「農業利用区域」と「保全・林地化区域」を地域で整理-人・農地プラン2022年3月7日
農林水産省は、市町村が地域農業の将来のあり方について、農業者やJA、行政などで協議の場を設置し、農地の効率的な利用を図るため、「地域計画」を策定することを盛り込んだ農業経営基盤強化促進法などの改正案を今国会に提出する。JAが農業経営を行うための組合員の同意についてもハードルを下げる農協法改正も合わせて行う。
将来、地域で誰がどの農地をどのように担っていくかを決め、農地利用の集積化を図っていく人・農地プランの具体化を農水省は現場に働きかけてきたが、今回は「地域計画」として市町村が関係者による協議の場を設置して、地域計画を策定することを法律に位置づける。
ただ、担い手の高齢者と後継者不足が進むなか、「人・農地プラン」の策定について、全国の農地中間管理機構や農業委員会へヒアリングを実施したところ、「すべての農地をプランの対象とするのは困難」との意見が出た。これを受け、今回の法改正では、地域の関係者が協議して、「農業上の利用が行われる区域」と「保全等・林地化を進める区域」に整理を行い、農業利用する区域で「地域計画」を策定する。保全等を行う区域は、農山漁村活性化法の活性化計画の活用を検討するというのが大きな枠組みだ。
そのうえで市町村は、農業利用する区域について、その区域の農業の将来のあり方と農業を担う農業者ごとに利用する農地を定め「目標地図」として作成する。
地図の作成は、農業委員会が農業者の意向情報をふまえて、JAや農地中間管理機構(農地バンク)、土地改良区などの協力を得て行う。一筆ごとに農地関係情報を表示できるデジタル地図(eMaff)を活用する。
農地の「出し手」と「受け手」の年齢や意向、後継者の有無などをふまえて地図を作成するが、受け手がいなくなることが想定される地域ではJAなどのサービス事業体が受託や、中山間地域直接支払交付金などの活動組織なども活用する。
目標地図は10年後にめざすべき農地利用の姿を表示する。農水省は改正法の施行期日から、周知期間と合わせて3年程度の作成期間を設定する方針だ。
目標地図の達成に向けて、農地バンクは分散している農地をまとめて引き受けて、一団の農地として担い手に再配分する機能を発揮したり、所有者不明農地の利用権設定期間を20年から40年に引き上げる措置なども講じる。
また、農地を利用しやすくするため、農地の権利取得時の下限面積要件を廃止する。現行の下限面積は都府県50a以上、北海道2ha以上となっているが、すでに約7割の市町村が引き下げている。
JAが農業経営を行いやすくするための農協法改正も行う。現行では総組合員の3分の2以上の「書面同意」が必要だが、これを総組合員等の半数以上が出席した総会で3分の2以上が賛成すれば決議できるとする。
「地域計画」は「担い手」へ「農地」を集積させて農地の効率的な利用をめざすもので、どのような農産物をどう作り販売していくかを併せ持った計画にしていくにはJAの役割が欠かせない。JAグループは第29回JA全国大会で、将来の地域と地域農業の担い手を確保するため、既存の農家での積極的な事業承継のための支援と、農村の関係人口も視野に入れた新規就農者の育成など「次世代総点検運動」への取り組みを新年度が本格化させる。今回の法制度の改正を「実質化」する取り組みは、JAグループの運動に期待されるとともに、それは各地のJAの組織基盤強化にもつながるとの認識が大切になる。
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