「新型コロナ影響」を特集-令和2年度食料・農業・農村白書2021年4月23日
農林水産省は4月22日、食料・農業・農村政策審議会企画部会を開き、2020(令和2)年度の「食料・農業・農村白書」の本文案を示した。今回の白書では「新型コロナウイルス感染症による影響と対応」を特集する。
白書はこれまで2、3のテーマで特集を組み、全体の40数ページ程度を割いていたが、今回は新型コロナ感染症のテーマに絞り43ページにわたって記述する。
特集は冒頭で食料消費面での影響と新たな動きを記述する。2020年は外食市場全体の売上高は前年とくらべ15%減となり、1994年の調査開始以来、最大の下げ幅となった。テイクアウトやデリバリー需要に支えられたファストフードは3.7%減とふみとどまったものの、パブ・居酒屋では50%減と大きなダメージを受けた。
今年1月に緊急事態宣言が再度発令されことも影響し、新型コロナ関連の倒産数は飲食店が205件ともっとも多く、食品卸も62件と5番めとなっている。
一方、20年3月以降、家庭内消費は増加し、長期保存が可能な米、パスタ、小麦粉、バター、冷凍食品などの加工品と、生鮮肉などへの支出額が増えた。品目別に前年同月を100とする支出額の指数はほとんどの月で100以上となった。
消費者がテイクアウトやフードデリバリーを利用することが増え、外食事業者もこれに対応して事業を転換する動きも見られた。また、消費者の1割が販路を失った国内生産者から農水産物を購入する「応援消費」を実施したと回答した。白書ではJA全農のインターネット販売サイト「JAタウン」で生産者を応援するため、送料をJAグループが負担する「さんち直送おうちごはん」キャンペーンを実施したことを事例として取り上げ、JAタウンの売上高が前年比で2倍になったことなどを紹介している。
一方でコロナ禍でロシアなど穀物輸出国19か国が輸出規制を実施したことや、WTO(世界貿易機関)非公式閣僚会合などで輸出規制の抑制を提案するなど、食料安保が国際社会でも大きな課題になったことも指摘した。
農業への影響は、品目によって市場価格に大きな影響が出ていることや、入国制限による外国人材不足と、宿泊業とのマッチングでの労働力の確保、スマート農業への転換など新たな労働力確保の動きが見られたことも取り上げた。
社会全体の変化としてテレワークが進展するにつれて地方への関心が高まり、移住する人も増えた。東京都では20年5月に初めて転出超過となり、7月以降も転出超過が継続している。また、移住先で農業をしながら他の仕事にも携わる働き方「半農半X」の動きとその拡大に向けて一部自治体が取り組んでいることも紹介している。
白書は新型コロナ感染症の拡大が食料、農業に影響を与えたことは「食料供給に影響を及ぼすリスクが多様化していることを示している」と記述し、国は今後も感染の発生状況を注視し、必要な対応を行っていくとしている。
白書巻頭のトピックスは▽輸出戦略、▽みどりの食料システム戦略、▽スマート農業、▽農業DX、▽鳥インフル、豚熱対応、▽改正種苗法施行、▽フードテックの現状を取り上げる。
農水省は5月下旬の閣議決定をめざしている。
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