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生産者のすそ野拡大で農村活性化も-みどり戦略の狙い2021年5月14日

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食料・農林水産業の生産力向上と環境への配慮など持続性を両立させようと農水省が策定したみどりの食料システム戦略は、革新的な技術を積極的に活用することに焦点があたるが、農業に関わる人を増やして地域重視のライフスタイルの定着などもめざすなど、農村活性化をめざす狙いもある。同戦略本文の「本戦略により期待される効果」でそのことが強調されており、農水省担当者は、農村政策重視の姿勢を打ち出した昨年3月決定の「食料・農業・農村基本計画」の「続編だ」と位置づける。地域政策の面からも「みどり戦略」の意味を考えておきたい。

農村2.jpg

みどり戦略がめざす生産力向上と持続可能性の両立はイノベーション創出が鍵となる。その代表格がスマート技術で作業の省力化、省人化、作業の安全性向上、化学農薬、化学肥料の削減など戦略がめざす目標実現に効果を発揮する。

わが国農林水産業の課題は、構造的な生産者の減少と高齢化だが、そうなった背景のひとつに農業は作業が重労働で大変であり、水管理や家畜から目が離せないだけでなく、、農業技術の習得に時間がかかるといった労働特性もある。

みどり戦略ではこれをふまえてスマート農業について大規模農家にメリットがあるだけでなく、中小・家族経営や中山間地域、若者から高齢者までメリットがあることを強調している。

リモコン草刈機やアシストスーツは危険で重労働からの解放につながり、牛の体調のモニタリングシステムや水田の自動水管理によって現場にはりつかなければならない負担からも解放される。さらに直進アシスト付きの田植機などは不慣れな人でも農作業を携わることを可能にする。

同戦略ではこうしたスマート技術の意義を整理し、新技術によって農林水産業の多様な働き方が可能となり、地域内外のさまざまな人が農林水産業の新たな「支え手」となった参画することが期待できると位置づけている。つまり、「生産者のすそ野の拡大」を通じた生産基盤の強化だ。スマート農業は女性の農業参画の促進でも期待されているが、パートで働いたり、都会から農村を訪問する「関係人口」が農業に関わることも考えられるなど、スマート技術は農業のハードルを下げる技術でもあるといえるだろう。

また、同戦略では国民の豊かな食生活、地域の雇用、所得増大の効果も見込む。新技術による地域循環型経済の実現や、リモートも活かした地域内外の多様な人との交流、地域重視のライフスタイルの定着と移住、地域コミュニティの活性化など、「国民の幸福度向上」も実は明記されている。

基本計画では最終作成過程で新型コロナウイルス感染症が拡大し、コロナ対応を一部入れ込むことにとどまらざるを得なかったが、みどり戦略でコロナで生まれた価値観の変化も見据えようとしている。先端技術による効率的で持続的な食料システムをどう実現するか、戦略の具体化が求められるのはいうまでもないが、地方重視といったコロナ禍で生まれてきた新たな価値観の実現も重要であることを忘れてはならない。

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