味料、たばこが伸びて73億円増などとなった。
一方、韓国はビール、菓子などの減少が続き、90億円減、米国はぶり、アルコール飲料の減少で50億円の減などとなった。
輸出先の順位は香港、中国、米国、台湾、ベトナム、韓国で変化はない。
なお、昨年12月は単月で1008億円で前年比121億円増、+13.7%で初めて単月で1000億円を超えた。
農林水産物の輸出額は2018年に9000億円を超えてから過去最高額を続けているが、伸びは微増で2019年に達成するとして1兆円目標には届いていない。ただ、2020年はコロナ禍のなかで世界が外食から内食にシフトするなどの需要の変化に対応したことが支えた。パックご飯のほか、即席麺の輸出は42.6%増えるなど簡便な食事へのニーズが高まったことを示している。米の輸出も農水省は「産地と販売業者が連携して需要開拓することを支援したい」としており、パックご飯に力を入れるという。
需要の変化に対応して販売方法などの改善も当然必要だが、2025年の2兆円目標を達成するには5年で倍増させる必要がある。さらに2030年には5兆円目標を政府は掲げる。政府の輸出拡大実行戦略では輸出先国のニーズに対応できる産地づくりと供給体制などを掲げており、5日の定例会見で野上浩太郎農相は「戦略をしっかりと実行したい」と話す。
一方、輸出拡大が農家の所得向上に結びついているのかという課題もある。これについて野上農相は「結びついていると考えている」と述べ「産地をしっかり形成することも重要だ」と話した。農家所得の向上にどう結びついているか検証も必要になる。
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