スマート農業の実装加速化へ基盤整備-土地改良長期計画を閣議決定2021年3月25日
政府は3月23日に「土地改良長期計画」を閣議決定した。担い手の生産コスト削減やスマート農業の実装を加速化に向けた基盤整備を行う。
土地改良長期計画は、土地改良法に基づき、5年を1期として土地改良事業の実施目標や事業量を定める。新たな計画は、2021(令和3)年度から2025(令和7)年度の5年間が対象年度。
新たな土地改良長期計画では人口が減少するなかで持続的に発展する農業を実現するとともに、多様な人々が住み続けられる農村に向けた土地改良事業が柱。
生産基盤の強化では、水田の基盤整備完了地区で担い手の米生産コストの労働費が一定程度まで低減している地区の割合を約8割以上とすることを政策目標とした。農水省によると水田の大区画化によって1俵(60kg)あたり労働費が1734円、約4割削減した。(平成28~30年度完了地区のうち23地区平均)
また、基盤整備着手地区ではスマート農業の実装を可能とする基盤整備を行う割合の目標を約8割以上とした。これらを実現する水田の大区画化の事業量は約3.8万ha。畑の区画整理・排水改良は約3.3万haなどとしている。
高収益作物への転換も政策目標。基盤整備完了地区で高収益作物の生産額が一定程度増加している地区の割合目標を約8割以上とした。そのための水田汎用化は約8.8万haで実施する。島根県安来市では、地下かんがいシステムを導入し、水稲・大豆・麦、菜種などを組み合わせ輪作体系を確立し、さらにキャベツの栽培も加えて収益を上げている例を農水省は挙げている。
これら産業政策の視点とは別に多様な人々が住み続けられる農村をめざした地域政策の視点からも事業を行う。
地域共同活動による農地や農業用水の保全管理では、約6割が持続的な広域体制の下で実施されることを目標とした。その保全管理面積を約280万haとしている。
保全管理に農業者以外の多様な人材が参画する割合目標を約5割以上としたほか、参加者数も延べ1400万人・団体以上としている。
農業水利施設を活用した小水力発電等の発電量目標を約4000万kWhとし、土地改良施設の使用電力の約4割以上をそうした再エネでまなかう目標も打ち出した。
こうした政策を支えるため農業・農村の強靭化も政策課題とする。
防災重点農業用ため池の防災対策着手の割合目標を約8割以上とした。また、流域治水の推進のため田んぼダムを増やす。農水省によると、田んぼダムに適した水田は全国で約20万haだという。現状はこのうち約4万haで取り組みだが、これを3倍以上に増やすことを目標にする。そのほかICTなど新技術を活用した農業水利施設や水管理システムの導入なども行う。
野上浩太郎農相は23日の記者会見で「国内の需要や輸出に対応できるように、農業生産基盤の強化を図る土地改良事業の計画的な実施に取り組んでいきたい」と話した。
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