【主要政党の農政公約】第49回衆議院総選挙スタート2021年10月19日
10月31日に投開票が行われる第49回衆議院総選挙が19日に公示された。コロナ禍による需要の減退で米価が下落するなど農業生産も大きな影響を受けているが、一方では農村の価値が見直され田園回帰などの動きも見られる。何より農業は食料の供給という人が生きていくうえで不可欠な産業であり、地域を豊かに持続させていくに欠かせない営みである。総選挙で主要政党がどんな食料、農業、農村政策を公約を掲げているか、重点をまとめた。なお、4年前の前回(第48回)総選挙の投票率は全体では53.68%。10歳代40.49%、20歳代33.85%、30歳代44.75%で、将来世代の投票率が低く、総務省は若者への啓発活動など投票率向上に取り組む。
自給力高め所得増大へ【自由民主党】
「新しい時代を皆さんとともに。」を掲げた政策パンフレットで主要公約の3番目に「国の基『農林水産業』を守り、成長産業に。」を位置づけている。
○多様な農産物の需要に応じた生産の拡大を進め、食料自給率・食料自給力の向上に資する対策を強化、農業・農村の所得増大を目指す。
○担い手の育成・確保や農地の集積・集約化を進めるとともに、規模の大小や中山間地域といった条件に関わらず幅広く生産基盤を強化。
○米については市場隔離効果を持つ新たな特別枠を設け、収入減少に対してはナラシ対策や収入保険で対応しその支払いまでの間は無利子融資を行う。
○2025年2兆円、2030年5兆円の輸出額目標の達成に向け輸出産地・事業者の育成、品目団体の組織化、戦略的サプライチェーンの構築、加工食品輸出に取り組む中小事業者への支援。
○JAグループが農協組合員の判断に基づき創意工夫により取り組んでいる自己改革を後押し。
輸出5兆円目標に支援【公明党】
「日本再生へ 新たな挑戦」と題した衆院選政策集で「農林水産業の活性化」を掲げている。
○農林水産物・食品の輸出額5兆円の目標達成に向け輸出拡大実行戦略に基づき重点品目のさらなる販路開拓、輸出産地等への重点的支援、種苗や和牛遺伝資源等の海外流出防止、日本産食品の輸入規制の緩和。
○みどりの食料戦略に基づき有機農業の取り組み面積拡大や化学肥料の低減、環境に配慮した肥料・飼料等の開発・国産への転換を後押し。
○不測の事態等でも国民への食料が安定的に供給されるよう、農地の大区画化や汎用化、畑地化する土地改良等による国産農林水産物の生産性向上を図る基盤強化を進め、食料自給率の向上もめざす。
○麦・大豆・飼料用米等の本作化を進める水田フル活用に必要な支援確保に万全を期す。予算の恒久的確保をめざし米政策改革の定着を図る。
○JAの自己改革については組合員の意見・評価に基づく自主的な改革をさらに後押しする。
戸別補償で再生産確保【立憲民主党】
「政策集2021」のなかで「農業の競争力強化」への偏重を改め、農林水産業固有の特性や農山漁村社会の歴史に根ざす地域政策を一体的に推進するとしたほか、規制改革会議が取り組んできた改革を再度検証、見直しの実施を掲げる。
○「価格は市場へ、所得は政策で」という基本的な考え方のもと、持続可能な再生産を確保。多種多様な農業者に生産費を補償する農業者戸別所得補償制度を復活し、さまざまなリスクに対応して平年並み所得を保障する収入保険を改善し、一体的に実施。
○米については戸別所得補償制度のもと、再度、生産調整を政府主導に戻す。
○緊急的な特例措置として、令和2年産米の過剰在庫を政府備蓄米の枠を拡充して市場隔離。子ども食堂などへのさらなる支援推進や、生活困窮者や災害緊急支援としてレトルトパック化して備蓄。
○主要農作物種子法を復活し公的機関での新品種開発・育成を支援。
