養鶏・鶏卵行政 国民の信頼得るのは難しい 透明性確保など提言-農水省の第3者委員会2021年6月3日
贈収賄で起訴された吉川貴盛元農相とアキタフーズの秋田善祺前代表の事件を受けて養鶏・鶏卵行政の公正性について検証するため、農林水産省が外部有識者を構成員として設置した養鶏・鶏卵行政に関する検証委員会は6月3日、野上浩太郎農相に検証結果と提言をまとめた報告書を提出した。
委員会は2月3日に第1回会合を開いた。弁護士の井上宏氏が座長を務め、委員は日本大学名誉教授の酒井健夫氏、農業尾ジャーナリストの榊田みどり氏、東大大学院政治学研究科教授の谷口将紀氏が務めた。
アキタフーズの秋田前代表は吉川元農相が現職の時にアニマルウェルフェアの国際基準の策定や、養鶏業者への融資方針などを働きかけていたのではないかとの疑念が生じたことから、これらの問題と鶏卵生産者経営安定対策事業の見直しプロセスについて9回にわたる委員会での議論、農林水産省職員約50名から聴取など、4か月にわたり徹底した調査、検証を行った。
委員会は検証の結果、秋田元代表から吉川元農相への働きかけも確認されたが、政策が歪められた事実は認められなかったと報告した。
この問題では秋田元代表と吉川元農相と農水省職員の複数の会食が明らかとなり、アキタフーズ側が会食費用を負担したことが判明したことから、2月25日に枝元事務次官ら6人が利害関係者からの供応や接待を禁じた国家公務員倫理規程に違反するとして処分を受けている。
ただ、検証委員会はこの会食が政策決定の公正性に影響を与えたとは認められなかったと結論づけた。
報告書では課題も指摘した。アニマルウェルフェアに関しては秋田元代表から要望はあったものの、政策が歪められたと疑われる事実は確認できなかったものの、秋田元代表の子息をOIE連絡協議会の臨時メンバーに追加した経緯や理由について同協議会で十分に説明されていない不透明も確認された。
日本政策金融公庫の融資についても、農水省金融調整課の担当者が秋田元代表と日本公庫の専務の面会がセットされるという「手厚い対応」がとられたことが確認され、これも不透明さが確認された。
鶏卵生産者経営安定対策事業については、加工原料乳の補給金単価など畜産物の政策価格は農政審議会の答申で決めているが、鶏卵の補助金は農水省と日本養鶏協会との間でのみ調整が行われており、外部からの批判や評価を受けていない問題点を指摘した。
農水省職員が自己負担なく利害関係者と会食したことについて、「国民お視線の厳しさに対する認識が不十分であったことが確認された」と報告した。
委員会は養鶏・鶏卵行政について、「政」、「官」、「業」の距離が近く「行政や政治が生産者からの働きかけを受けやすい構造にある」ことや、政治家が関わる利害関係者との会食について農水省職員が法令理解を誤っていたことも判明したとして、今回の事案自体は公正性が損なわれていなかったとしても「国民から信頼を十分に得ていくことは難しいと言わざるを得ない」と厳しく批判した。
提言では政治家や業界からの官に対する公正性を欠く働きかけが抑制的になるよう、その働きかけと官側の対応について的確に記録して、事後的に調査できるよう「行政の意思決定過程の透明性を向上させる措置」をシステムとして入れておくことが重要と強調している。
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