【飼料用米シンポ】生産コスト削減と保管に課題 飼料用米をめぐる情勢2022年3月24日
3月18日に(一社)日本飼料用米振興協会が開いた「飼料用米普及のためのシンポジウム2022」では農水省から「飼料用米をめぐる情勢について」の報告があった。
2021年産では主食用米の需給環境を改善するため、過去最大規模の6.3万haの作付け転換に生産者は取り組んだ。
その結果、飼料用米の作付けは7.1万haから11.6万haへの増加した。飼料用米の生産量は63万tとなった。
基本計画では2030年までに飼料用米の生産努力目標を70万tとしている。11.6万haは作付け面積ベースでは目標を達成したことになるが、生産量ではまだ到達していない。単収の増加が課題となっている。
一方、需要については2022年の新規需要として畜産農家から約2万tの要望がある(農水省調査)。そのほか全農グループ飼料会社や、日本飼料工業会などの使用可能な飼料米の量は約130万tとなっており、基本計画の目標よりも需要量は多いということになる。
飼料用米生産では多収品種の導入が求められているが、2020年産の平均単収は10a539kgにとどまっており課題は多い。ただ、2021年産の飼料用米コンクールで農水大臣賞を受賞した生産者(小松田光二さん 秋田県)の単収は970kgと1t近くを実現した。
飼料用米生産者の経営規模は5ha以上が約8割を占めている。大規模水田経営安定のための品目の1つとして位置づけられており、規模拡大による生産コストの削減も期待される。
生産コスト削減については、平成27年に政府が決めた日本再興戦略改定2015で目標が掲げられている。そこでは2013年産の60kg1万5229円を2025年産までに5割削減し、同7615円とするのが目標だ。
多収の実現で▲16~19%、実利用資源の活用による肥料コストの▲7%や農機価格の▲30%、直播栽培による労働力の▲25%などから試算している。スマート農業技術の活用は、飼料用米生産に限らず水田農業全体に必要だ。
多収品種は国の委託試験などで飼料向けとて育成された25品種がある。そのほか都道府県で主食用以外の用途として生産されて収量が多いものを知事の申請で特認している品種もある。
飼料用米の保管も課題だ。既存の主食用米の倉庫に空きができたものを活用している事例や、既存のCEやRCの再編利用をしている例、一部には飼料用米専用のCEもあるが限られている。
シンポジウムで報告した青森県の木村牧場は自ら飼料用米保管倉庫を持っているが限られている。今後、さらに飼料用米の本格利用を進めるうえでは課題となる。
一方で全農は飼料用米生産者から直接買い取り、保管・流通し全農グループの配合飼料会社から畜産農家へ供給される仕組みを作りあげている。流通経費は、金利・倉敷料や販売手数料などを合わせて生産者が受け取る販売代金から差し引く。
農水省は飼料用米を活用した畜産物のブランド化も推進していく。輸入トウモロコシの代替飼料として米を利用するだけでなく、木村農場が生産する「つがる豚」など味や風味など違いを売り出して高付加価化を図る取り組みも重要だ。農水省のまとめでは39道府県で97事例があるという。
主食用米の需要は年間10万tずつ減少している。年1.4%の減少で水田面積では2万haに当たる。飼料用米活用の畜産物のブランド化を通じて、有効な水田の利活用であること、国産飼料であることの意義を消費者に発信していくことも期待される。
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