○農協法を見直し「地域のための農協」として、農家の所得向上と経営の安定を図るだけでなく、生活、医療、福祉など地域のさまざま機能も支える組織であることを法律上明確化。
自給率上げ60%台目標【日本共産党】
総選挙に向けた公約で「効率優先の農政を根本から転換、家族農業を中心に持続可能な農業と農山村を再生」と掲げる。
○食料の外国依存をやめ自給率の向上を国政の柱に据え、早期に50%台を回復し引き続き60%台をめざす。
○米・麦・野菜・果樹などが結びついた耕畜連携の農業、水田の多面的利用をめざす。
○米価を回復させるためコロナ禍で生じた過剰在庫を国の責任で買い上げ市場から切り離す。買い上げた米を生活困窮者等に無償で提供。
○豊作による余剰米が発生した場合、備蓄米の買入れ量を増やし、年間を通じて計画的に集出荷・販売する業者・団体に金利・倉庫料など助成。
○米価に「不足払い」制度を導入し戸別所得補償を復活。ミニマムアクセス米の輸入を削減・廃止。当面、「義務」輸入は中止。種子法復活。
○「新規就農者総合支援法」(仮称)を制定。総合農協の役割を重視。
食料安保の対応を強化【国民民主党】
「動け、日本。」と題した政策集のなかで、国民と国土を「危機から守る」のテーマで農政を位置づける。
○世界的な食料危機や気候変動を広義の安全保障と位置づけ対応を強化。
○地域政策を重視し農村の維持・活性化に重点を置く農政に転換。
○米の需給調整は国で責任で行い、食料自給率50%、有機農業面積30%をめざし農業者戸別所得補償制度を再度構築。米は10a1万5000円を補助。
○環境配慮型農業を推進するため有機農法やGAP認証を受けた農法を行う農家に「環境加算」。
○種子法復活。JAの准組合員規制には反対。地域に根ざした農を支える人づくりを行う。
農協法改正 株式会社に【日本の維新の会】
「維新八策2021」のなかで農林水産業の政策を明記。
○減反政策の廃止を徹底、米輸出を強力に推進。戸別所得補償制度の適用対象を主業農家に限定。
○農協法のさらなる改正で地域農協から金融部門を分離、地域別に株式会社化することで「農協から農家のための農業政策」へ転換。
○農協に対する独占禁止法の適用除外規定を廃止し、複数の地域農協の設立を促進するなど競争環境を整備。
○株式会社の土地保有を全面的に認め新規参入を促進。ゾーニングと転用規制を厳格化。
○一次産業のイノベーションを阻む農水行政のあり方は抜本的に見直し、農水省は解体的な改編も視野に組織改革。
種子法復活 食の安全を【社民党】
「生存のために政権交代を」と題した選挙公約で「食の安全を守り食料自給率をあげよう」と訴える。
○種子法の復活や種子条例の制定を推進、日本の固有種の保護・育成に務める。
○アメリカの穀物メジャーの種子独占に反対、遺伝子組み換え、農薬づけの食品から食の安全を守る。
○小規模農業を守る戸別所得補償制度を復活させ当面50%以上の食料自給率をめざす。
価格補償は国の責任で【れいわ新選組】
「れいわ農業政策」として「世界の富裕層のための輸出拡大ではなく、民を飢えさせないための国の安全保障としての農林水産政策」を掲げる。
○農産物の「目標価格」を市場価格が下回った場合には差額を政府が補てんする仕組みなどを拡充し、収入減少影響緩和交付金や野菜価格安定制度など既存の施策を上回る直接支払い。
○米価暴落に対する緊急対策として過剰在庫を国が速やか速やかに買入れ。
○農産物の価格保証
○海外の富裕層向け輸出主導の「勝てる農業」をめざす農業政策を転換、地域のなかで庶民が安心して暮らすための食料確保に必要な政策を優先。
○農産物の国内の貧困層支援や途上国への食糧支援への活用
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