加工業務用野菜 国産品切り替えへ 水田の高収益化を支援2022年2月8日
農水省の水田農業高収益化の推進では、水田地帯の水稲依存からの脱却を加工・業務用野菜を輸入品から国産品にシェアを奪い返すことで実現する狙いがある。
野菜の1人1年当たりの消費量は平成7年の106kgから平成30年には90kgへと減少している。しかし、用途別でみると家計用消費が49%(平成2年)から43%(平成27年)へと減る一方、加工・業務用向けのシェアは51%から57%に高まった。
国産の割合は家計消費向けはほぼ100%だが、加工・業務用野菜に占める割合は71%となっている。
農水省が昨年実施した調査では国産の原材料を増やしていきたいとの回答は、食品製造業で45%。外食で30%などとなっており、国産野菜を利用する利点については「安全性・信頼性」との回答が6割を超えている。
こうしたことから農水省は加工・業務用野菜の産地の育成が必要だとしてしている。
実際に加工・業務用野菜の需要の増加でサラダなどの惣菜やカット野菜、冷凍野菜や冷凍調理食品など向けの品目で生産が拡大している。
平成19年から平成29年の増加面積は、たまねぎ1300ha、キャベツ2100ha、ブロッコリー3000haなどとなっている。たまねぎは、生産過剰の時は需給調整のためにロシアに輸出する北海道北見市の例や、レタスやキャベツを台湾に輸出する群馬県や長野県などの例もある。
野菜栽培は労働時間が稲作とくらべて労働時間が多くなるが、高い所得が得られる。農水省の試算によると主食用米は10aあたり労働時間は24時間で粗収益は11.7万円、所得は3.3万円。一方、たまねぎは労働時間117時間だが、粗収益は34.1万円で所得は11.3万円となる。
農水省は、労働時間も加工・業務用機械化一貫体系の導入でたまねぎの場合なら6割削減できるとしている。
労働時間削減に向けて機械も実用化されている。キャベツ収穫機は人手による収穫だと10aあたり32時間かかるが、機械では17時間と約半減する。ほうれんそう調整機は調整速度を向上させた新型機が平成30年度に実用化し、人手による調整の約3倍の効率向上が見込まれる。
野菜の産地育成のため水田の汎用化など農地整備も進める必要があるが、暗渠排水の整備によってたまねぎの収穫量が10a5325kgから6807kgと28%向上したという佐賀県の調査結果もある。
加工・業務用野菜の需要が高まるなか、実需者側からは契約取引に基づく、定時・定量・定価格・定品質での安定供給が求められるが、そのためには実需者と一体となった取り組みも必要で、福井県の永平寺町では永平寺タマネギ協議会が学校給食会との契約取引を増やしたり、広島県の庄原市、三次市の広島産キャベツ生産協議会はお好み焼き用のキャベツの契約取引に取り組んでいる。
水田活用の直接支払い交付金でも水田農業高収益化推進助成を盛り込んでおり、令和4年度予算では加工・業務用野菜への取り組みに対して10a当たり3万円を5年間交付する措置も盛り込まれている。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(138)-改正食料・農業・農村基本法(24)-2025年4月19日
-
農薬の正しい使い方(28)【今さら聞けない営農情報】第294回2025年4月19日
-
若者たちのスタートアップ農園 "The Circle(ザ・サークル)"【イタリア通信】2025年4月19日
-
【特殊報】コムギ縞萎縮病 県内で数十年ぶりに確認 愛知県2025年4月18日
-
3月の米相対取引価格2万5876円 備蓄米放出で前月比609円下がる 小売価格への反映どこまで2025年4月18日
-
地方卸にも備蓄米届くよう 備蓄米販売ルール改定 農水省2025年4月18日
-
主食用МA米の拡大国産米に影響 閣議了解と整合せず 江藤農相2025年4月18日
-
米産業のイノベーション競う 石川の「ひゃくまん穀」、秋田の「サキホコレ」もPR お米未来展2025年4月18日
-
「5%の賃上げ」広がりどこまで 2025年春闘〝後半戦〟へ 農産物価格にも影響か2025年4月18日
-
(431)不安定化の波及効果【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月18日
-
JA全農えひめ 直販ショップで「えひめ100みかんいよかん混合」などの飲料や柑橘、「アスパラ」など販売2025年4月18日
-
商品の力で産地応援 「ニッポンエール」詰合せ JA全農2025年4月18日
-
JA共済アプリの新機能「かぞく共有」の提供を開始 もしもにそなえて家族に契約情報を共有できる JA共済連2025年4月18日
-
地元産小粒大豆を原料に 直営工場で風味豊かな「やさと納豆」生産 JAやさと2025年4月18日
-
冬に咲く可憐な「啓翁桜」 日本一の産地から JAやまがた2025年4月18日
-
農林中金が使⽤するメールシステムに不正アクセス 第三者によるサイバー攻撃2025年4月18日
-
農水省「地域の食品産業ビジネス創出プロジェクト事業」23日まで申請受付 船井総研2025年4月18日
-
日本初のバイオ炭カンファレンス「GLOBAL BIOCHAR EXCHANGE 2025」に協賛 兼松2025年4月18日
-
森林価値の最大化に貢献 ISFCに加盟 日本製紙2025年4月18日
-
つくば市の農福連携「ごきげんファーム」平飼い卵のパッケージをリニューアル発売2025年4月18日