府内で初めてビワキジラミを確認 大阪府2021年6月30日
大阪府環境農林水産部農政室は6月28日、府内で初めてビワキジラミを確認したことを受け、病害虫発生予察特殊報第2号を発令した。
ビワキジラミ成虫(左)・果実のすす病症状(写真提供:大阪府環境農林水産部農政室)
6月14日に寝屋川市内の畑のビワ成木4本の葉上に、キジラミ類と思われる成虫の寄生を確認した。この成虫を採集し、農林水産省神戸植物防疫所に同定依頼したところ、ビワキジラミと確認された。
ビワキジラミは、平成24(2012)年に国内で初めて徳島県で発生が確認され、学名が付けられた新種の害虫で、海外での分布など詳しいことはまだわかっていない。その後は香川、兵庫、和歌山、岡山、愛媛県で発生が確認されているが、大阪府では初めて。
この種はアブラムシやカイガラムシ、コナジラミなどに近いカメムシ目の昆虫で、現時点で判明している寄生・増殖可能な植物はビワのみとなっている。
成虫には、2対の翅がありセミに似た形態をしている。全長2.5~3.5mm程度とかなり小さく、体は黄褐色~暗褐色で、白色の線状やまだら状の斑紋が多数ある。前翅は透明で、その外縁に沿って黄褐色の不明瞭な小斑紋が4~5つ並んでいる。葉裏の主脈沿いで師管液を吸汁する。
幼虫は扁平な楕円形で全長2mm程度、体は褐色のまだら模様で、体の左右に褐色の翅芽(翅のもと)がある。自由に歩くことはできるが、緩やかに動く。通常は花房の奥深くや、枝葉のつけ根の隙間に寄生して師管液を吸汁し、甘露や白色ロウ物質を排出する。
ビワ樹上で年間を通じて発生し、5回程度世代を繰り返すとされる。春先には花や幼果、新芽で増殖し、成虫が5~6月頃に多発生する。7月中旬~8月の盛夏には、成虫が樹冠内部に隠れ休眠状態となり、枝先の葉上にはほとんどみられなくなる。9月以降に活動を再開し、枝先に集まり交尾を行い、花蕾に産卵して世代を重ねる。冬季もビワ樹上でみられる。
この種は4~6月に発生する春夏型と10月~翌年3月に発生する秋冬型がある。春夏型は黄褐色、秋冬型は暗褐色となるが、季節の変わり目にはそれらの中間的な色彩も確認されている。
ビワの被害では、主に幼虫が排出する甘露に糸状菌(カビ)が発生し、黒く汚損される「すす病」が発生する。果実が肥大・成熟する5~6月頃に顕著な被害がみられる。また、袋かけを行う前の3月時点で、すでに果房や幼果の隙間にこの種が寄生している場合は、袋かけを行っても被害が発生する。
また、他県の事例では、1年に最大10kmの速さで分布を広げている事例があることから、同農政室では、この虫の侵入に十分警戒するよう注意を促している。防除方法は次のとおり。
〈防除方法〉
○ほ場をよく見回り、3月以降の果実のすす病および5~6月の葉裏の成虫を目印に、この虫の早期発見に努める。成虫は黄色に誘引されるため、侵入が警戒される地域では黄色粘着トラップによるモニタリングが有効とされる。
○発生が確認されたほ場では、果実袋かけ前の3月頃と、摘房・摘蕾後の11月中旬頃に薬剤を散布する。
○幼虫は花房の奥深くや狭い隙間に潜んでいるため、散布薬量を十分に確保し、ビワ樹全体に丁寧に散布する。また、ビワ枝葉の表面を覆う微毛が薬液をはじき、薬液が付着しにくいため、薬液には展着剤を加用する。
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