2021年農業技術10大ニュースを選定-農水省2021年12月24日
農林水産省は12月23日、「2021年農業技術10大ニュース」を発表した。この1年間に新聞記事となった研究成果のうち、内容に優れ社会的関心が高い成果を農業技術クラブ(農業関係専門紙・誌29社加盟)の投票で選定した。
【TOPIC1】
サツマイモ基腐病をすばやく診断
農研機構は、新型コロナウイルスの検出にも使われるリアルタイムPCR法を使って、サツマイモ基腐病菌を最短約1日で検出する技術を開発した。これまで2週間かかっていた診断が大幅に短縮され、被害のまん延防止対策として期待される。症状からは見分けにくい乾腐病とも識別が容易になる。
【TOPIC2】
2万円で自作 IoT監視システム
農研機構は、ハウスの情報をスマートフォンで確認できる遠隔監視システム「通い農業支援システム」を開発した。
ハウス内にマイコン(1300円/台)とセンサ(1000円/台)を設置し、小型PC(6000円/台)を自宅や事務所に設置することでハウス内の温度などの情報がスマホに自動で通知される。材料費は2万円で、市販のWifiルーターを使用し通信費は月に約1000円。
生産者がハウスの管理のために足を運ぶ頻度が減り、見回り時間を減らすことができる。データをグラフ化して利用することもできる。
【TOPIC3】
タマネギ直播栽培の5作業を1回に
JA全農、クボタ、農研機構はタマネギ直播栽培の作業機を開発した。この作業機はトラクターに装着し、(1)耕うん、(2)畝と溝の成型、(3)施肥、(4)播種、(5)農薬散布の5種類の作業を1工程で行うことができる。
慣行の苗移植体系に比べ労働時間が24%減となった。直播栽培の課題である出芽と初期生育を安定、促進させ、単収が同等以上となる。
【TOPIC4】
アミノ酸バランス改善飼料で温室効果ガス削減
農研機構と栃木県は、アミノ酸バランスを改善した飼料を肉用牛に給与することで、排せつ物から発生する温室効果ガス(一酸化二窒素)を半減できることを明らかにした。牛の嗜好性、増体や肉質に影響はなく、原料価格は慣行飼料と同等のため地球環境に配慮した畜産の実現が期待できる。
【TOPIC5】
2つの腕でロボットが果実を収穫
デンソー、立命館大学、農研機構はV字樹形のリンゴ、ニホンナシ、セイヨウナシを対象とした果実収穫ロボットを開発、果実をAIで認識し、2本のロボットアームで収穫できる。作業スピードは人と同等の1個11秒。収穫作業の軽労化が期待される。
【TOPIC6】
イネの生育と収量を増加させる技術開発
名古屋大学などの研究グループはイネの根や葉にある特定の遺伝子(細胞膜プロトンポンプ)の働きを高めることで光合成活性を25%以上、根の養分吸収を20%以上向上させることに成功し、30%以上収量が増加した。
施肥量を半分に減らしても通常施肥で栽培した元のイネより多収となった。生産性向上による食料増産と肥料削減が期待される。
【TOPIC7】
地球にやさしいコムギ新品種を開発
国際農林水産業研究センターなど研究グループは多収コムギ品種と野生近縁種との交配で新品種を開発した。
コムギの根から硝化を抑制する物質が分泌されることにより、土壌中のアンモニア態窒素の硝化が抑制され、効率良く窒素肥料を活用する。研究では通常のコムギと同じ生産性を維持、窒素肥料の低減とともに、温室効果ガスの削減や水質汚染の低減も期待されている。
【TOPIC8】
圃場の病害虫をスマホで診断
農研機構などの研究グループは精度の高いAI病害虫画像判別器の開発に成功した。トマト、ナス、キュウリ、イチゴの病害虫45種類の識別が可能でスマホで撮影すれば診断結果が得られる。
早期の防除対策実施が可能となり、被害量や防除コスト削減に貢献できる。
【TOPIC9】
世界の穀物収量をいち早く予測
農研機構とAPEC気候センターは、全世界を対象とした穀物の収量予測手法を開発した。既存の予測サービスよりも1~6か月早く収量の概況を把握することが可能となった。予測情報の公表により、食料の投機的な価格高騰を抑制するなど公益的な効果が期待できる。
【TOPIC10】
豚の体重が見えるメガネ
宮崎大学は、頭に装着した3Dカメラとスマートグラスを用いて豚を見ると瞬時に体重と枝肉重量が表示される体重自動判定システムを開発した。
3Dカメラで得られた豚の体形データを基にAIにより体重と枝肉重量を推定する。
100kgを超える豚の出荷時体重が豚に触れることなく目線を豚に合わせるだけで推定できる。両手をふさぐことなく他の作業ができるため養豚農家の作業効率化が期待される。また最適な出荷時期の見極めが容易となり、収益向上につながることも期待される。
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