農業機械の安全性能強化へ-検討会が中間とりまとめ2021年5月21日
農作業の安全対策を強化するため農水省は今年2月に農業者・農業者団体、労働安全の有識者、農業機械関係団体などの関係者で構成する「農作業安全検討会」を設置し、検討を進めてきた。このほど第3回の検討会で中間とりまとめを行った。
農業では毎年300件前後の死亡事故が発生する状況が続いている。令和元年も前年比7人増となる281人が死亡し、就業人口10万人当たりの死者数は16.7人と調査開始以来、最悪となった。建設業の5.4人、全産業の1.3人との差が拡大している。
中間とりまとめでは、国民への労働安全が未だ十分に確保されていない状況に、農業関係者は強い危機感を抱くべきであると強調するとともに、道路交通では高齢化が進むなかでも自動車の安全性能の向上を通じて死亡事故が大幅に削減していることから「農業関係者においては農作業死亡事故率が低下しない要因を農業者の高齢化のみに求めることは妥当ではない」と指摘した。
安全対策の考え方として人はミスを減らすことはできても無くすことは不可能であるとして「人がミスをすることを前提とした措置を講じることが農作業安全対策の基本」に位置づけるよう提起した。
具体的には乗用型トラクターのシートベルトリマインダー(シートベルト非着用時の警報装置)の装備の検討を求めた。乗用型トラクターの「転倒・転落」は農作業中の死亡事故の最大要因だが、事故分析の結果からシートベルトを着用すると死亡率を8分の1に抑えることができることが明らかになっている。
また、乗用型トラクターの「回転部への巻き込まれ」も死亡事故の主要因の1つであることから、正しい位置に着座していない場合、数秒後に動力伝達を遮断するシートスイッチの装備も求めた。EUでは装備が義務化されているが、国内メーカーが製造する国内向けの型式には整備されていない。
そのほか▽農研機構が運用する安全性検査の仕組みを見直し、受検率の向上を図ることが必要、▽すでに法令で規制されている取り組みの徹底に向けた指導の強化が必要などを提起した。
農業者の安全意識の向上も対策の柱のひとつで▽事故が経営に及ぼす影響を、事例を通じて実感できるような研修。また、研修受講を補助金の受給要件(クロスコンプライアンス)化することが必要、▽県段階、地域段階における農作業安全推進協議会等の設置促進が必要。また、積極的な取組の表彰等を通じて、安全対策の印象を前向きなものに変えていくことが必要などを提起した。
第3回の検討会以降も中間とりまとめの検討状況を確認し、新たな安全性能の強化が必要な装備や、安全装備の普及状況を議論するため、年2回程度開催して議論する。
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