国産飼料の生産・利用を推進-持続的な畜産生産へ検討会が中間まとめ2021年7月13日
農林水産省の持続可能な畜産物生産のあり方検討会は6月に中間とりまとめを行った。環境への負荷の低減や輸入飼料への過度な依存から脱却し国産飼料の生産利用を促進する取り組みを提示した。5月に策定したみどり戦略をふまえて整理した。
畜産・酪農は山間部が多く狭い国土のわが国で、牧草など人が食用利用できない資源を食料に変えるとともに、飼料・家畜・たい肥の循環サイクルを形成してきた。条件不利地域でも産業をつくり農村地域の維持、発展とバランスのとれた食生活にも貢献してきた。
一方、環境負荷の軽減が求められるなか、畜産分野が温室効果ガス排出量に占める割合は、農林水産分野のうちで約3割を占める。牛のげっぷや家畜排泄物由来のメタンや二酸化窒素など、日本全体の排出量のうち、約1%程度となっている。
また、飼料自給率は25%(2018年)と過度に輸入飼料に依存しており、検討会は「グローバルな窒素循環の観点から歪になっている」と指摘、海外穀物市場の動向に影響が受けることや、自給率向上の観点からも「現状の生産方式から脱却し、飼料生産基盤に立脚した足腰の強い畜産経営を育成していく必要がある」と強調した。
同時に、こうした環境負荷軽減や輸入飼料依存からの脱却といった生産者の取り組みを消費者にも発信し、国産畜産物の需要拡大につなげることや、輸出拡大やインバウンド需要の取り込みにつなげていくことも重要になるとしている。
そのうえで今後行うべき具体的な取り組みを整理した。
環境負荷の軽減に向けては温室効果ガス削減飼料の利用推進、飼料利用性の向上に向けた家畜改良、耕作放棄地を含めた放牧のさらなる普及などを挙げている。
畜産生産での循環サイクルをさらに進めるため、耕種農家のニーズをふまえた高品質たい肥の生産、ペレット化の推進も課題としたほか、一方で水田の汎用化による飼料作物生産の加速化、子実用トウモロコシの国産濃厚飼料生産の拡大、有機畜産の取り組み、アニマルウェルフェアに配慮した飼養管理の普及など大きく5項目の取り組みを提示した。
このうち国産飼料の生産・利用については、稲作由来のメタンガスを縮減できることから「飼料作物への作付転換を推進」するとしている。また、中山間地域で生産者が減少して遊休地化が見込まれる農地については飼料生産や放牧で利用するために「地域内での継承」を検討することも必要だと提起した。
そのほか食品・農場残さなど飼料化が可能な未利用資源の発掘、マッチング体制の構築、エコフィード利用畜産物の普及などの取り組み、自給飼料の確保に取り組む生産者・飼料生産組織への助成や支援を集中することも必要だとしている。
こうした取り組みは一畜産農家だけでなく関係者が一体となって技術や支援策を誘導しながら進める必要性と、ICTの導入で労働環境を改善し「畜産・酪農を夢のある産業」としていくことが必要だと検討会は強調した。
また、農村地域の維持、活性化とバランスの良い食生活にも貢献している畜産が、環境負荷軽減に取り組むには生産者にコスト負担があり、生産物への価格転嫁が必要なことに対する消費者理解が必要だと指摘した。
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