コンテナ不足で国際物流混乱-農産物輸出にも影響2021年4月27日
新型コロナの感染拡大にともなう世界的にロックダウンで国際貿易は縮小したが、その後の急速な回復と、コロナ禍による労働力不足などで海外主要港での滞船や、空コンテナの返却遅れなど、物流の混乱が起き長期化する懸念が出ている。4月23日に農水省、経産省、国交省は関係団体と状況を共有する会合を開いた。会合では農産物輸出にも影響が出始め、輸送の遅れで青果物を廃棄せざるを得ないなどの問題も出ていることが報告された。
新型コロナ感染症が世界に拡大し始めた昨年1月、中国からの輸送量が減少し船の欠便が発生するなど物流への影響が出始め、その後、世界でロックダウンが広がり、生産停止や倉庫、店舗の閉鎖などで輸送能力が縮小するとともに、物流の低下を見込んでコンテナの生産も下がったという。
しかし、昨年夏には中国の経済がいち早く再始動し、秋からは中国の輸出回復で大量のコンテナ貨物が米国に流入した。さらに昨年末からは北米の巣ごもり需要増加に伴い、アジア発北米向けの貨物が増加した。しかし、北米では輸出荷役が進まないという事態になっている。
ロサンゼルス沖に滞船
情報共有会合で報告した野村総合研究所の宮前直幸氏は、ロスアンゼルスのロングビーチ沖合いの滞船は2月5日に36隻あり、4月8日なっても23隻あると状況を報告した。その理由のひとつに北米全体の大寒波によって内陸への輸送する鉄道が遅延するなども要因だという。
また、外国船舶協会の担当者は港湾労働者が減っていることも通関手続きに時間がかかる要因となっていることや、内陸部の物流も供給力が落ちていることも要因と指摘した。日本通運の担当者はドライバーの離職も拍車をかけていると指摘。港湾の混雑で10時間近く並んで荷物を受け取るようでは、仕事にならない、とドライバーを辞めてしまうという。
こうした状況でコンテナが米国に滞在し、中国や日本ほか広範囲でコンテナ不足の影響が出ている。関係者によるとコンテナの製造は中国が世界の8割を製造しているという。昨年はコロナ禍で減産したが、実は一昨年も過熱する米中貿易摩擦からコンテナの需要減を見込み減産した。これも今回の混乱の背景だという。
中国のコンテナ製造業者は今年6月までオーダーが入っており、製造能力の上限に達しており、コンテナ価格も高騰しているという。これも海上運賃の高騰の要因となっている。
こうした状況のなか農産物輸出への影響をJA全農インターナショナルが説明した。
同社は米国西海岸に牛肉処理施設を持ち、船便で冷蔵肉、冷凍肉を輸出している。しかし、入船の遅れと、現地のコンテナヤードの滞留で3月は加工から販売まで2~4週間伸びて返品や破棄せざるを得ないケースも出たという。また、予定どおり船が到着しないための欠品を避けるため空輸への切り替えも余儀なくされたこともある。冷蔵肉は在庫の積み増しは難しく、一方、冷凍肉は米国内ではEコマースで和牛人気が続き、冷蔵肉での在庫増も難しい状況だという。
米は常温で保存できるが、コンテナの滞留で新春フェアに商品が間に合わなかったなどチャンスロスも生じた。空輸への切り替えも一部行ったが、米が重量があるため船便にくらべて1kgあたり400円ほど運賃が上昇したという。
コンテナ不足で東南アジア向けの青果物輸出も遅れており、収穫から販売までの長期化による品質劣化への対応が課題となっている。空輸は運賃が上昇しているうえ、予約がとれない状況だという。
コンテナ不足の早期回復が課題だが、参加者からは状況の早急な調査を求める意見が相次いだ。国土交通省によると、ロスアンゼルスの港湾や輸送の状況については4月から調査を始めており、現地大使館などの協力も得てゴールデンウィーク明けには状況をまとめる方針だ。
今回のような物流の遅れによる青果物などの品質劣化による破棄などのコストは輸出側が負担するしかない。関係者からは輸出事業者への政策支援の検討を求める声もあった。
物流の停滞によるコンテナ不足が食料供給にも影響するなど、これまで想定されていなかったリスクもコロナ禍は明らかにした。コンテナ不足は長期化が懸念されるだけに政策支援の検討も必要になる。
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